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王女の味方
しおりを挟む「ベアトリーチェ様♡こちらはいかがですか?」
「んむっ…お、美味しいです…」
「それはようございました♡」
「ベアトリーチェさまぁ♡こちらもお召し上がりになられますかぁ?さっ、お口を開けて下さいませ♡あーんっ♡」
「あ、あー…あむっ…美味しい、です…」
「ベアトリーチェさまっ♡わたくしのスプーンにもあーんして下さいませっ♡」
「は、はいっ…あーん」
「ああっ、ずるいっ!次は私だったのにっ…!」
「私もあーんしたいですぅ!」
私は、今、最高級シングルソファーに腰掛け、もぐもぐと必死に口を動かしていた。
次から次へと、口元にやってくるスイーツを乗せたフォークとスプーン。
周りには、私を取り囲んで“あーん攻め”をしてくる美女、美少女たち…。
そう…エリザベス王女の部屋で彼女の帰りを待っている間、エリザベス王女専属の侍女たちが私のお世話をしてくれているのだ。
エリザベス王女専属の、上級護衛侍女部隊。
若くして優秀な者が多く、通常の業務能力はもちろん、護衛も出来る戦闘力を持ち合わせているオールワークスエリート。
しかも…能力だけではなく、容姿も完璧だった。
むっちり、スレンダー、良いとこ取りのバランス型、小柄、長身…などバラエティーも豊か。
セクシーお姉さん系、おっとり癒し系、あざと可愛い系、正統派な清楚系、無表情なクール系、キツめなツンツン系…とにかく、タイプは色々だけど、みんな総じて見た目とスタイルがとても良い。
そんな…強くて仕事の出来る、美女と美少女しかいないのだ。
ずごい…この世界…。
ーーーそして…ここが一番重要なポイントだ。
なにより、主人への忠誠心が素晴らしい。
みんな、エリザベス王女を大事に思っているし、エリザベス王女の事を一番に考えて行動している。
この上級護衛侍女部隊は、シリルの一件があったすぐ後に、王妃がエリザベス王女のために作った部隊だ。
物語には存在しなかった、エリザベス王女の味方。
王妃自ら一人一人慎重に見極め、かなり厳しく人選した。
ちなみに…今までのエリザベス王女の側にいた、毒でしかなかった使用人たちは全て追い出して辺境に送ったらしい。
そこは使用人の監獄と言われていて、行動が厳しく管理され、過酷な自然環境で逃げ出す事は不可能。
更に…浅はかな使用人に対して、絶対に容赦しない領主がいるという。
物語にあまり関係ない過去の描写は少なく、詳しい事は知らないが……エリザベス王女を苦しませていた愚か者たちめ…当然の報いだ。
悪意がなくても、立派な悪になりうる。
己の仕出かした罪の重さを知り、後悔し、絶望しろ。
私も、エリザベス王女を傷付け、苦しめる者に対しては、一切の同情も容赦もしない。
エリザベス王女は幸せにならないといけない。
彼女を守るためなら、傷付いても構わない。
死ななければ、どうって事ない。
でも、私一人では手の届かない事がたくさんある。
だから…上級護衛侍女部隊は、私にとってもとても有難い存在だった。
この侍女たちはエリザベス王女の絶対的な味方。
エリザベス王女の魅力を十分に理解している点も本当に素晴らしい。
「あらぁ?もうお腹いっぱいになられましたかぁ?」
「ひゃっ!?あ、は、はいっ…!」
甘い柔らかい声で話しかけられて、ハッ…と、また考えに浸ってしまった事に気が付いた。
顔を上げるとーーーあざと可愛い系美少女の顔が目の前にあって、思わず動揺してしまう。
それをどう受け取ったのか…一瞬ピシリと動きを止め、侍女たちの表情が険しくなった。
え…な、何だか、嫌な予感がっ…。
「っ!お顔が少し暗いですわ…!」
「まあっ…!何処か具合がっ…?」
「ベアトリーチェ様っ、気持ち悪いのですか?痛いところはありますか?」
「ずくに王宮医師をお呼びしてっ!」
「王女殿下に早くご報告をっ!」
「へあぁっ!?」
お、王宮医師っ…!?
エリザベス王女に報告っ!?
だ、だめっ!
社交デビューの邪魔をしてしまうっ!
みんな真剣な顔でテキパキと動き始めて焦る。
一大事というように体調を心配され、慌てて止めに入った。
「だ、大丈夫ですっ…ちょっと、あの、えっと…ね、眠くなってしまって…」
頭に浮かんだ適当な理由を言って、これ以上心配させないようにニコッと笑ってみた。
だけど…何故か皆さん、切なそうな、苦しそうなお顔をして信じてくれませんでした…。
「ですがっ…」
「ベアトリーチェ様…我々を心配させまいとっ…」
「何て健気で奥ゆかしいの…」
ち、違うのっ…!
美少女のお顔が目の前にあって動揺しただけなのっ…!
「何事ですか?お嬢様に何か?」
「フォクブルー卿…!」
「リ、リーさん…な、何でもないんですっ」
「お嬢様…?」
部屋の外で待機していてくれたリー。
五年前よりカッコ良さに磨きがかかった私の護衛。
騒ぎを聞き付けて、中に入ってきてくれたみたいだけど…これは、良くない流れだ。
急いで異常がない事を伝えたのだが…リーは心配そうに眉をひそめた。
私のそばにいたセクシーお姉さん系侍女が何があったか説明すると、余計に表情が険しくなる。
あ…これ、まずい。
「お嬢様は…大変優しく、賢いお方です。周りに迷惑や心配をかけまいと我慢している可能性があります。すぐに医師を呼んで下さい」
「はいっ!」
「わたくしは王女殿下の元に行って参ります!」
「私は王宮医師をっ…!」
話がどんどん大きくなっていくっ…!?
リーが真剣に重く言うと、周りの侍女たちがまたテキパキと動き始めた。
「そ、その必要はありませんっ!私は元気です!」
「いけませんわっ!」
「ベアトリーチェ様、我慢しないで下さいっ…!」
えええ。
焦って否定するも、逆に押し切られてしまった…。
「ベアトリーチェ様は王女殿下の天使様っ…それに、わたくし共の天使様でもございます。ベアトリーチェ様に何かあってはっ…」
セクシーお姉さん系侍女に手を優しく握られながら言われた。
て、てんし…?
テンシ…?
聞き間違えだよね…?
一体何の事だろう…?
私は頭に疑問符を何個も浮かべながら、ぽけーっと成り行きを見守る事しか出来なかった…。
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