33 / 52
31 ノエル,1
しおりを挟む
三十一
白い子猫のノエルは、温かな毛布にくるまれながら伸びをした。
突然の迷子と雨には驚いたが、主人の居室に帰り居心地のいい場所に収まれば眠くもなってくる。それでなくても、先程は大変な大冒険だったのだ。
みゃぁ。みゃう。みゃうみゃみゃみゃ。
(訳:いい匂いのする優しいお姉さんに会ったなぁ。)
木の上から降りられず鳴いていたところを助けてくれたメイドのお姉さんのことを思い出しながら、ノエルはとろんとした眼をぱちぱちとさせる。
メイドのお姉さんのエプロンの中は、この毛布よりも暖かくて優しくて更に居心地が良かった。その上、メイドのお姉さんは優しかった。撫でてくれた時のメイドのお姉さんの笑顔を思い出し、ノエルの心は幸せに満ちていた。
「ノエル?」
主人の手が、ノエルの毛並みを撫でる。
ノエルは返事をせずに、毛布の中で目を閉じる。
「もう遠くに行ってはダメよ。」
みゃあ。みゃうみゃう。
(訳:それはムリ。)
ノエルは心の中で主人に反論した。
誰に何を言われても、ノエルの子猫特有の好奇心を抑えることなど出来はしない。
今日は失敗したが、優しいメイドのお姉さんに助けてもらって無事だった。
今度は、お姉さんにお礼を言いに行ってもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、ノエルは夢うつつの中で揺蕩い始める。
コンコン
室内にノックが響き、ノエルを撫でていた主人の手が離れていく。
離れていった主人の手を寂しく思い、ノエルは思わず抗議の鳴き声を上げる。
「にゃ。」
だが、主人は来客の応対のためにノエルの抗議を聞くこともなく遠ざかって行く。
ノエルは毛布の中で微睡みながら、やっぱり優しいメイドのお姉さんのことを思い出すのだった。
白い子猫のノエルは、温かな毛布にくるまれながら伸びをした。
突然の迷子と雨には驚いたが、主人の居室に帰り居心地のいい場所に収まれば眠くもなってくる。それでなくても、先程は大変な大冒険だったのだ。
みゃぁ。みゃう。みゃうみゃみゃみゃ。
(訳:いい匂いのする優しいお姉さんに会ったなぁ。)
木の上から降りられず鳴いていたところを助けてくれたメイドのお姉さんのことを思い出しながら、ノエルはとろんとした眼をぱちぱちとさせる。
メイドのお姉さんのエプロンの中は、この毛布よりも暖かくて優しくて更に居心地が良かった。その上、メイドのお姉さんは優しかった。撫でてくれた時のメイドのお姉さんの笑顔を思い出し、ノエルの心は幸せに満ちていた。
「ノエル?」
主人の手が、ノエルの毛並みを撫でる。
ノエルは返事をせずに、毛布の中で目を閉じる。
「もう遠くに行ってはダメよ。」
みゃあ。みゃうみゃう。
(訳:それはムリ。)
ノエルは心の中で主人に反論した。
誰に何を言われても、ノエルの子猫特有の好奇心を抑えることなど出来はしない。
今日は失敗したが、優しいメイドのお姉さんに助けてもらって無事だった。
今度は、お姉さんにお礼を言いに行ってもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、ノエルは夢うつつの中で揺蕩い始める。
コンコン
室内にノックが響き、ノエルを撫でていた主人の手が離れていく。
離れていった主人の手を寂しく思い、ノエルは思わず抗議の鳴き声を上げる。
「にゃ。」
だが、主人は来客の応対のためにノエルの抗議を聞くこともなく遠ざかって行く。
ノエルは毛布の中で微睡みながら、やっぱり優しいメイドのお姉さんのことを思い出すのだった。
10
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
相手不在で進んでいく婚約解消物語
キムラましゅろう
恋愛
自分の目で確かめるなんて言わなければよかった。
噂が真実かなんて、そんなこと他の誰かに確認して貰えばよかった。
今、わたしの目の前にある光景が、それが単なる噂では無かったと物語る……。
王都で近衛騎士として働く婚約者に恋人が出来たという噂を確かめるべく単身王都へ乗り込んだリリーが見たものは、婚約者のグレインが恋人と噂される女性の肩を抱いて歩く姿だった……。
噂が真実と確信したリリーは領地に戻り、居候先の家族を巻き込んで婚約解消へと向けて動き出す。
婚約者は遠く離れている為に不在だけど……☆
これは婚約者の心変わりを知った直後から、幸せになれる道を模索して突き進むリリーの数日間の物語である。
果たしてリリーは幸せになれるのか。
5〜7話くらいで完結を予定しているど短編です。
完全ご都合主義、完全ノーリアリティでラストまで作者も突き進みます。
作中に現代的な言葉が出て来ても気にしてはいけません。
全て大らかな心で受け止めて下さい。
小説家になろうサンでも投稿します。
R15は念のため……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
わたしはただの道具だったということですね。
ふまさ
恋愛
「──ごめん。ぼくと、別れてほしいんだ」
オーブリーは、頭を下げながらそう告げた。
街で一、二を争うほど大きな商会、ビアンコ商会の跡継ぎであるオーブリーの元に嫁いで二年。貴族令嬢だったナタリアにとって、いわゆる平民の暮らしに、最初は戸惑うこともあったが、それでも優しいオーブリーたちに支えられ、この生活が当たり前になろうとしていたときのことだった。
いわく、その理由は。
初恋のリリアンに再会し、元夫に背負わさせた借金を肩代わりすると申し出たら、告白された。ずっと好きだった彼女と付き合いたいから、離縁したいというものだった。
他の男にとられる前に早く別れてくれ。
急かすオーブリーが、ナタリアに告白したのもプロポーズしたのも自分だが、それは父の命令で、家のためだったと明かす。
とどめのように、オーブリーは小さな巾着袋をテーブルに置いた。
「少しだけど、お金が入ってる。ぼくは不倫したわけじゃないから、本来は慰謝料なんて払う必要はないけど……身勝手だという自覚はあるから」
「…………」
手のひらにすっぽりと収まりそうな、小さな巾着袋。リリアンの借金額からすると、天と地ほどの差があるのは明らか。
「…………はっ」
情けなくて、悔しくて。
ナタリアは、涙が出そうになった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【4話完結】聖女に陥れられ婚約破棄・国外追放となりましたので出て行きます~そして私はほくそ笑む
リオール
恋愛
言いがかりともとれる事で王太子から婚約破棄・国外追放を言い渡された公爵令嬢。
悔しさを胸に立ち去ろうとした令嬢に聖女が言葉をかけるのだった。
そのとんでもない発言に、ショックを受ける公爵令嬢。
果たして最後にほくそ笑むのは誰なのか──
※全4話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
え?わたくしは通りすがりの元病弱令嬢ですので修羅場に巻き込まないでくたさい。
ネコフク
恋愛
わたくしリィナ=ユグノアは小さな頃から病弱でしたが今は健康になり学園に通えるほどになりました。しかし殆ど屋敷で過ごしていたわたくしには学園は迷路のような場所。入学して半年、未だに迷子になってしまいます。今日も侍従のハルにニヤニヤされながら遠回り(迷子)して出た場所では何やら不穏な集団が・・・
強制的に修羅場に巻き込まれたリィナがちょっとだけざまぁするお話です。そして修羅場とは関係ないトコで婚約者に溺愛されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる