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謹慎

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(※ガールズラブ要素を含む性的描写があります。嫌悪感がある方はご注意下さい)

私の部屋に大量のプレゼントが運ばれてきた。

「ビーチェ♡今日もビーチェのためにたくさんおみやげ持ってきたのっ♡」

エリザベス王女は甘くとろけた極上の笑顔を炸裂させながら、私を正面から抱き締めて、頭にちゅっ、額にちゅっ、頬にちゅっ…とキスの雨を降らせてきた。

そう…私は、推しに貢がれていた。

今日も最高に可愛くて、最高に尊い推しだが……私は少し困っていた。

実は、エリザベス王女はグレンヴィル公爵邸に遊びに来る度に、私へと大量のプレゼントを持ってやってくるのだ。
エリザベス王女は純粋な思いでプレゼントしてくれているだけだが、こんなに頂く訳にはいかない。

彼女の溢れんばかりの気持ちは嬉しいが…このままでは“尊死”してしまう。

「ひゃっ…」

「はぁ…ビーチェ…♡私の可愛いビーチェ…♡」

更に、愛情表現もとどまる事を知らず…最近は、耳たぶを唇で優しく“はみはみ”してくる様になった。

全然嫌ではないのだが…あの柔らかい尊い唇で吐息混じりにはみはみされると、くすぐったくて背中がぴりぴりぞくぞくして、全身の力が抜けてしまう。

「ビーチェ、好き♡大好きっ…♡」

「んっ…び、びーちぇも、えりーしゃま、だいしゅき…!」

「っ!!ひうっ…♡びーちぇえええっ♡」

だけど、止める気はない。
あまりにも幸せそうに、夢中ではみはみするので、彼女の好きにさせたいと思った。

物語では、シリルに出会った瞬間から終わる事のない不幸に落ちていくエリザベス。
その彼女が、今は物語の道から外れて、自分の幸せを歩もうとしている。

悲惨な運命を知っているからこそ、エリザベス王女の幸せは、どんな小さな事でも全部守りたいっ…!

それに…推しが幸せなら、私も幸せだ。


ーーーただ…今の、推しに貢ぐのではなく、貢がれている状況は非常に宜しくない…!


エリザベス王女は、私が“半月の自室謹慎処分”になってから、外に出れない私が退屈しているだろうと、ほぼ毎日会いに来てくれている。

“半月の自室謹慎処分”というのは、この前の事故に遭ったスペンサー公爵一家に馬車を貸した事が関係している。

私が馬車ではなく、護衛のお兄さんに抱き上げられて帰ってきて、『一体何があったっ!?』と、グレンヴィル公爵家は使用人も含め大パニックに陥った。

罪悪感に胃をチクチク痛めながら、理由を説明し、護衛のお兄さんに非がない事を必死に訴え、両親に心から全力で謝った。

私の気持ちが伝わったのか、責められたり、否定はされなかったが…両親と兄の表情は暗く、不安や心配の色が濃く出ていた。

三人に『無事で良かった』と抱き締められた時、私は尋常ではないくらい心配をかけたのだと改めて理解した。
予想していたとはいえ…頭から冷水をかけられた様な衝撃と共に、痛いくらい胸が締め付けられた。

護衛のお兄さんが何も悪くない事も正しく理解してもらえたが、私が危険になりうる状況を考えると、お咎めなしという訳にはいかなかった。
形の上、何かしらの処分をしないと、都合の悪い事が起こる可能性があるからだ。

護衛のお兄さん本人の希望もあり、父から一ヶ月の謹慎処分が下された。
それが最善とわかっていても、申し訳なくて仕方がなかった。
悪いのは私だ。

だから…私も謹慎処分を受けて、彼の謹慎期間を半月にしてもらったのだ。

それに加え…護衛のお兄さんに、お礼として何か欲しい物や、して欲しい事がないか聞いてみた。
また、困った優しい笑みを浮かべて『気にしないで下さい』と言われても、これだけは引けなかった。

すると、名前を呼んで欲しいと言われた。

キラッキラしたイケメンスマイルで『お嬢様に“一介の護衛”が名乗るのは畏れ多いと思い、控えていましたが…褒美を頂けるのでしたら、是非ともお願い致します』と言われてしまった。

い、一介の…?
ええ…強いから護衛に選ばれたって言っていなかった…?

別にどんな立場であろうと、普通に名乗ってもらって良かったのだが……やはり、私が公爵令嬢だからか。
求められていないなら、余計な事はできない…と、色々気を付けてくれていたのかもしれない。

彼の名前は、リー・フォクブルーというらしい。

私は戸惑いながらも『リーさん』と呼ぶと…『敬称は不要なのですが…』と言いつつ、精悍な顔をゆるめ、頬を染め、嬉しそうに笑ってくれた。
周りにキラキラしたエフェクトの幻覚が見えるくらいの、輝かんばかりのとろけた笑みを。

…その笑みを向けられた私は、“前世の私”が、守備範囲外のアイドルから“神ファンサ”されて『え…すき…』となった事を思い出した。


ーーーえ、尊いっ……いや、ダメだ…!


私にはもう、尊さの極みっ…エリザベス王女という推しがいるのに…!
だけど…思わず『リーしゃん、しゅき…』と抱き付いてしまった私は悪くないと思うの…。

だって、あんな事に巻き込んでしまったのに、私に心から仕えてくれていると、あの優しい神対応と眩しい笑みで、これでもかとわかったから。

こんなの、ジーンッ…と胸が熱くなって、感動がこみ上げない方がおかしい。

感極まって抱き付く私に、リーはブルーグレーの髪をかきあげ、キリッとした黒い瞳を照れたように細めて『っ…参ったなぁ…』と言った。

困ったと言いつつ、嬉しそうにしている。
私の護衛になって日が浅いのに、そこまで好意を寄せられている事に驚いた。

なら、感謝の気持ちを更に伝えるため、頬にキスをしても嫌がられないだろう…!
子供の立場だからこそ出来る感謝の伝え方だ…!

私はとにかく、最大限に感謝を伝えたかった。

……その後、何故だか、リーがしばらく固まって動かなくなってしまった………嫌だったのかな…?

「ビーチェ…?沈んだお顔をして、どうしたの…?」

「っ!?…な、何でもないですよ…!」

ああ、いけない…。
回想でリーの事を思い出していると、エリザベス王女に心配をかけてしまった。
私の顔を両手で包んで、絶世の美少女が覗き込んできてくれている。
顔が近い…とても近い…これでは口と口でキスできてしまう。
鼻血が出そうだ。

「ホント…?」

「え、えっと…お、お兄様が、ご用で、いないので…」

「まあ…だから元気ないのね…可哀想に…。よしよし、ジェイクが帰ってくるまで私がそばにいるからね」

しどろもどろで誤魔化すと、また抱き締められて、優しく頭を撫でられた。

「どうすれば寂しさが紛れるかしら……うーん……あっ!そうだわっ…!甘えん坊なビーチェは、私のおっぱいが気になっていたよね!えへへ、今だけ赤ちゃんになってもいいよっ♡」

「え…?」

「はいっ♡いっぱい甘えてねっ♡」

エリザベス王女に優しく両手を掴まれたと思ったら、ふにゅ…という柔らかい感触が…?
え…?
ええ…?

私の頭に宇宙が広がり、今起こっている現実が信じられず、思わず手を動かして、そこにあるものを確かめる。

軽く押してふにゅふにゅ、下から持ち上げてむにゅむにゅ、指をくい込ませてもにゅもにゅ…とそこにある何かの全てを確かめるように。
ドレスの上からでも、とても柔らかくて…真ん中に小さいコリコリした何かがある…。

今、私はっ…エリザベス王女の尊すぎるロイヤルおっぱいを触っているのか…?
そんな、そんなはずっ…そんな事あるわけっ…!

「んっ…♡もう…♡そんなに頑張っても、お乳出ないよっ♡ホントに赤ちゃんみたい♡ビーチェ可愛いっ♡」

「ーーー!!!!」

…しばらく思考が停止して、動けなくなった。
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