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不穏な影
しおりを挟む(※乙女ゲームのヒロイン、ローズ・クリスタル視点です)
ーーー何で…?
何で攻略対象たちに会えないの…?
アタシはヒロインなのにっ…乙女ゲームってヒロイン至上主義でしょ?おかしいくない…?
逆ハーに向けての攻略が進むどころか、何か…周りの貴族たちもいじわるだしぃ…!
アタシ、何も悪いことしてないよっ…!?
ヒロインと攻略対象たちは結ばれる運命なんだから、当たり前のことを主張しただけなのに…!
それなのに『非常識』とか『無礼』とか『立場をわきまえろ』とか何っ…!?
パパ…クリスタル男爵にも『お前のせいでめちゃくちゃだっ…!』って、何かむちゃくちゃ怒られたしーっ!
はぁ!?
意味わかんないんだけどっ!
モブキャラのアンタたちがわきまえなさいよ!!!
何様のつもりなのっ!?
まったく…!
アタシはヒロインなのよ!?
『変身チャーム』を買うために魔女のお店に行っても、何故か店がないしっ…なんなのよっ!?
場所はあってるはずなのに、お店じゃなくて空き家だなんてっ、そんなのアリな訳っ!?
チャームがないと、豪華なドレス姿に変身できない…!
一番の推しのアリステアに会えないじゃん!!!
あああ~~!!
最悪ぅうう~!!
ディランとはちょこちょこ話せていたのに、最近は全く関わりがなくなっちゃったし……アタシ、可哀想…。
みんな…アタシに夢中になるはずなのに、何で…。
はあ~あ~、むしゃくしゃしてたらお腹空いてきちゃった!
魔女のお店に行けず、帰りの馬車の中で考え込んでいたら結構カロリーを使ったみたい。
何処か良いご飯屋さんないかなぁ~。
あっ…!
ここ、ゲームでヒロインと攻略対象がデートするレストランだっ!
ちょうど良い、ここにしようっ!
「ねぇ!アタシ、あそこでご飯食べたい!」
馬車を止めさせて、侍女にそう言った。
だけど、侍女は表情を渋らせて意地悪をする。
「お、お嬢様…あちらは高位な方たち御用達の、最高級レストランでございますっ…そ、それに…男爵家には、あまりお金がっ…」
「はあっ!?意味わかんないんだけど!いいじゃん別にっ!」
何でアタシはダメなのよっ!?
アタシはあのレストランにふさわしくないって言いたいのっ!?
モブ侍女のくせに生意気っ…!
アタシ、ご飯食べるお客様だよっ!?
お客様は誰でも神様でしょ!?
お金だってツケにすればいいじゃんっ…。
もうっ、いい…!
こうなったら、行ったもん勝ちだぁ!
店に入ってしまえばこっちのものだと、馬車から飛び出そうとすると、侍女に必死に止められた。
はああああっ!?
ホント、何なわけぇっ!?
「このっ、放してっ!放してよぉ!放せっ!!」
「…っ…いっ…あっ…あ」
意地悪な侍女を叩いたり、引っ掻いたりして必死に抵抗するけど、全然放してくれないっ…!
ああああっ…!!
イライラするぅ…!!
アタシは侍女の髪をおもいっきり引っ張ると、窓に顔を押し付けた。
ブチッ!!と侍女の髪が抜ける……うわあ、馬車が汚れちゃうじゃん…掃除させないと。
良く見ると、自分のドレスにも散乱した侍女の髪がついていた。
ぎゃっ、きったな…!
「ちょっと…!アンタのせいでドレスが汚れちゃったじゃん!」
「っ、も、しわけ、ありま、せ」
「もおおおおおお!こんな汚い格好じゃレストラン入れないじゃんか!」
私は侍女にプンプンしながら、残念な気持ちで、窓からレストランを見詰めた。
ーーーって、ちょっと…ちょっと!ちょっと!
あれ、アリステアじゃないっ!?
レストランの入り口に、アリステアが誰かと歩いている…!
きゃあああっ!
カッコいい~!!
こんな格好じゃなかったら飛び出して抱き着いたのに…!
隣の奴誰よっ!?
邪魔だなあああっ!!
窓にへばりついてアリステアを見詰めていると、エスコート?してる女が邪魔で良く見えない…!
「…………え…」
ようやくアリステアの顔がちゃんと見えたと思ったら……その表情は、スチルでも立ち絵でも…いや、ゲームで見た事もない甘く蕩けた顔をしていた。
ヒロインにさえ見せた事のない顔を、あの邪魔な女にしている…?
アリステア…もしかして、洗脳されてる…?
あの邪魔な女に誑かされてるのっ!?
何あれ…マジで邪魔なんだけど……あっ、そっか。
攻略が上手くいかないの、あの女のせいか。
「…………ふうん」
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