ざまぁされたはずの悪役令嬢が戻ってきた!?  しかも、今度は復讐のため、溺愛ルートを目指すようです。 ~えっ、ちょ

夢追子

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31 ノエル,1

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      三十一

 白い子猫のノエルは、温かな毛布にくるまれながら伸びをした。
 突然の迷子と雨には驚いたが、主人の居室に帰り居心地のいい場所に収まれば眠くもなってくる。それでなくても、先程は大変な大冒険だったのだ。

 みゃぁ。みゃう。みゃうみゃみゃみゃ。
(訳:いい匂いのする優しいお姉さんに会ったなぁ。)

 木の上から降りられず鳴いていたところを助けてくれたメイドのお姉さんのことを思い出しながら、ノエルはとろんとした眼をぱちぱちとさせる。
 メイドのお姉さんのエプロンの中は、この毛布よりも暖かくて優しくて更に居心地が良かった。その上、メイドのお姉さんは優しかった。撫でてくれた時のメイドのお姉さんの笑顔を思い出し、ノエルの心は幸せに満ちていた。
「ノエル?」
 主人の手が、ノエルの毛並みを撫でる。
 ノエルは返事をせずに、毛布の中で目を閉じる。
「もう遠くに行ってはダメよ。」
 
 みゃあ。みゃうみゃう。
(訳:それはムリ。)

 ノエルは心の中で主人に反論した。
 誰に何を言われても、ノエルの子猫特有の好奇心を抑えることなど出来はしない。
 今日は失敗したが、優しいメイドのお姉さんに助けてもらって無事だった。
 今度は、お姉さんにお礼を言いに行ってもいいかもしれない。
 そんなことを考えながら、ノエルは夢うつつの中で揺蕩い始める。

 コンコン

 室内にノックが響き、ノエルを撫でていた主人の手が離れていく。
 離れていった主人の手を寂しく思い、ノエルは思わず抗議の鳴き声を上げる。
「にゃ。」
 だが、主人は来客の応対のためにノエルの抗議を聞くこともなく遠ざかって行く。
 ノエルは毛布の中で微睡みながら、やっぱり優しいメイドのお姉さんのことを思い出すのだった。
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