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70.クリスマスのディナー
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部屋で浴衣に着替えたあと、本館で待っている椿達と合流して、みんなで本館の設備を見て回った。
本館の方は離れと違い建物自体は新しくはないが、隅々まで掃除が行き届いており、内装は和風で重厚感のある老舗旅館という雰囲気だ。ヨーロッパでは石やレンガの建物ばかりだったので、こういう和な趣のある旅館は懐かしく感じる。ヨーロッパには和風なホテルが無いから、ベルヒテスガーデンにも少しアレンジしてこういう和風な高級ホテルを建てたら、富裕層に流行るかもしれないな。
元の時代ではベルクホーフは解体されて、何も残っていないらしいが、この世界では恐らくまだ残っているから解体せずに、ホテルにリフォームするのも良いかもしれない。SSの連中をなんとかしたら楓に相談してみよう。
皆で夜になるまで近くの観光地を見て回ったが、やはり元の世界の伊豆よりは観光スポットやお土産屋も少ないので、すぐに飽きてしまった。
夕飯は広間で宴会か部屋食か選べたので、楓の希望で今日はそれぞれ部屋で食事をすることになった。部屋に戻ってから夕飯の時間まで楓は女将と仕事の打ち合わせがあるとのことなので、本館の風呂に行ってみることにした。
5種類の風呂は1つ1つが大きいので、浴場全体は結構な広さがあるのだが、今日は貸し切りになっているので俺の他には風呂に入っている客はいなかった。大きな風呂に一人で入ることに子供の頃は憧れていたが、実際に入ってみると広すぎて全く落ち着かない。
とりあえず持参した石鹸で頭と体を洗ってから、5種類の風呂を制覇し、湯加減が1番好みだった岩風呂にゆっくり浸かることにした。こんなにゆっくり風呂に浸かるのは久し振りだな。ポーランドとドイツは戦闘地域だったので、敵襲がある可能性があるなかで、ゆっくり風呂に入ることもできなかった。楓のお願いで無理矢理に休暇を取ったけど、もしかしたら楓が俺を休ませるのが目的で休暇を取らせたのかもしれない。
思えば温泉に浸かるのも5年振りになるだろか。元の世界で高校生活最後の想い出にクラスメイトの男5人で卒業式の前に2泊3日で卒業旅行に行ったとき以来だ。高3にもなって汗だくになって枕投げで騒いで、男だけの恋話で盛り上がって、ハイテンションのまま夜中の2時位に露天風呂に入ったら、今みたいに他の客がいなくて、風呂に飛び込んだり、泳いだりして、最後は5人で何故か高校の校歌を大合唱したのを思い出した。あのときは本当に楽しかったな、あいつら元気でやってるかな。
大学で皆ばらばらになってから一度も会ってなかったから、最後もう一度会いたかったな。今まで忙しくてあまり考えることがなかったけど、日本に帰ってきてからは元の世界のことばっかり考えている。
楓や悠斗達がいるからなんとかやっているけど、俺一人でこっちに飛ばされていたら心が折れていたかもしれないな。みんなには感謝しかない。
風呂を上がって部屋に戻ると、部屋の前で楓が待っていた。
「遅い!後で二人でお風呂入ろうと思ったのに、何で先に入っちゃうのかな?」
「ごめん、部屋のお風呂にも後で入ろうと思っていたんだよ」
「それは当然!けど、1回分損しちゃったことには変わりないの!」
「なるほど、確かに楓の言うとおりだね。覆水盆に返らずってやつだね。じゃあ、お詫びにドイツで買ってきたウォールナッツオイルで、オイルマッサージをするから許してもらえないかな?」
「う~ん…、よし、今回はそれで手を打とう!」
「ありがとうございます。社長!」
「もう、料理も運んであるから、入ろう?」
部屋に入ると、さっきまでは無かったクリスマスツリーが飾られていた。
「おお!凄い!楓が用意してくれたの?」
「そうだよ、今日はクリスマス・イブだからね。去年は一人ぼっちのクリスマスだったから、今年は絶対に誠司と過ごしたかったの」
「俺も楓とクリスマス・イブを過ごしたいと思ってたから、リモート会議にしないで一時帰国してきたんだよ。あとで渡そうと思ってたんだけど、ちょっと待っててね」
楓に渡そうと思ってこっそり持ち込んでいた絵を楓に渡した。
「油絵?あれ、この向日葵の絵ってもしかして、ゴッホ?レプリカ?」
「いや、本物。チェコで捕まえたナチスの高官が持ってたから、没収して記念にもらってきた」
「もらってきたって、これいくらの価値があるか分かってる?」
「うん、5000万円くらいかな?」
「元の時代のだったら50億円くらいだったと思うよ、こんな無造作に運んじゃいけないものなんだよ?」
「そんなに高いんだ。はい、これが俺からのクリスマスプレゼントだよ」
「どう管理したら良いか分からないけど、ありがと。ねぇ、これ持って明日には東京に帰ろう?ここに置いておくのはさすがに不安だよ」
「えっ?そんなに重要だったのか。いいよ。じゃあ、今日はあと2回はお風呂入ろうかな」
「本当に凄いものだって分かってるのかな?あとこれ元の持ち主に返さないといけないんじゃ…。まぁ、誠司に言っても仕方ないか…。うん、じゃあ、ご飯食べたら一緒にお風呂入ろうね」
クリスマスディナーということで、夕飯は洋食を予想していたが、夕飯は和室のテーブルに用意されていた。伊勢海老のお造り、刺身の船盛に蝦夷アワビの陶板焼き、金目鯛の煮つけ、ごま豆腐、松茸ごはん、松茸の土瓶蒸し等、見ているだけで涎が落ちそうな料理が並んでいた。
「今日は誠司のために和食にしてもらったんだよ。こっちの方が好きでしょ?」
「うん、めちゃくちゃ美味しそう」
「見た目だけじゃなくて、味にも自信があるんだよ。その金目鯛の煮つけ食べてみて」
楓に言われるままに金目鯛の煮つけに箸をつけると、身が柔らかく箸が簡単に入った。
「俺好みの少し濃い味付けで、柔らかく煮られているが崩れるほどではない丁度良い火の通り具合。ちょうど今の時期から2月頃までの金目鯛は脂が乗っているし、地物だから鮮度も良くて身がぷりぷりしているね。文句なく美味しい。完璧だよ!」
「その料理漫画で料理評論家が食べたときの批評みたいのヨーロッパで覚えたの?戦争しに行ったんじゃないの?でも、そうか・・・。ありがとう。今日の料理の中で、これだけは楓が作ったんだよ。久しぶりに楓の料理が食べたいかなって思って、さっき板場に作りに行ってたんだよ」
「そうだったのか、それなのに俺だけ風呂行ってごめんね。ヨーロッパではずっと楓の料理が恋しかったよ。これ本当にすごく美味しいね。ありがとう」
「どういたしまして。この一年半は楓もビジネスだけじゃなく、料理も頑張ったんだよ。あと誠司を見習って語学も頑張って、今は英語、中国語以外にもロシア語、フランス語はいけちゃいます!」
「おお!それは凄い!俺なんか外国語くらいしか取り柄がないけど、楓はビジネスも料理もできるし、尊敬するよ」
「ありがとう。誠司は今どれくらい話せるの?」
「英語、ロシア語、中国語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語だよ。フランス語は向こうにいるときに、日常会話くらいなら話せるようになったけど、公式の場ではまだ通訳が必要かも」
「やっぱり凄いよ。誠司以外でここまでのマルチリンガルに会ったことないもん。まだ増やすの?」
「いや、フランス語がラストでいいかな。あとは今使える言語で、軍事と政治の専門的な文書も読めるようにしようと思ってる」
「おー、さすがだね。あっ、そろそろ陶板焼も食べれるよ」
どの料理も本当に美味しくて、結構な量があったけど、楓が食べきれなかった分までペロリと食べてしまった。
「あぁ、お腹いっぱいだ。ちょっと休憩してからお風呂入ろうか」
「うん。お風呂の前に、実は楓からも誠司にクリスマスプレゼントがあります!」
「おお!なになに?」
楓がテーブルの下から赤と緑のチェックの包装紙に包まれた長方形の箱を取り出した。実はさっきからチラチラ箱が見えていたのだが、気付かない振りをしていた。
「はい、どうぞ。開けてみて」
包装紙を開けると桐の箱が出てきた。そして、その箱を開けると一升瓶の日本酒が入っていた。ラベルを見ると『大吟醸 誠司』と毛筆で書かれている。
「誠司が前に日本酒が好きって言ってたから、酒蔵を買って誠司の名前を付けた日本酒を作ったんだよ。露天風呂に浮かべて呑もうよ」
日本酒をプレゼントするために、酒蔵まで買ってしまうとか、アラブの王子様みたいなスケールだな。
「すげー!俺の名前のお酒だ!!ありがとう。まさか自分の名前が酒になるとは思わなかったよ。これは、普通に販売するの?」
「一般には卸さないで、プライベートブランドにして、うちのグループの飲食店にだけ卸す予定だよ。ちなみに、ラベルは翔さんに書いてもらったんだよ。だから、総理在任中は販売は控えようと思って」
自社の酒蔵で作って、現役の内閣総理大臣がラベルを書いた日本酒…。金と権力の象徴みたいな酒だ。
「そっか、これが全国の酒屋に並んだら流石に照れるから、ほどほどにしといてください」
誠司という名前なんて日本中にたくさんいるんだから、俺のことだって皆は分からないかもしれないけど、やはり自分の名前が付いた商品が日本中に出回るのは気恥ずかしいものがある。
それからしばらくは楓が酒蔵を買ってからこの清酒が完成するまでのエピソードを聞いて、だいぶお腹も楽になってきた。
「そろそろお風呂入ろうか」
「うん、それじゃあ楓はお酒の準備してくるから、誠司は先に入ってていいよ。えっと、冷やで良いんだよね?」
「えっ、お風呂に浮かべるやつやるの!? それなら、冷でお願いします!」
本館の方は離れと違い建物自体は新しくはないが、隅々まで掃除が行き届いており、内装は和風で重厚感のある老舗旅館という雰囲気だ。ヨーロッパでは石やレンガの建物ばかりだったので、こういう和な趣のある旅館は懐かしく感じる。ヨーロッパには和風なホテルが無いから、ベルヒテスガーデンにも少しアレンジしてこういう和風な高級ホテルを建てたら、富裕層に流行るかもしれないな。
元の時代ではベルクホーフは解体されて、何も残っていないらしいが、この世界では恐らくまだ残っているから解体せずに、ホテルにリフォームするのも良いかもしれない。SSの連中をなんとかしたら楓に相談してみよう。
皆で夜になるまで近くの観光地を見て回ったが、やはり元の世界の伊豆よりは観光スポットやお土産屋も少ないので、すぐに飽きてしまった。
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5種類の風呂は1つ1つが大きいので、浴場全体は結構な広さがあるのだが、今日は貸し切りになっているので俺の他には風呂に入っている客はいなかった。大きな風呂に一人で入ることに子供の頃は憧れていたが、実際に入ってみると広すぎて全く落ち着かない。
とりあえず持参した石鹸で頭と体を洗ってから、5種類の風呂を制覇し、湯加減が1番好みだった岩風呂にゆっくり浸かることにした。こんなにゆっくり風呂に浸かるのは久し振りだな。ポーランドとドイツは戦闘地域だったので、敵襲がある可能性があるなかで、ゆっくり風呂に入ることもできなかった。楓のお願いで無理矢理に休暇を取ったけど、もしかしたら楓が俺を休ませるのが目的で休暇を取らせたのかもしれない。
思えば温泉に浸かるのも5年振りになるだろか。元の世界で高校生活最後の想い出にクラスメイトの男5人で卒業式の前に2泊3日で卒業旅行に行ったとき以来だ。高3にもなって汗だくになって枕投げで騒いで、男だけの恋話で盛り上がって、ハイテンションのまま夜中の2時位に露天風呂に入ったら、今みたいに他の客がいなくて、風呂に飛び込んだり、泳いだりして、最後は5人で何故か高校の校歌を大合唱したのを思い出した。あのときは本当に楽しかったな、あいつら元気でやってるかな。
大学で皆ばらばらになってから一度も会ってなかったから、最後もう一度会いたかったな。今まで忙しくてあまり考えることがなかったけど、日本に帰ってきてからは元の世界のことばっかり考えている。
楓や悠斗達がいるからなんとかやっているけど、俺一人でこっちに飛ばされていたら心が折れていたかもしれないな。みんなには感謝しかない。
風呂を上がって部屋に戻ると、部屋の前で楓が待っていた。
「遅い!後で二人でお風呂入ろうと思ったのに、何で先に入っちゃうのかな?」
「ごめん、部屋のお風呂にも後で入ろうと思っていたんだよ」
「それは当然!けど、1回分損しちゃったことには変わりないの!」
「なるほど、確かに楓の言うとおりだね。覆水盆に返らずってやつだね。じゃあ、お詫びにドイツで買ってきたウォールナッツオイルで、オイルマッサージをするから許してもらえないかな?」
「う~ん…、よし、今回はそれで手を打とう!」
「ありがとうございます。社長!」
「もう、料理も運んであるから、入ろう?」
部屋に入ると、さっきまでは無かったクリスマスツリーが飾られていた。
「おお!凄い!楓が用意してくれたの?」
「そうだよ、今日はクリスマス・イブだからね。去年は一人ぼっちのクリスマスだったから、今年は絶対に誠司と過ごしたかったの」
「俺も楓とクリスマス・イブを過ごしたいと思ってたから、リモート会議にしないで一時帰国してきたんだよ。あとで渡そうと思ってたんだけど、ちょっと待っててね」
楓に渡そうと思ってこっそり持ち込んでいた絵を楓に渡した。
「油絵?あれ、この向日葵の絵ってもしかして、ゴッホ?レプリカ?」
「いや、本物。チェコで捕まえたナチスの高官が持ってたから、没収して記念にもらってきた」
「もらってきたって、これいくらの価値があるか分かってる?」
「うん、5000万円くらいかな?」
「元の時代のだったら50億円くらいだったと思うよ、こんな無造作に運んじゃいけないものなんだよ?」
「そんなに高いんだ。はい、これが俺からのクリスマスプレゼントだよ」
「どう管理したら良いか分からないけど、ありがと。ねぇ、これ持って明日には東京に帰ろう?ここに置いておくのはさすがに不安だよ」
「えっ?そんなに重要だったのか。いいよ。じゃあ、今日はあと2回はお風呂入ろうかな」
「本当に凄いものだって分かってるのかな?あとこれ元の持ち主に返さないといけないんじゃ…。まぁ、誠司に言っても仕方ないか…。うん、じゃあ、ご飯食べたら一緒にお風呂入ろうね」
クリスマスディナーということで、夕飯は洋食を予想していたが、夕飯は和室のテーブルに用意されていた。伊勢海老のお造り、刺身の船盛に蝦夷アワビの陶板焼き、金目鯛の煮つけ、ごま豆腐、松茸ごはん、松茸の土瓶蒸し等、見ているだけで涎が落ちそうな料理が並んでいた。
「今日は誠司のために和食にしてもらったんだよ。こっちの方が好きでしょ?」
「うん、めちゃくちゃ美味しそう」
「見た目だけじゃなくて、味にも自信があるんだよ。その金目鯛の煮つけ食べてみて」
楓に言われるままに金目鯛の煮つけに箸をつけると、身が柔らかく箸が簡単に入った。
「俺好みの少し濃い味付けで、柔らかく煮られているが崩れるほどではない丁度良い火の通り具合。ちょうど今の時期から2月頃までの金目鯛は脂が乗っているし、地物だから鮮度も良くて身がぷりぷりしているね。文句なく美味しい。完璧だよ!」
「その料理漫画で料理評論家が食べたときの批評みたいのヨーロッパで覚えたの?戦争しに行ったんじゃないの?でも、そうか・・・。ありがとう。今日の料理の中で、これだけは楓が作ったんだよ。久しぶりに楓の料理が食べたいかなって思って、さっき板場に作りに行ってたんだよ」
「そうだったのか、それなのに俺だけ風呂行ってごめんね。ヨーロッパではずっと楓の料理が恋しかったよ。これ本当にすごく美味しいね。ありがとう」
「どういたしまして。この一年半は楓もビジネスだけじゃなく、料理も頑張ったんだよ。あと誠司を見習って語学も頑張って、今は英語、中国語以外にもロシア語、フランス語はいけちゃいます!」
「おお!それは凄い!俺なんか外国語くらいしか取り柄がないけど、楓はビジネスも料理もできるし、尊敬するよ」
「ありがとう。誠司は今どれくらい話せるの?」
「英語、ロシア語、中国語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語だよ。フランス語は向こうにいるときに、日常会話くらいなら話せるようになったけど、公式の場ではまだ通訳が必要かも」
「やっぱり凄いよ。誠司以外でここまでのマルチリンガルに会ったことないもん。まだ増やすの?」
「いや、フランス語がラストでいいかな。あとは今使える言語で、軍事と政治の専門的な文書も読めるようにしようと思ってる」
「おー、さすがだね。あっ、そろそろ陶板焼も食べれるよ」
どの料理も本当に美味しくて、結構な量があったけど、楓が食べきれなかった分までペロリと食べてしまった。
「あぁ、お腹いっぱいだ。ちょっと休憩してからお風呂入ろうか」
「うん。お風呂の前に、実は楓からも誠司にクリスマスプレゼントがあります!」
「おお!なになに?」
楓がテーブルの下から赤と緑のチェックの包装紙に包まれた長方形の箱を取り出した。実はさっきからチラチラ箱が見えていたのだが、気付かない振りをしていた。
「はい、どうぞ。開けてみて」
包装紙を開けると桐の箱が出てきた。そして、その箱を開けると一升瓶の日本酒が入っていた。ラベルを見ると『大吟醸 誠司』と毛筆で書かれている。
「誠司が前に日本酒が好きって言ってたから、酒蔵を買って誠司の名前を付けた日本酒を作ったんだよ。露天風呂に浮かべて呑もうよ」
日本酒をプレゼントするために、酒蔵まで買ってしまうとか、アラブの王子様みたいなスケールだな。
「すげー!俺の名前のお酒だ!!ありがとう。まさか自分の名前が酒になるとは思わなかったよ。これは、普通に販売するの?」
「一般には卸さないで、プライベートブランドにして、うちのグループの飲食店にだけ卸す予定だよ。ちなみに、ラベルは翔さんに書いてもらったんだよ。だから、総理在任中は販売は控えようと思って」
自社の酒蔵で作って、現役の内閣総理大臣がラベルを書いた日本酒…。金と権力の象徴みたいな酒だ。
「そっか、これが全国の酒屋に並んだら流石に照れるから、ほどほどにしといてください」
誠司という名前なんて日本中にたくさんいるんだから、俺のことだって皆は分からないかもしれないけど、やはり自分の名前が付いた商品が日本中に出回るのは気恥ずかしいものがある。
それからしばらくは楓が酒蔵を買ってからこの清酒が完成するまでのエピソードを聞いて、だいぶお腹も楽になってきた。
「そろそろお風呂入ろうか」
「うん、それじゃあ楓はお酒の準備してくるから、誠司は先に入ってていいよ。えっと、冷やで良いんだよね?」
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