腐った姉の最推しとして爆誕した俺!! ~転生した先は「ドS鬼畜メガネ」でした……(泣)~

夢追子

文字の大きさ
上 下
8 / 57

第一章 誰か夢だと言ってくれ!!!⑦

しおりを挟む
     七

 中田明人が、そんな水嶋シュウとしてモテモテ&チート人生を謳歌して、一学期は充実したまま過ぎ去っていった。
 さすがに夏休み前ともなれば、数か月過ごした世界にも慣れ、水嶋シュウとしての振る舞いも多少板についてくる。それでなくても、何か困ったことがあると何故かは知らないが誰かしらが手助けしたり教えてくれたりして、世界そのものが明人にとって親切設計になっているようにすら錯覚できそうだった。
 学業に生徒会。水嶋シュウの生活はそれだけでも雑事に忙殺され多忙を極めていたが、明人にはもう一つ大切なことがあることを忘れるわけにはいかなかった。
 明人が忙しい日常の時間を割いてまで没頭したこと、それは、希望に満ちた未来を手に入れるべくゲーム世界を攻略するために、腐った姉との会話を思い出すことである。
 何か少しでも思い出したことがあれば、スマホ(こちらの世界ではスマート・マジック・ホンを略してスマホというらしい。使い方はほぼ同じで電力の代わりに魔力を使うらしい。)を取出し、逐一メモすることを忘れなかった。
 そのおかげもあって、だいぶ今後の未来に対する予測を立てることが可能になっていた。
 明人が前の世界同様に便利なスマホにメモしたことは大きく三つの部類に分けられる。
 まず、一つ目は、ゲームの主人公が学園に編入してくるのは夏休み明けの二学期からであること。
 この情報のおかげで、明人は悪戯に未来に怯えて一学期を無駄にすることなく、今後の準備に充てることが出来た。
 次に、いくつかのストーリー上のフラグを立てなければ、個別ルートに分岐しないこと。
 個別フラグの細かいことはまだ思い出せていないが、要はフラグが立ちそうな気配を察したらフラグを意識的に折っていくことで、個別ルートへの分岐を回避できるのだ。
 ただ、これは、まだ詳しく思い出せないことが多く、要注意の事柄でもある。
 そして、最後に一番大切なことは、個別ルートに入る最終の決定となる事柄が存在するということだ。
 それは、学園祭におけるパートナー選びという選択肢である。
 個別のフラグ全てが完全に立っていて、尚且つ、数々の選択肢で一定以上の好感度を得ており、この学園祭のパートナーとして選択することで、ルートの分岐は完了する。
 逆に言えば、どれだけ好感度が高くても、フラグの回収が完璧でも、学園祭のパートナーにならなければ、個別ルートに入ることなどあり得ないのだ。
 この最重要ともいえる情報を覚えていたおかげで、明人は今後の見通しがかなり立ちやすかった。あんなどうでもいいと割り切って聞き流していた姉との会話であっても、必要な情報を覚えていた自分を褒めてあげたくなったくらいだ。
 学園祭が無事に何事もなく終わり、個別ルートに分岐していなければ、少なくとも水嶋シュウルートで主人公と恋を育む必要はなくなる。そうなれば、チート能力のような優秀さを保持した人間として、自由に人生を謳歌することが可能なのではないかと明人は推測していた。
 凡人であり、特に取り柄もなく、その他大勢のモブとして生きていた中田明人の人生と比べると、主人公とのBL関係というハードルの高い事柄を抜きにすれば、容姿端麗、成績優秀な水嶋シュウとしての人生は前途洋洋過ぎるような気さえし始めていた明人であった。
 なので、人生イージーモードという自らの望む人生を手に入れるため、明人は今日も準備を怠らない。
 まずは、二学期の始業式。
 主人公の編入に向けて、作戦を立てなくては。
 主人公の幸せを邪魔したいわけではないし、むしろ応援したいのだから、全く悪いことではないはずだ。
 ただ、自分ではない誰かと幸せになってもらうために、明人は虎視眈々と権謀術策を練っていく。
 心中で何かしらを企みながら一人ほくそ笑む明人の横顔は、まさしく水嶋シュウそのものであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

花の聖女として異世界に召喚されたオレ

135
BL
オレ、花屋敷コガネ、十八歳。 大学の友だち数人と旅行に行くために家の門を出たらいきなりキラキラした場所に召喚されてしまった。 なんだなんだとビックリしていたら突然、 「君との婚約を破棄させてもらう」 なんて声が聞こえた。 なんだって? ちょっとオバカな主人公が聖女として召喚され、なんだかんだ国を救う話。 ※更新は気紛れです。 ちょこちょこ手直ししながら更新します。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

処理中です...