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第二章 ついに二学期(ゲーム)スタート!!①

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  第二章 ついに二学期(ゲーム)スタート!!

     一

「明日から二学期だな。」
「……そうだな。」
 夏休みも最終日となった八月の末日。
 明人は会長の藤原スオウと共に街へと遊びに出かけていた。
 同学年で生徒会の会長と副会長であり、その上、寮も隣同士なので自然とつるむ回数は増える。更に、水嶋シュウのキャラ設定上、他人を容易く寄せ付けることはないので、結局、藤原スオウくらいしか水嶋シュウの傍に近寄ることはないのだった。
(水嶋シュウって、いい意味でも悪い意味でも孤高だから……、まあ、ぼっちってわけでもないんだろうけど……。)
 凡人の中田明人は、それなりに友達はいたので、水嶋シュウとなってからはその辺りのギャップに一抹の寂しさを感じないでもなかった。
「そろそろ手伝いの一年も生徒会に入ってくる頃だな……。今年はどんなヤツが来ると思う?」
「……使える奴がいい。」
 言葉少なに答える明人。
 だが、これは明人の紛れもない本音だった。
 生徒会メンバーは藤原スオウを始め、他の二年生のメンバーも優秀だからこそ選ばれているので仕事が出来るなどと気軽に言えるレベルではないほど有能であるが、如何せん仕事量が多すぎるのだ。
 なので、最初から思いっきり優秀で、ちゃんと仕事を割り振れるほど戦力として期待できて、その上、あまり手を掛けなくても自ら学びとれる優秀な人材が喉から手が出るほど必要だった。
 何せ生徒会というのは毎年代替わりしていくものなので、留年でもしない限りは三学期には会長や副会長などの役職を後輩に引き継いでいかなければならない。日々の業務だけでも手いっぱいなのに、二学期は行事も多く、更に引き継ぎの準備をしなくてはならないとなれば、今の多忙を極めた状態を軽く凌駕する地獄のようなスケジュールになることは必然と云えた。
 嵐の前の静けさと云えなくもない夏休みを名残惜しみながら、藤原スオウと水嶋シュウの二人は街へと繰り出し、時間を惜しむように余暇を楽しんでいた。
 通り過ぎる他校の女子達が二人を見てキャーキャーと黄色い悲鳴を上げながら、こちらを指さしてウワサしている。
 スオウはそんな女子達に軽く手を振って笑いかけた。
 そんなスオウの姿を見ていたら、明人はふと気になったことがあった。
 水嶋シュウももちろんだが、この藤原スオウという男も見目が良く、その上水嶋シュウと違って快活で性格もいい。だというのに、浮いた噂一つ聞かず、これだけ黄色い声を掛けられていながら浮名を流している様子はない。それどころか、二人でいても明人が元々いた世界でしていたような女子の話題を持ち出されたことがない。
「スオウは、彼女とか作らないのか?」
 ここはBLゲームの世界で、藤原スオウは攻め担当の攻略キャラで、ルートによっては主人公の運命の人となることを知ってはいたが、明人は敢えて相手を女性であると限定して尋ねてみた。
 果たして藤原スオウは元々男にしか性的に興味がないのか?それとも、主人公だけが特別なのか?
 そんなところが気になった。
 スオウは手を振った女子達を眺めながら、ふっと微笑んだ。
「今はまだ野郎同士でつるんでる方が楽でいいな。恋人とか付き合うとか、そういうのは心底惚れたヤツがいたらでいい。」
「……そうか。」
(………やべぇ。半端ねぇな、コイツ……。)
 スオウの言葉に表面上は涼しげな顔をしながら、明人は内心で唸っていた。
 あまりにも誠実で男前な発言に、こっちがうっかり絆されてしまいそうだ。
 誰でもいいから女が欲しいなどというような会話をしていた過去の自分を含めた同年代の少年たちの横っ面を叩く一陣の風のような、そんな圧倒的な発言であるというのに、この男は何の衒いもなく言ってのけるのだ。
(……主人公よ。こういうヤツと幸せになれ……。)
 明人はもしも主人公の恋を応援するのならば、相手はスオウがいいと心底思った。これほどの器の男ならば、きっと主人公は幸せになれるだろう。
 それに、他の攻略キャラよりも身近なスオウならば、明人が手助けしやすそうなのもいい。
 まだ現れぬ主人公が、もしかしたらこのまま登場しない可能性もまだ完全には捨てきれないが、いざ現れてから焦るわけにはいかない。
 未来は自分の手でつかみ取るものだ。
 そのために出来ることはしておきたい。
 だが、だからといって何の罪もない主人公を犠牲にするような選択肢は避けたい。あくまでも、主人公には幸せになってもらいたい。もちろん、相手は自分以外の誰かとである。
「お前はどうなんだ?」
 今度は反対にスオウが明人に質問してきた。
 明人は、喉から手が出るほど彼女が欲しいという本音を涼しい表情の下にキレイに隠し込み、軽く眉を上げてこう答えた。
「時間が出来たらな。」
「じゃあ当分無理だな、ははははは。」
 夏の青空の下、スオウの清々しい笑い声が響き渡った。
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