腐った姉の最推しとして爆誕した俺!! ~転生した先は「ドS鬼畜メガネ」でした……(泣)~

夢追子

文字の大きさ
上 下
16 / 57

第二章 ついに二学期(ゲーム)スタート!!⑧

しおりを挟む
     八

 生徒会室の扉をノックすると、明人は生徒会室の扉を開けた。
 だが、ノックの甲斐はなく、中には誰の姿もなかった。
(皆、まだなのか?)
 室内を見渡しても、誰かが先に来ている様子はない。
 明人はまあそんなこともあるだろうとさして気にも留めずに自分の席に着いて、終わる当てのない仕事を今日も始めることにした。
 会長のスオウは隙あらば校内の見回りと称して書類仕事から抜け出そうとするのはしょっちゅうだし、会計のジンは剣術部と兼任なので部の活動が忙しい時には生徒会に来られないこともある。大会前などは本当に忙しそうで気の毒にさえ感じるものだ。
(確か、剣術部は秋の新人戦があるはずだから、今頃、新入生の指導か?)
 書記のレイも美術部などの文化部と兼任で、学園祭では作品を発表するらしいので、そちらの制作も忙しいのかもしれない。
 いつもよりも静かで広く感じる生徒会室の中で、明人は早速仕事に取り掛かった。
 誰もいない一人きりの室内では、ゾーンと呼べそうなほどの集中力を駆使して明人史上最高のパフォーマンスを発揮できたと言っても過言ではなく、仕事が殊の外捗った。
 どれくらいそうしていただろう。
 ふと気が付いて時計を見た時には、体感していた時間の倍以上の時間が過ぎていた。
 ずっと同じ姿勢で作業していたせいで、身体が凝り固まっている。
 明人はさすがにそろそろ休憩を入れた方がいいと感じ、ふっと息を吐いた。
 そんな時だ。
 生徒会室の扉の向こうから、誰かが控えめにノックしてきたのは。
「……。」
 一瞬、明人はノックの音が気になったが、それでも生徒会の誰かならすぐに扉を開けて中に入ってくるだろうと思い、そのままにして椅子から立ち上がった。
 生徒会室の奥には、常態化した長時間作業の休憩用として給湯室のようになっている場所がある。
 いつからあるものか分からないが、カセットコンロのようなもの(魔法で点火するマジックアイテムなのでマジックコンロと呼ばれている)が置いてあり、生徒会メンバー各々が持ち込んだ各々の好みの飲み物を入れるためのグッズが溢れている。
 会長のスオウは何でも飲むし何なら購買や自販機で買ってくるので何も持ち込んでいないが、会計のジンは急須と茶葉と湯呑を常備していて、書記のレイはティーセットと茶葉を常備している。
 明人も水嶋シュウの設定もあり、コーヒーを用意していた。ただ、忙しい合間の休憩用なのでさすがにコーヒーメイカーと豆を用意するわけにもいかず、お湯を注ぐだけのドリップパックのコーヒーだが。
 ジンが持ち込んだ鉄器のやかんでお湯を沸かすのも面倒で、ケトル(こちらも動力源は魔力のマジックアイテムなのでマジックケトルと呼ばれている)に水を入れてスイッチを入れた。
 常備してあるマグカップにドリップパックを引っ掛け、ケトルのお湯が沸くのを待つ。
 ケトルが立てる音を聞きながら、明人は完全に気を抜いていた。
 さすがに一人きりの室内での仕事が捗ったからといって、集中し過ぎた。水嶋シュウとしてのチートのような高い能力とポテンシャルを持っていたとしても、人間である以上疲労感はどうしてもやって来る。
 メガネを外し、目頭を揉む。
 書類仕事というのはどうしても目を酷使しがちだ。
 ただでさえ、水嶋シュウは目が悪い。近視に乱視が入っている。
 手元を見る作業ならばさほど問題はないが、メガネ越しというのは裸眼で過ごしてきた時間の長い明人にとっては、まだ慣れないことの一つだった。
(メガネが身体の一部になる日は、まだ遠いな……。)
 どうでもいい感想が脳内に浮かぶ。
 長時間の作業によって脳もかなり疲労しているらしい。
 糖分も必要かもしれないと思い、普段は水嶋シュウの設定的にブラックのまま飲みがちなコーヒーに栄養補給のための糖分を入れる必要性を感じた。
「……確か、この辺りにスティックシュガーが……。」
 何かのついでに会長のスオウが持って来たスティックシュガーが結局誰にも使われずに放置してあったのを思い出し、明人は記憶を頼りにスティックシュガーの姿を探した。
「……あった。」
 わりと手前の方からスティックシュガーは発掘され、ドリップパックの隙間からマグカップの中にさらさらと流し込む。
 カチンっ。
 タイミングを計ったかのように、ケトルのお湯も沸いたようだ。
 明人はドリップパックの上からお湯を注いだ。
 お湯を浴び、コーヒーが芳しい香りを立て始める。
 周囲に漂うコーヒーの香りに満足し、明人が微笑んだ。
 事が起きたのは、まさにその時だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~

黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。 ※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。 ※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

王子様の耳はロバの耳 〜 留学先はblゲームの世界でした 〜

きっせつ
BL
南国の国モアナから同盟国であるレーヴ帝国のミューズ学園に留学してきたラニ。 極々平凡に留学ライフを楽しみ、2年目の春を迎えていた。 留学してきたレーヴ帝国は何故かblゲームの世界線っぽい。だが、特に持って生まれた前世の記憶を生かす事もなく、物語に関わる訳でもなく、モブとして2年目を迎えた筈が…、何故か頭にロバ耳が生えて!?

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

処理中です...