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乳臭いと言われたから本当に乳臭くしてみた
しおりを挟むフリーランスの聖魔導師をしている私は、小さな魔道具屋を経営し、たまに知り合いの王宮魔導師たちの仕事を手伝って生計を立てていた。
聖魔導師は強力な治癒魔法を使えるため、有難い事に結構仕事が入ってくる。
最初はお城に出入りするなんて緊張でどうにかなってしまうと思ったが、国王陛下に謁見するわけでも、偉い人に会うわけでもないのですぐ慣れた。
そして、お城に出入りする度に、王宮魔導師に言われる事がある。
『相変わらず乳臭いガキだなぁ』
……確かに、身長は低いし、華奢だし、まだまだ子供なのは認めるけど、私はもう十六歳。
実家から一人立ちして、自立もしている。
子供扱いしているだけで悪気がないのはわかるが…無神経過ぎる発言に、年頃の私は毎回傷付いていた。
地味に抵抗してコロンをつけてみたり、髪型をハーフアップにしてみたりしたが、彼らには子供が無理して背伸びしているようしか見えないらしく笑われてしまった。
どうしてだろう…私はどちらかと言うとおとなしいタイプだと思うのだけど…。
余計な事は言わないし、騒ぎを起こした事もないし、生意気な態度を見せた事もない。
傷付き過ぎて疲れてしまった私は『乳臭いって言われるなら、本当に乳臭くなってみよう』と開き直る事にした。
事実にしてしまえば、もう傷付く事はない。
聖魔法を応用し、おっぱいの機能を向上させ、妊娠してなくても母乳が出るようにしてみた。
回復魔法をちょっとアレンジしたから、魔力を含んだ母乳は美味しいうえに回復効果もあるよ。
魔力も微々たる量しか消費しないし、我ながら完璧な技を生み出して、ちょっと嬉しくなった。
服装もちょっと良い服を着ていたが、やる気のない楽な格好でいいやと思った。
大人っぽくなるため伸ばしていたミルキーブロンドのロングヘアーも、三つ編みにして横に流した。楽な田舎者スタイルだ。
どうせ一生女の子扱いされないなら、身なりに気を遣う必要もないし。
私はいつになく解放された気分で、またお城での仕事に向かった。
爽やかな気持ちで仕事をする私の様子が、いつもと違うからか、周りが少しざわついたけど気にする事はない。
案の定、『良い事あったのか~?すぐ態度に出るなんてまだまだ子供だな』とか『何だ?今日はいつもに増して乳臭いな。朝飯のミルクでも溢したのか?』とか言われたけど、全部ニッコリ微笑んで流せた。
もうこの人たちには何も期待してないから大丈夫。
普段苦笑いしていた私の変化に、少々面食らった様子だったが、また普段のように『大人になったなぁ~』とからわれた。
だけど、その反応すら興味はない。
態度が生意気に見えないように、淡々と仕事を終わらせる事だけに集中した。
子供扱い…うん、今冷静に思えば大いに結構。
王宮魔導師は研究気質で無神経なところがあるが…美形が多く、モテる。
つまり…他の仕事をしている女性たちが、ギラギラした肉食獣のような瞳をして彼らを狙っている。
そのため…一時期激しい嫉妬の目を向けられる事が多かったが、乳臭い子供としか認識されていない私を見てぱったりと無くなった。
眼中にない、と判断されたのだ。やったね。
いやぁ、今までの私はどうかしていた。
こんなに楽で嬉しい事、他にないのに。
今も、女性たちから一番人気と言われる黒髪の青年…リュカと一緒に作業していても、いちゃもんをつけられる事もない。
長身で、貴族の次男坊らしく、品がある綺麗な顔立ちをしている。
少し口が悪いが、性格も気さくで人当たりが良い。
子供扱いされてなかったら、私は針のむしろだろう。
実はリュカが一番からかってくる人だから、二重の意味で苦手だった。
前は『そんなにしつこく乳臭いって言わなくてもいいのに…』と思っていたけど、今はむしろ感謝している。
気分が軽やかだと、作業をする手も軽やかだ。
さて、今日の仕事は終わった事だし、軽く休憩してから帰ろう。
「リュカさん、」
「なあ…フェリチータ」
隣で作業していたリュカを呼んだら、被せるように名前を呼ばれた。
何故か、少しそわそわしている。
「お前、何か甘い…その、ミルクの匂…」
「え?」
「っ!い、いや、何でもないっ…」
バッ…と焦った様子で顔をそらされてしまった。
ミルク…が、何だろう?
乳臭いのはいつもの事だろうに、どうしたのか。
不思議に思ったが…そんなに深く考える事もないだろうと、しばらくしたら帰る事を伝えた。
荷物をまとめ、席を立つと、すたすたとある場所に向かう。
休憩スペースにあるココアとドーナツを頂戴してから帰らなくては。
私は子供だから、二個食べていいよね?
キラキラとした気持ちで箱に手を伸ばした。
プレーンと、クリームのやつを選んで豪快にかぶりついた。あまい…美味しい。
「おっ、良い食いっぷりだ。ほら、俺のもお食べ」
「!ありがとう、ございます」
室長のイケメンおじさん…マッテオにチョコドーナツを差し出され、もぐもぐ食べながら受け取り、お礼を言った。
お行儀悪いけど、別に良いだろう。
美味しい…幸せぇ…。
顔をゆるませて、ハムスターのように頬張っていると、マッテオに笑われた。
「ははっ、お前は口数は少ないが可愛いやつだな。うちのとは大違いだ」
うちの…?
疑問に思って聞いてみると、いつも個人スペースで作業と研究をしている少年の事らしい。
名前は、アルジェント。
姿はチラッと見た事あるが、彼はずっと個人スペースにいるため、関わった事がない。
名前も今知ったし、同い年というのにも驚いた。
モーヴシルバーの髪はボサボサだが、整えれば知的で華やかな印象の美少年だという。
何でも百年に一人の天才だと言われ、十歳の時からここにいるが…癇癪を定期的に起こしているらしい。
マッテオは『普段は冷めた生意気な奴だが、そういうところは子供らしいな』と苦笑いを浮かべながら言った。
それでも、マッテオが瞳は優しく、彼への暖かな気持ちを感じる…大事な仲間と思っているのだろう。
聞けば、今やっている研究に行き詰まっていて、精神的に追い詰められていると、マッテオが心配そうに顔をしかめた。
確かに心配だ…けど、私はアルジェントが凄いと思った。
百年に一人の天才なんていうプレッシャーを抱え、生意気な子供だと思われながらも、一生懸命まっすぐ好きな事をしている。
そう、思った事を口にしたら、マッテオは目を見開き…真剣な顔になった。
「あいつ、ずっと徹夜続きなんだ。フェリチータ…もし、良ければ…あいつを休ませてくれないか?お前の言うことなら聞く気がして。もちろん、給金も上げておくぞ」
「…休んで、ないんですか?」
「ああ…今回は特に酷くてな」
それはまずい…が、室長マッテオの言葉を聞かないなら、私が言っても意味がないのでは…?
首を傾げると、マッテオは笑いながら『お前なら俺より何倍も効果があるよ』と言い切った。
何故…というのが顔に出ていたのか、彼は『お前がいる時は絶対癇癪起こさないんだよ』と続けた。
同い年の子供には、カッコ悪いところを見せたくないタイプの人なのかな…。
とりあえず、給金も出るし、挑戦してみよう。
マッテオいわく、アルジェントはチョコドーナツが好きらしく、まずはそれで気を引いてみる事にした。
ココアとチョコドーナツを二人分携え、いざ…!とアルジェントの元へ向かった。
個人スペースを軽くノックして返事を待つが、無音。
これは予想していたので、ちょっとびくびくしながらも『失礼します』と勝手に入った。
「なに…」
デスクに向かうアルジェントが不機嫌そうに振り向くと、私は無言でニコリと笑った。
「っ!?…君っ…」
「アルジェントさん、ちょっとだけ休憩しませんか?」
「は?………………マッテオさんか…」
「ドーナツ、美味しいですよ。一緒に食べましょう」
「……君と?」
「はい」
「………………………わかった」
アルジェントは少し考えると、意外と素直に頷いてくれた。もう少し苦戦すると思ったから拍子抜けである。
ココアとチョコドーナツをデスクの空きスペースに置き、角にあった簡易椅子を引き寄せて彼の隣に座った。
「!……?……君、いい匂いがする…ホットミルクみたいな、甘い匂い…」
「いい匂い…?」
アルジェントは、私の匂いをすんすんと嗅ぎながら顔を近づけてきた。
あ…母乳の匂いかな…。
普通だったちょっとアレな言動だが、ここの人なら仕方ないか…と思う。
それに、何だか嫌じゃないし。いっか。
初めて…『乳臭い』じゃなくて『ホットミルクみたいな甘いいい匂い』って言ってくれた人だし。
ふふ…嬉しくて、つい顔がゆるんでしまう。
「ありがとうございます…いつも乳臭いって言われるから嬉しい」
「え…それ、セクハラじゃない…?悪気なくても最低…」
アルジェントの眉間にシワが寄った。
わあ…この人、私の気持ちに寄り添ってくれている…優しいなぁ。
前言撤回、全然ここの人たちと違う。
へにゃあ…とだらしない顔でにやけていると、アルジェントは一瞬不自然に固まってから、小さい声で『敬語、いらない……アルでいい…』と言ってくれた。
私は更に嬉しくなって『リタ』って呼んでと返した。
えへへ…この人好きだなぁ。
嬉しいから、私のチョコドーナツもあげちゃう。
「わっ…え、な、なに…」
「アル君、あーん」
「は!?」
「美味しいよ?はい、お口開けて?ね?」
ちょっとふざけて『あーん』をしてみたら、アルジェントは顔を真っ赤にさせ、最後は観念して口を開いてくれた。
優しいし、可愛いなぁ…何だか、いっぱい尽くしてあげたい気分になっちゃう。
あれぇ…おかしいな…私、こんな事する子じゃないのに…いっぱいよしよししてあげたいって思ってる…?
いつの間に無意識に、彼の頭をなでなでしていた。
ピシリ…と固まる彼だが、嫌がっている様子は無くて安心する。
あれかな…母乳が出るようにしてるから母性本能も上がってるのかな。
気のせいではなく、本気で。
マッテオの話を聞いて、アルジェントも私と同じ、どんなに頑張っても『子供だから』と言われてしまうストレスを抱えているのだろうとわかった。
だから、彼に伝えたいと思った…『わかってくれる人だけにわかってもらえばいい』と。
どうしよう…今日初めて話した人なのに、そう思うと愛しさが溢れてきた。
うーん…これ、おっぱいにかけた聖魔法が影響してるね…あっ♡
だめ…♡
ぼ、母性本能が抑えられない…♡
アルジェントの両親は彼が八歳の時に亡くなったという話も聞いており、余計に甘やかしてあげたくなってしまう。
おっぱいにかけた母乳が出る聖魔法の、意外な欠点……それは、母性本能を刺激されたら止まらない。
「ねぇ、アル君…寝てないんだって?大丈夫?」
「…別に…」
「ダメだよ?いっぱい頑張ってとっても偉いけど、ちゃんと休まないと」
「え、偉い…?」
「うん!だから、ちょっとだけねんねしよ?リタにお世話させて…?ね?お願い…」
気づいたら、彼をぎゅっと抱き締めて、頭をなでなでしていた。まるで幼児にするみたいに。
硬直する彼の緊張をほぐすように、優しく、ゆっくり、甘い言葉を重ねた。
良く見ると、本当に顔色が悪くてぎゅんと胸が締め付けられた。
ドーナツより栄養のあるもので回復させないと…。
自分の魔法のせいで母性が暴走している私は、すぐにある事をしようとした。
「アル君、おっぱい飲む?今ね、リタ、おっぱい出るの」
「え…?えっ!?はあぁあっ!?」
ーーーガラッ、ガラガラ、ドッターン。
湯気が出そうなくらいアルジェントの顔が真っ赤になり、個人スペースの外からは何やら大きな音がした。
何だろう…でも、今は、アルジェントが大事だ。
「はい♡どうぞ…♡」
もぞもぞと上半身をはだけさせて、母乳ではった小ぶりのおっぱいを出した瞬間、外から大きな声がした。
「ストーーーーーーーップ!!フェリチータ!!何かよく分からないけど、やめろ!!」
「俺たちの理性が危ない…!」
マッテオとリュカの焦った声が聞こえる。
やめろとは言うが、個人スペースに入ってくる気は無さそうだ。
頭に疑問符を浮かべて聞いた。
私を女の子扱いしてくれるアルジェントの気持ちはわかるとして、何で、みんなの理性が危ないの…?
「…何で…?乳臭い子供なのに…?」
ーーーその日から私を子供扱いし『乳臭い』という人は一人もいなくなった。
だけど、意味がわからない私は相変わらず聖魔法を自分にかけて、アルジェントを甘やかしていた。
今日はお店も王宮魔導師たちの手伝いもお休みだが、アルジェントのお世話をするためにお城を訪れた。
魔法で母性が暴走したのをきっかけに、単純な私はアルジェントにぞっこんになり、恋人にしてくれと勢い良く伝えた。
アルジェントは真っ赤になり、無言で、何度も首を縦に振ってくれた。
可愛いかったなぁ…♡
カバンの中は完全にお世話セット一式だ。
簡単なお弁当も作ってきたが、アルジェントがちゃんと食べてくれるかが心配だ。
「(アル君、おっぱいちゅうちゅうするの好きだからなぁ)」
魔法研究棟に入り、軽く挨拶をすると、すたすたと彼の個人スペースに向かう。
今日も徹夜したのだろうか…心配になってしまう。
アルジェントの事しか頭にない私は、周りの様子が一切目に入っていなかった。
「おはよう!今日はね、サンドイッチを作ってきてーーーー」
「……リタ」
「ひゃあっ…んっ…ア、アル君…♡どうしたのぉ?」
「りた…りたぁ…おれ、もうやだぁ…」
「んっ…あっ…なぁに?あんっ…なにが、やなの?」
ドアを閉めて、椅子の上に荷物を置くと、後ろからアルジェントに抱き締められた。
首元に顔を埋めながら、服の中に手を入れられて下着をずらされ、甘えるようにおっぱいを遠慮なく揉みしだかれている。
あんまり強くされると母乳が吹き出ちゃうよ…ぐずぐずの甘えん坊さんだなぁ。
先っぽを強く押され、摘ままれたり、引っ張られたりして、ぶしゅっとミルクが飛び出た。
「ひゃんっ…あんっ…よしよしっ…」
あ…出ちゃった…仕方ないなぁ、もう。
頭をなでなでして落ち着かせて、何が嫌なのか聞いてあげないと。
「先におっぱいちゅうちゅうしようね」
「うん…おっぱい…のむ…」
アルジェントは私の前に回り込むと、椅子に座り、おっぱいに目線を合わせた。
ぷるんっと揺れ、パンパンにはった小ぶりのおっぱいが、母乳を垂れ流しながら外気に晒される。
私は立ったまま、アルジェントの頭を抱き込んで、優しく頭を撫で続けた。
アルジェントは必死に私の先っぽをねぶった。
加減なしに吸って、舌先で小刻みに転がされ…おっぱいに夢中の姿がとても愛おしいと感じた。
でも、私も気持ち良くなっちゃって、甘やかす事に集中できなくなるのが最近の課題なの。
だめだなぁ、私。
アルジェントがこんなに頑張ってちゅうちゅうしてるんだから、ちゃんと褒めてあげないといけないのに。
「んんっ…じょ、ず、じょーず♡えらいね、あるくん…♡」
「りた、りたぁ…♡」
「だ、いじょうぶ…ずっと、りたが、おせわ、するからね…♡」
その後、また徹夜をして負のスパイラルに陥ったアルジェントを自宅に連れ帰り、ご飯からお風呂までいっぱいお世話をしてあげた。
周りが何故かざわざわしてたけど、アルジェントのお世話に忙しい私は何も気にしなかった。
【フェリチータは、その場にいた魔導師たちの性癖を歪めてしまった事に全く気づいていなかった。】
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