死ぬ事に比べれば些細な問題です。

きみどり

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ミス

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(※ガールズラブ要素が強いです。苦手な方、嫌悪感がある方はご注意下さい)

結論から言おう。
私は、王宮医師から『ストレスによる緊張と疲労』と診断されました。

本当に元気だという私の声は、何かを誤解しているリーや侍女たちに信じてもらえず大事おおごとになってしまった。

もう自分にはどうにも出来ず…みんなに迷惑をかけてしまったと、冷や汗が、変な力が、体に…。
その様子を見た王宮医師に勘違いされたのだった。

ーーーや、やらかした…。

エリザベス王女の大事な社交デビューを、他でもない私が邪魔してどうするの…。

王宮医師が駆け付けた後…診察の途中で、顔を真っ青にしたエリザベス王女と表情を固くした兄が現れた。
舞踏会を早めに退場して、息を上げて急いで来てくれたらしい。
あんな…強張った表情で心配してくれて…私は申し訳なさで胃がキリキリ痛んだ…。

ガイアもかなり心配してくれているらしいが…周りの目があるため、さすがに王女宮のエリザベス王女の部屋までは入れない。
いくら友人でも、異性のガイアがこんなタイミングでここに入るのはまずい。
違和感しかない。
変な噂の元になってしまう。

……決して、自惚れている訳ではないが…ガイアの今の心境は最悪だろう。
あの過保護で嫉妬深くて、独占欲の強い彼の事だ…ハイライトの無くなった瞳でドロドロに病んでいそう。
一度気に入った対象への愛着が強すぎるのだ。

ああ…大事な推したちに、こんなに心配をかけて…迷惑をかけるなんて…胃に穴が空いてしまう。

更に…ストレスと聞いて、二人の表情がほの暗く歪み、リーや侍女たちの表情も危うさを感じるものになっていた。
小声で『だぁれ…?私のビーチェをいじめたのは…?』とか『……奴が原因か』とか『…斬る』とか『…即刻排除を』とか不穏な台詞が聞こえた気がして、私は焦りながら平和な理由を考えた。

咄嗟に出た言葉は…『エリー様がいなくて、ビーチェ…とっても寂しかったのぉ…』だった。
エリザベス王女がそばにいなくて寂しくて寂しくて仕方ないけど我慢してましたー…という事にしたのだ。

いや、もっとまともな理由なかったのかーーーと…思ったが、みんな何故かあっさり納得して落ち着いてくれた。
普段の様子に戻ってくれて良かった…。

ガイアの元へも、私の安否を報告するため、エリザベス王女が侍女を一人送ってくれた。

兄はまだ舞踏会場に戻らなくてはならないらしく、私の頭を優しく撫でて、額にキスをした後……エリザベス王女に情熱的なキスをされてから出て行った。
…いっぱい愛されてるね、お兄ちゃん。

そして…エリザベス王女は部屋から侍女たちを下がらせ、リーも部屋の前での待機に戻り、エリザベス王女と私は二人きりになった。

私の寝かされているカウチソファーに、こちらを覗き込みながらゆっくり腰を下ろすエリザベス王女。
顔に優しく手を添えられて…甘く蕩けた瞳で見下ろしてくれている。

あっ…しゅき、とーとい。
下から見るエリザベス王女は、何とも艶やかでドキドキしてしまう。
やっぱり今日のドレス姿は薔薇の女神のようで、何度見ても、自然と視線が吸い込まれる。

思わず思考が溶けそうになるが、すぐに現実を思い出して一気に冷えた気持ちになる。
自分は、エリザベス王女の大事な日に何て事を…。

「あっ…め、迷惑かけてごめんなさいっ…エリー様の、社交デビューなのに…本当にごめんなさい…」

「もうっ、いいの。何にも気にしなくて大丈夫…ビーチェの方が百万倍大事だもの」

「へ……へあっ!?」

綿菓子のような、甘いふわふわした声音で囁かれた言葉に衝撃を受ける。
…いくらなんでも甘やかし過ぎだ。

それは無い。
私より、エリザベス王女の方が百億倍大事だ。

「そんなにストレスを感じるまで、エリーがいなくて寂しかったの?可愛い…とっても可愛い…♡寂しい思いをさせてしまってごめんね…ちゅっ♡」

「んっ…だ、だめ、ちゃんと怒って…ビーチェ、悪い子だったのに…」

「ビーチェはずーーっといい子だよ♡」

「え、ええぇ…それは無いで、すううううっ!?」

「えへへ…♡ビーチェのストレスが無くなるように、いっぱいビーチェの好きな事しようねっ♡」

ひゃあああっ。
可愛い過ぎる笑顔で、私にのしかかるエリザベス王女。

こんな押し倒されたみたいなシチュエーションで、女神のお顔が目の前にあるだけで尊死しちゃいそうなのに…私のおっぱいを幸せな感触で押し潰す特盛ロイヤルおっぱいが、かつてないほどのボリューム感を与えてくる。
だ、抱き締められてる時と全然違うっ…!

お、おっぱいがおっぱいに押し倒されて潰されてっ…おっぱい圧でおっぱいがおっぱいにのみ込まれちゃう。
とにかくおっぱいである。

特盛ロイヤルおっぱいの前では、私のおっぱいはヒヨコおっぱいである。
逆らう事などできない。
もう、圧死したとしても悔いはない。

「お…お…」

「お?…なぁに?」

「お、おっーーーーはっ…!」

エリザベス王女のいたずらっ子のような言葉の先を煽る声にハッと気がつく…これではいつもの流れになってしまう。
危うく『おっぱい…しゅきぃ…』と言って、エリザベス王女のペースになるところだった。

「あ、だ、だめ…ちゃんと怒って…!」

「んー♡今日のビーチェはちょっと強情なんだね♡」

エリザベス王女は甘くふんわり微笑んでいるのに…ちょっといじわるな感じがする。
なに…この、ちょっと余裕のある女王様感…新たな一面にドキッと心臓が跳ねる。

え、その内、ドライでクールな表情をしだしたらどうしようっ…。

そんなエリザベス王女を想像すると、胸がキュンキュンしてメロメロになってしまう。
それもいい、きっとどんなエリザベス王女も最高に尊いに決まっている。

まずい…これではどんどんエリザベス王女に流されてしまう…一旦、落ち着くために視線をそらす。

「…………………………っ!?」

だが、視線をそらした先を見て、別の意味で心臓が跳ねた。


ーーー何故、部屋の窓が開いている…?
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