死ぬ事に比べれば些細な問題です。

きみどり

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天使の手のひら

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(※後半にガールズラブ要素を含む性的描写があります。苦手な方はご注意下さい。)

何でも屋ヒスイの近辺を探った際、彼は変装が得意だと…皆、口を揃えて言っていたらしい。

優れたステルス能力とーーー優れた変装能力。

まさに、作戦にぴったりの人材だった。

彼のおかげで、作戦は無事に成功した。
ヒスイにエリザベス王女をリスペクトした女装をしてもらい、周りに怪しまれないようにシリルを上手く誘い込んでもらった。

エリザベス王女の侍女たちには邪魔が入らないように周辺を固めてもらい、作戦に使えそうな令息たちをシリルの元へ誘導してもらった。

しつこく口説いてくれそうな女くせの悪い令息と、それを止めてくれそうな正義感の強い直情的な令息を。

エリザベス王女で頭がいっぱいのシリルは、二人の令息が喧嘩を始めても、気に止めずに立ち去ると見越して。

シリルは絡まれた分の時間を取り戻そうと急ぎ、なれないヒールでお約束のように転ぶだろうと予想し、人払いをした場所で私は待機していた。

メガネをかけた、メイドの姿で。

…小説で、こういう迂闊な描写が、幾度と無くあったから簡単に予想が出来た。

目の前で、物語のヒロインのようにスッ転んだシリルを内心嫌々支え、目が合った瞬間…女神に授けてもらったスキル『視姦』を発動させた。

相手を見詰めた分だけ欲情させ、発情状態にさせる『視姦』。
わずかな間でも、効果てきめん。

シリルは息を荒くして、ふらふらと立ち上がり、休憩室の方に歩いていった。
そして、そばに潜んでいたヒスイが、シリルと隣国の王子が出会ったのを確認して、作戦は終了した。


ちなみに、隣国の王子をどう誘導したかというと…。

数人の侍女に令嬢に扮してもらい、舞踏会場で、令嬢たちが隣国の王子に興味を持つように仕向け、わざとあてがった。
権力に群がる連中にうんざりしている王子に、ギラギラと欲を燃え上がらせた令嬢たちを。

当然、それを嫌がる王子は休憩室に逃げ込んだ…という訳だ。


ーーー今ごろ、会場で気になっていた令嬢(シリル)が色っぽい表情で現れ、物語の恋愛イベントのような展開になっているだろう。

もちろん…喧嘩をしている中、シリルがいない事に気づいた二人の令息も、休憩室に遅れて合流する事になる。

何度も言うが…女装したシリルは完璧な美少女。
舞踏会場で注目を集め、輝いていた無垢で無邪気な華…それが艶やかに色づいているのだ…男の欲を刺激しない訳がない。

彼らは、天真爛漫だった令嬢の色っぽい一面に『あの無邪気な華が、ベッドではどう乱れるのか…』と無意識に思い、胸をときめかせ、泥沼の取り合いが始まる。

発情状態のシリルは弱っているように見え、『守ってあげたい』という庇護欲と『目の前の華を自分のものにしたい』という独占欲も同時に煽る事だろう。

ーーー根拠…?
大丈夫…シリルに目を奪われた時点で、もう取り合いは始まってるも当然なのだから。
小説の読者として、シリルに好意を持つ者のパターンと特徴は嫌という程理解している。

ただ…私は、きっかけと、舞台を用意してあげただけ。



私とヒスイは、侍女の一人に監視をお願いして、すぐに王女宮に戻った。
外からヒスイに抱っこされて戻ってきたのだが…さすがヒスイ…誰にも気付かれずに戻って来れた。  

この通路を通れば、もうエリザベス王女の部屋だ。

「はぁ…はぁ…ご、ご令嬢を、さっきまで抱っこしていたなんてっ…まだ、天使の感触が腕に残って…羽のように軽くて、柔らかくて、いい匂いでっ…!」

「ヒスイさん…リーさんに聞かれたらぼこぼこにされちゃいますよ…それにそんなに軽くないです…」

…が、先ほどまでキリッと仕事をしてくれたヒスイが、私を下ろした瞬間から様子がおかしくなり、対応に困っていた。
息が荒くて、興奮してるの…。

オタク的反応というか…その、気持ちはわからなくもないけど…自分が当事者になると、どうしていいかわからなくなる。
推される側は、どうもなれない。

「ああっ…オレの発言に引きながらも、オレの心配をしてくれるなんてっ…まさに、天使…!」

「て、天使だなんて…もう…」

天使って…私みたいな人間に使う表現じゃないでしょ…もうオーバーなんだから…恥ずかしいなぁ…。

「ああああーーーっ、恥ずかしそうにしているお顔もなんて…ぐえっ!!」

「無礼な…お嬢様に何をしている」

「ちょっ、ちょっと待ってくださ、痛っ!?いだだだだだだだっ!!」

あ…結局、リーにどつかれちゃってる…。
か、顔が…顔が怖いです、リーさん…。

ヒスイを一応は信用しているが、まだ猜疑心が完全に無くなった訳ではないようだ。

信用…できると思うけどなぁ。
私の作戦に協力してくれたし…『白』もとれてるし…。

それに何でも屋のヒスイに、仕事としてやってもらったから、大丈夫だと思ったのだけど…私、考えが甘いのかな…?

「ビーチェ…!!」

リーをどう止めようか考えていると、後ろから女神のような…というか、あの美しさと可愛さはもはや女神…そう、後ろから女神の声が聞こえてきた。

エリザベス王女が、私のために通路まで出て来てくれたのだ。
は?好き。

「エリーさ…むぐっ!?」

「ビーチェ…私のビーチェ…どれだけ心配だったかっ…大丈夫?ローレンスの息子に変な事されてない?」

名前を呼びながら振り返った瞬間、私の顔は特盛ロイヤルおっぱいに埋もれていた。
顔が、おっぱいサンドイッチの具にされています。
幸せサンドされています。
なるほど…これが、この世界の春のパン祭りか…と、あまりに幸せ過ぎて意味不明な事を思う。

強く抱き締められてちょっと苦しいけど、そんなのどうでもいい…。
あったかい…ふわふわ…いいにおい…♡

「んぐっ…ら、らいじょーぶ、れすっ」

「ほんと?」

「あ、あいっ…」

「良かったぁ…ん、ちゅっ」

おっぱいにくらくらしながら何とか返事をすると、エリザベス王女はようやく安心してくれたみたいだ。

私の顔をおっぱいから解放すると、優しく両手で包み、上を向かせ、唇のすぐ横にキスをしてきた。

ひゃあ…い、いま…唇の端を掠めた…エリザベス王女の尊い唇が掠めた…。そ、尊死しちゃう…。

「ビーチェ♡疲れたでしょ?一緒にお風呂に入ろーね♡エリーがすみずみまで綺麗にしてあげるから♡」

エリザベス王女の唇がまた唇の端を掠めた後、また顔を抱き締められ、おっぱいに埋もれた。
やぁらかぁい…いいにおい…しゅきぃ…♡

「えりーしゃま…おっぱい…しゅきぃ…」

「うんうん♡お風呂でいっぱい触って良いからね♡」

お風呂…エリー様とお風呂……数年振りのロイヤル生おっぱい…今回は特盛バージョン…考えただけで鼻血が出そうだ…。
どうしよう、課金したい。

「わ…え、なにあれ…なにあの禁断の聖域…最高…助かる…助かり過ぎる…」

「黙れ、静かにしろ」

「ぐえっ」

何かを忘れている気がするが、でろんでろんに溶けてメロメロになってしまった私は、エリザベス王女に促されるまま部屋に入った。
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