ざまぁされたはずの悪役令嬢が戻ってきた!?  しかも、今度は復讐のため、溺愛ルートを目指すようです。 ~えっ、ちょ

夢追子

文字の大きさ
上 下
33 / 54

31 ノエル,1

しおりを挟む
      三十一

 白い子猫のノエルは、温かな毛布にくるまれながら伸びをした。
 突然の迷子と雨には驚いたが、主人の居室に帰り居心地のいい場所に収まれば眠くもなってくる。それでなくても、先程は大変な大冒険だったのだ。

 みゃぁ。みゃう。みゃうみゃみゃみゃ。
(訳:いい匂いのする優しいお姉さんに会ったなぁ。)

 木の上から降りられず鳴いていたところを助けてくれたメイドのお姉さんのことを思い出しながら、ノエルはとろんとした眼をぱちぱちとさせる。
 メイドのお姉さんのエプロンの中は、この毛布よりも暖かくて優しくて更に居心地が良かった。その上、メイドのお姉さんは優しかった。撫でてくれた時のメイドのお姉さんの笑顔を思い出し、ノエルの心は幸せに満ちていた。
「ノエル?」
 主人の手が、ノエルの毛並みを撫でる。
 ノエルは返事をせずに、毛布の中で目を閉じる。
「もう遠くに行ってはダメよ。」
 
 みゃあ。みゃうみゃう。
(訳:それはムリ。)

 ノエルは心の中で主人に反論した。
 誰に何を言われても、ノエルの子猫特有の好奇心を抑えることなど出来はしない。
 今日は失敗したが、優しいメイドのお姉さんに助けてもらって無事だった。
 今度は、お姉さんにお礼を言いに行ってもいいかもしれない。
 そんなことを考えながら、ノエルは夢うつつの中で揺蕩い始める。

 コンコン

 室内にノックが響き、ノエルを撫でていた主人の手が離れていく。
 離れていった主人の手を寂しく思い、ノエルは思わず抗議の鳴き声を上げる。
「にゃ。」
 だが、主人は来客の応対のためにノエルの抗議を聞くこともなく遠ざかって行く。
 ノエルは毛布の中で微睡みながら、やっぱり優しいメイドのお姉さんのことを思い出すのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

婚約破棄された悪役令嬢が聖女になってもおかしくはないでしょう?~えーと?誰が聖女に間違いないんでしたっけ?にやにや~

荷居人(にいと)
恋愛
「お前みたいなのが聖女なはずがない!お前とは婚約破棄だ!聖女は神の声を聞いたリアンに違いない!」 自信満々に言ってのけたこの国の王子様はまだ聖女が決まる一週間前に私と婚約破棄されました。リアンとやらをいじめたからと。 私は正しいことをしただけですから罪を認めるものですか。そう言っていたら檻に入れられて聖女が決まる神様からの認定式の日が過ぎれば処刑だなんて随分陛下が外交で不在だからとやりたい放題。 でもね、残念。私聖女に選ばれちゃいました。復縁なんてバカなこと許しませんからね? 最近の聖女婚約破棄ブームにのっかりました。 婚約破棄シリーズ記念すべき第一段!只今第五弾まで完結!婚約破棄シリーズは荷居人タグでまとめておりますので荷居人ファン様、荷居人ファンなりかけ様、荷居人ファン……かもしれない?様は是非シリーズ全て読んでいただければと思います!

婚約破棄されるのらしいで、今まで黙っていた事を伝えてあげたら、婚約破棄をやめたいと言われました

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト第一王子は、婚約者であるルミアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、ルミアはそれまで黙っていた事をロベルトに告げることとした。それを聞いたロベルトは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

悪役公爵令嬢に転生した話

ルイ
恋愛
悪役公爵令嬢に転生した話』 あらすじ 乙女ゲーム『さまぁ・エターナル・ラブ』の悪役令嬢、レティシア・ヴェルネ公爵令嬢に転生した主人公。 婚約者である王太子アレクシスからの婚約破棄は、ゲーム通りの展開だった。 しかし――彼女は泣き叫ぶどころか、あっさりと婚約破棄を受け入れ、新たな人生を歩むことを決意する。 「王太子妃の座にしがみつくなんて、そんなの私の性に合わないわ」 ところが、婚約破棄後のレティシアには思わぬ波乱が待ち受けていた。 彼女の本当の価値に気づいた隣国の王、最強の騎士団長、謎多き公爵など、次々と魅力的な男性たちが現れ、彼女を求め始める。 一方、エミリアと結ばれたアレクシスは、次第に「レティシアを失ったことの重大さ」に気づいていくが――時すでに遅し。 自由を手にした悪役令嬢の未来は、ゲームの筋書きには存在しない。 これは、婚約破棄を機に本当の幸せを掴む悪役令嬢の物語。 「私の人生、これからが本番よ!」

幼馴染を溺愛する旦那様の前から、消えてあげることにします

新野乃花(大舟)
恋愛
「旦那様、幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

平山和人
恋愛
聖女のロザリーは年齢を理由に婚約者であった侯爵から婚約破棄を言い渡される。ショックのあまりヤケ酒をしていると、ガラの悪い男どもに絡まれてしまう。だが、彼らに絡まれたところをある青年に助けられる。その青年こそがアルカディア王国の王子であるアルヴィンだった。 アルヴィンはロザリーに一目惚れしたと告げ、俺のものになれ!」と命令口調で強引に迫ってくるのだった。婚約破棄されたばかりで傷心していたロザリーは、アルヴィンの強引さに心が揺れてしまい、申し出を承諾してしまった。そして二人は幸せな未来を築くのであった。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

完膚なきまでのざまぁ! を貴方に……わざとじゃございませんことよ?

せりもも
恋愛
学園の卒業パーティーで、モランシー公爵令嬢コルデリアは、大国ロタリンギアの第一王子ジュリアンに、婚約を破棄されてしまう。父の領邦に戻った彼女は、修道院へ入ることになるが……。先祖伝来の魔法を授けられるが、今一歩のところで残念な悪役令嬢コルデリアと、真実の愛を追い求める王子ジュリアンの、行き違いラブ。短編です。 ※表紙は、イラストACのムトウデザイン様(イラスト)、十野七様(背景)より頂きました

処理中です...