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13.市ケ谷の激闘
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地下司令室に到着しところで、木村陸将から通信が入った。
「園田閣下!木村陸将から無線です。繋ぎます。」
『敵の火力が強すぎる。負傷者が多くてここはもう持たない。第二次防衛線は放棄して、最終防衛線まで下がる。援軍を急がせてくれ。』
『了解、少ないですが負傷者の回収に護衛中隊隊員を向かわせます』
無線を切って俺の警護を主任務とする護衛中隊の隊員に指示を出す。
「護衛中隊所属隊員集合!第二次防衛線を放棄する!佐藤二曹と紺野二曹以外は護衛任務を解除する。負傷者の回収に向かえ!一人も置き去りにするな!」
「了解!」
地下司令室の警備をしていた護衛中隊所属の隊員13名が一斉に階段を駆け上がっていく。
地下司令室には佐藤二曹と紺野二曹(楓さんを護衛していた2名の女性隊員)を除けば戦闘職種がいなくなったため、非戦闘職種の陸軍省職員にも全員防弾ベストとヘルメット着用、トカレフTT-33を装備させて敵の侵入に備える。
最終防衛線はこの陸軍省庁舎そのものとなっているため、もう後がない。ここは地下3階だというのに榴弾が着弾した衝撃が地響きのように地下司令室まで伝わってくる。
木村三佐が駆け足で戻ってきた。
「閣下、脱出トンネルの準備ができました!」
「わかった。先に機密資料の搬出を頼む」
1941年12月24日22:30 陸軍省庁舎正面出入口
庁舎正面出入口の前には土嚢が積まれた即席の防衛陣地を築いていた。ある程度は海軍の弐式陸攻が数を減らしてくれたが、未だ暗闇のなか建物の影から発射される迫撃砲による攻撃にはなす術がなく、最終防衛ラインも崩壊しつつあった。
「木村閣下!ここはもう持ちません!閣下だけでも地下に退避してください!」
「まだだ、反乱軍にここが落とされたら陸軍の威信は地に落ちる。ここで死ぬつもりはないが、俺もギリギリまで撤退はしない」
木村陸将が指揮をとっている山崎歩兵連隊は2,000人の編成だが、同じ1個連隊でも軍縮前の1個連隊の編成は5,000人だ。山崎歩兵連隊も最新装備に切り替えた精兵揃いであるが、2.5倍の兵数差で旧式とはいえ重火器を装備した関東軍歴戦の精鋭部隊には劣勢を強いられていた。
既に2,000人いた隊員も半数は戦闘不能となっており、庁舎内は負傷兵で溢れかえっていた。
山崎歩兵連隊の抵抗が弱くなり発砲音が一瞬途切れたとき、敵の攻撃が止み、辺りは静寂に包まれた。
そして、静粛を破ったのは旧菊池歩兵連隊からの拡声器の声だった。
『我々は毛唐の手先である園田首相に天誅を下すべく集まった救国の志士である!このまま園田首相に好き勝手やらせれば、皇国は毛唐に乗っ取られてしまう!既に東京市は毛唐で溢れかえり、毛唐の作った会社で臣民が奴隷のように扱われているではないか!同士である君たち大日本帝国軍人には何の恨みもない!既に大勢は決した。このまま戦闘を続けては同士の命が惜しい!今から5分間攻撃を止めるので園田首相及び共謀者である木村大将を引き渡し投降せよ!』
菊池元中佐がメガホンで叫ぶ。
一瞬だけ山崎歩兵連隊の兵士達がざわつき、攻撃を止めたが、誰も投降に応じるものはいなかった。
「除隊させられた逆恨みのくせに、なにが救国の志士だ!これでも喰らえ!逆賊が!」
叫びながら一人の兵士が菊池元中佐に向かって発砲するが、有効射程距離を超えているため命中には至らなかった。しかし、その発砲をきっかけに他の兵士達も攻撃を再開した。
連隊長の山崎二佐が木村陸将に進言する。
「このままではじり貧です。決死隊を編成して敵の迫撃砲を潰します!」
「却下だ」
「しかし!既に多くの仲間が犠牲になっております!このままでぱ全滅です!ここで食い止めましょう!私も含めて既に志願しているものも多数います!お願いしますします!」
「そこまで貴様が思っているなら、わかった。許可する。ただし決死隊の編成は志願者だけだ。強制は認めない」
「はっ!」
すぐに志願者だけの決死隊20名が集まり、これから敵の迫撃砲に対戦車地雷を抱えて突撃をかけようとしていたときだった。
旧菊池連隊の背後からルノー製の黒塗りの歩兵装甲車と、同じく黒塗りのルノーJ1戦車を先頭にして、ヘルメットからフェイスガード、ブーツまですべて真っ黒の戦闘服を着た部隊が現れ、旧菊池歩兵連隊に攻撃を開始した。車両にはすべて菊花紋の金のエンブレムが付いていた。
「あの菊花紋は、近衛師団です!近衛師団が援軍にきました!!」
若い兵士が叫ぶと、庁舎を守備していた兵達から歓声が上がる。
近衛師団は元々は陸軍近衛師団として、陸軍の管轄だったが、現在は陸軍にも海軍にも属さない天皇の直轄の部隊となっているため、悠斗が独自に動かした援軍である。
戦闘の戦車の指揮官が覚醒で叫ぶ。
『陛下の命令により、これより逆賊を討伐する!射撃開始!』
旧菊池歩兵連隊は次々と装甲車に搭載されたソ連製の重機関銃SGMBの一斉掃射と現在の日本の主力戦車ルノーJ1の砲撃による圧倒的な火力の餌食となっていく。
「まだ油断はするな!こちらからも攻勢に出る、一人も逃がすな!」
旧菊池歩兵連隊の隊員は近衛師団到着後も一人も逃げ出すことなくよく戦った。しかし、弾薬もほとんど尽きた頃に練馬から到着した援軍を見て、山崎歩兵連隊に対して玉砕覚悟の銃剣突撃を決行した。既に全員満身創痍で突撃の勢いは弱く、一人も庁舎に辿り着くことなく、文字通りの全滅となった。
旧菊池歩兵連隊の最後を見届けた近衛師団は一人も死傷者を出すことなく皇居に戻っていった。
総理官邸に攻撃を仕掛けた陽動部隊の方も最後は全員銃剣突撃により玉砕を遂げた。
地下司令室内は味方勝利の報に湧き上がっていた。
職員たちは皆が手を取り合って喜んでおり、中には「天皇陛下万歳」と叫んでいるものもいる。
「陛下のおかげでなんとか片付きましたね」
木村三佐が安堵の表情で話しかけてきた。
「あぁ、なんとか間に合ったな。近衛師団が来なければ陸軍として完全に敗北するところだった。それにしても、今日のことで色々と問題点が浮き彫りになったから、明日からはまた忙しくなるぞ。」
「はい!覚悟しております!」
ボロボロになった市ヶ谷駐屯地と総理官邸の修復、死傷した兵士や家族への補償、今回のテロの背後関係の捜査、国会や国民への報告、海外メディアへの対応、考えただけで頭が痛くなる。
また、今回は既に退職した元陸軍軍人の犯行とはいえ陸軍に対する責任の追求は免れないだろう。
『グループチャットが繋がりました。』
システムのアナウンスの声が流れる。
『誠二、無事か?』
『俺は大丈夫だけど、陸軍の死傷者は多数だ。今回は悠斗のおかげで助かったよ。ありがとう。それと、翔も聞いてるか?うちの医療部隊だけじゃ足りないから市内の海軍の医療部隊出せるだけ出してくれないか?』
『了解。早速手配するわ』
『宮内庁病院の医者と看護師もすぐ向かわせるよ』
『二人ともありがとう。これから後始末だから落ち着いたら今回の件について話そう』
『『了解』』
グループチャットを切断したあとは、各部隊に指示を出して明け方まで今回の対応に追われた。楓さんとお母さんを自宅に送る前に木村邸の様子を見に行かせた。残念だが木村邸は全焼したとの報告を受けた。とりあえず、市内にあるお母さんの実家に一時身を寄せるとのことなので護衛を付けて送らせた。
救助部隊が閣僚や軍幹部を救助して次々と陸軍省に戻ってきた。しかし、救助の部隊が間に合わなかった閣僚の自宅は木村邸と同様に放火され、家族と一緒に家から逃げ出てきたところを射殺されていたと報告を受けた。
また、後の調査で分かったことだが、菊池元中佐達は軍の指示どおり一度すべての武装を解除して、武器弾薬等はすべて軍に返却していた。その後、八路軍の幹部に賄賂を渡し、日本陸軍から人民解放軍に渡した武器弾薬の横流し品を密輸して武器を調達していた。
賄賂の資金は、中国から撤退する際に略奪した金品であった。
しかし、2個連隊が武器だけを人民解放軍から調達したところで、今回のような陸軍が一切の情報を掴むことができないような、大規模な作戦を遂行することは現実的ではない。今回の件は、首謀者たちの裏に大模な組織が関与していることは明らかであり、俺はアメリカの関与を疑っていたが、国家安全情報局と国家安全捜査局、憲兵隊、警察等が血眼になって捜査したところ、アメリカが関与した確固たる証拠を見つけることは叶わなかった。そして、今回の騒乱にはナチスドイツの関与が濃厚だという調査報告が各操作機関から上がってきた。元の世界からの友人であるアイザックや藤井先輩が関与しているか、彼らが知らないところで反ユダヤ人の勢力等が勝手に動いたのかは分からないが、ソ連と違ってナチスドイツとは軍事同盟も結んでいるわけでもなく、今後はナチスドイツの動向に今まで以上に注意しなければいけなくなった。
今の世界情勢を客観的に見れば、ナチスドイツが西ヨーロッパほぼ全土と地中海を囲うように北アフリカ、東ヨーロッパの一部を占領し、イギリス本土に手を伸ばそうと準備をしており、アメリカの軍事介入が秒読みになった状況で、日米開戦に持ち込ませることができれば、アメリカが史実どおりに太平洋とヨーロッパで戦うことになる。そうなれば、ナチスドイツにとって有利な状況となるだろう。そこで、日米関係を悪化させるために、ナチスドイツがアメリカが関与しているように疑うよう仕組んだとしても全く不自然ではない。むしろ彼らの視点で考えれば理にかなっているだろう。
「園田閣下!木村陸将から無線です。繋ぎます。」
『敵の火力が強すぎる。負傷者が多くてここはもう持たない。第二次防衛線は放棄して、最終防衛線まで下がる。援軍を急がせてくれ。』
『了解、少ないですが負傷者の回収に護衛中隊隊員を向かわせます』
無線を切って俺の警護を主任務とする護衛中隊の隊員に指示を出す。
「護衛中隊所属隊員集合!第二次防衛線を放棄する!佐藤二曹と紺野二曹以外は護衛任務を解除する。負傷者の回収に向かえ!一人も置き去りにするな!」
「了解!」
地下司令室の警備をしていた護衛中隊所属の隊員13名が一斉に階段を駆け上がっていく。
地下司令室には佐藤二曹と紺野二曹(楓さんを護衛していた2名の女性隊員)を除けば戦闘職種がいなくなったため、非戦闘職種の陸軍省職員にも全員防弾ベストとヘルメット着用、トカレフTT-33を装備させて敵の侵入に備える。
最終防衛線はこの陸軍省庁舎そのものとなっているため、もう後がない。ここは地下3階だというのに榴弾が着弾した衝撃が地響きのように地下司令室まで伝わってくる。
木村三佐が駆け足で戻ってきた。
「閣下、脱出トンネルの準備ができました!」
「わかった。先に機密資料の搬出を頼む」
1941年12月24日22:30 陸軍省庁舎正面出入口
庁舎正面出入口の前には土嚢が積まれた即席の防衛陣地を築いていた。ある程度は海軍の弐式陸攻が数を減らしてくれたが、未だ暗闇のなか建物の影から発射される迫撃砲による攻撃にはなす術がなく、最終防衛ラインも崩壊しつつあった。
「木村閣下!ここはもう持ちません!閣下だけでも地下に退避してください!」
「まだだ、反乱軍にここが落とされたら陸軍の威信は地に落ちる。ここで死ぬつもりはないが、俺もギリギリまで撤退はしない」
木村陸将が指揮をとっている山崎歩兵連隊は2,000人の編成だが、同じ1個連隊でも軍縮前の1個連隊の編成は5,000人だ。山崎歩兵連隊も最新装備に切り替えた精兵揃いであるが、2.5倍の兵数差で旧式とはいえ重火器を装備した関東軍歴戦の精鋭部隊には劣勢を強いられていた。
既に2,000人いた隊員も半数は戦闘不能となっており、庁舎内は負傷兵で溢れかえっていた。
山崎歩兵連隊の抵抗が弱くなり発砲音が一瞬途切れたとき、敵の攻撃が止み、辺りは静寂に包まれた。
そして、静粛を破ったのは旧菊池歩兵連隊からの拡声器の声だった。
『我々は毛唐の手先である園田首相に天誅を下すべく集まった救国の志士である!このまま園田首相に好き勝手やらせれば、皇国は毛唐に乗っ取られてしまう!既に東京市は毛唐で溢れかえり、毛唐の作った会社で臣民が奴隷のように扱われているではないか!同士である君たち大日本帝国軍人には何の恨みもない!既に大勢は決した。このまま戦闘を続けては同士の命が惜しい!今から5分間攻撃を止めるので園田首相及び共謀者である木村大将を引き渡し投降せよ!』
菊池元中佐がメガホンで叫ぶ。
一瞬だけ山崎歩兵連隊の兵士達がざわつき、攻撃を止めたが、誰も投降に応じるものはいなかった。
「除隊させられた逆恨みのくせに、なにが救国の志士だ!これでも喰らえ!逆賊が!」
叫びながら一人の兵士が菊池元中佐に向かって発砲するが、有効射程距離を超えているため命中には至らなかった。しかし、その発砲をきっかけに他の兵士達も攻撃を再開した。
連隊長の山崎二佐が木村陸将に進言する。
「このままではじり貧です。決死隊を編成して敵の迫撃砲を潰します!」
「却下だ」
「しかし!既に多くの仲間が犠牲になっております!このままでぱ全滅です!ここで食い止めましょう!私も含めて既に志願しているものも多数います!お願いしますします!」
「そこまで貴様が思っているなら、わかった。許可する。ただし決死隊の編成は志願者だけだ。強制は認めない」
「はっ!」
すぐに志願者だけの決死隊20名が集まり、これから敵の迫撃砲に対戦車地雷を抱えて突撃をかけようとしていたときだった。
旧菊池連隊の背後からルノー製の黒塗りの歩兵装甲車と、同じく黒塗りのルノーJ1戦車を先頭にして、ヘルメットからフェイスガード、ブーツまですべて真っ黒の戦闘服を着た部隊が現れ、旧菊池歩兵連隊に攻撃を開始した。車両にはすべて菊花紋の金のエンブレムが付いていた。
「あの菊花紋は、近衛師団です!近衛師団が援軍にきました!!」
若い兵士が叫ぶと、庁舎を守備していた兵達から歓声が上がる。
近衛師団は元々は陸軍近衛師団として、陸軍の管轄だったが、現在は陸軍にも海軍にも属さない天皇の直轄の部隊となっているため、悠斗が独自に動かした援軍である。
戦闘の戦車の指揮官が覚醒で叫ぶ。
『陛下の命令により、これより逆賊を討伐する!射撃開始!』
旧菊池歩兵連隊は次々と装甲車に搭載されたソ連製の重機関銃SGMBの一斉掃射と現在の日本の主力戦車ルノーJ1の砲撃による圧倒的な火力の餌食となっていく。
「まだ油断はするな!こちらからも攻勢に出る、一人も逃がすな!」
旧菊池歩兵連隊の隊員は近衛師団到着後も一人も逃げ出すことなくよく戦った。しかし、弾薬もほとんど尽きた頃に練馬から到着した援軍を見て、山崎歩兵連隊に対して玉砕覚悟の銃剣突撃を決行した。既に全員満身創痍で突撃の勢いは弱く、一人も庁舎に辿り着くことなく、文字通りの全滅となった。
旧菊池歩兵連隊の最後を見届けた近衛師団は一人も死傷者を出すことなく皇居に戻っていった。
総理官邸に攻撃を仕掛けた陽動部隊の方も最後は全員銃剣突撃により玉砕を遂げた。
地下司令室内は味方勝利の報に湧き上がっていた。
職員たちは皆が手を取り合って喜んでおり、中には「天皇陛下万歳」と叫んでいるものもいる。
「陛下のおかげでなんとか片付きましたね」
木村三佐が安堵の表情で話しかけてきた。
「あぁ、なんとか間に合ったな。近衛師団が来なければ陸軍として完全に敗北するところだった。それにしても、今日のことで色々と問題点が浮き彫りになったから、明日からはまた忙しくなるぞ。」
「はい!覚悟しております!」
ボロボロになった市ヶ谷駐屯地と総理官邸の修復、死傷した兵士や家族への補償、今回のテロの背後関係の捜査、国会や国民への報告、海外メディアへの対応、考えただけで頭が痛くなる。
また、今回は既に退職した元陸軍軍人の犯行とはいえ陸軍に対する責任の追求は免れないだろう。
『グループチャットが繋がりました。』
システムのアナウンスの声が流れる。
『誠二、無事か?』
『俺は大丈夫だけど、陸軍の死傷者は多数だ。今回は悠斗のおかげで助かったよ。ありがとう。それと、翔も聞いてるか?うちの医療部隊だけじゃ足りないから市内の海軍の医療部隊出せるだけ出してくれないか?』
『了解。早速手配するわ』
『宮内庁病院の医者と看護師もすぐ向かわせるよ』
『二人ともありがとう。これから後始末だから落ち着いたら今回の件について話そう』
『『了解』』
グループチャットを切断したあとは、各部隊に指示を出して明け方まで今回の対応に追われた。楓さんとお母さんを自宅に送る前に木村邸の様子を見に行かせた。残念だが木村邸は全焼したとの報告を受けた。とりあえず、市内にあるお母さんの実家に一時身を寄せるとのことなので護衛を付けて送らせた。
救助部隊が閣僚や軍幹部を救助して次々と陸軍省に戻ってきた。しかし、救助の部隊が間に合わなかった閣僚の自宅は木村邸と同様に放火され、家族と一緒に家から逃げ出てきたところを射殺されていたと報告を受けた。
また、後の調査で分かったことだが、菊池元中佐達は軍の指示どおり一度すべての武装を解除して、武器弾薬等はすべて軍に返却していた。その後、八路軍の幹部に賄賂を渡し、日本陸軍から人民解放軍に渡した武器弾薬の横流し品を密輸して武器を調達していた。
賄賂の資金は、中国から撤退する際に略奪した金品であった。
しかし、2個連隊が武器だけを人民解放軍から調達したところで、今回のような陸軍が一切の情報を掴むことができないような、大規模な作戦を遂行することは現実的ではない。今回の件は、首謀者たちの裏に大模な組織が関与していることは明らかであり、俺はアメリカの関与を疑っていたが、国家安全情報局と国家安全捜査局、憲兵隊、警察等が血眼になって捜査したところ、アメリカが関与した確固たる証拠を見つけることは叶わなかった。そして、今回の騒乱にはナチスドイツの関与が濃厚だという調査報告が各操作機関から上がってきた。元の世界からの友人であるアイザックや藤井先輩が関与しているか、彼らが知らないところで反ユダヤ人の勢力等が勝手に動いたのかは分からないが、ソ連と違ってナチスドイツとは軍事同盟も結んでいるわけでもなく、今後はナチスドイツの動向に今まで以上に注意しなければいけなくなった。
今の世界情勢を客観的に見れば、ナチスドイツが西ヨーロッパほぼ全土と地中海を囲うように北アフリカ、東ヨーロッパの一部を占領し、イギリス本土に手を伸ばそうと準備をしており、アメリカの軍事介入が秒読みになった状況で、日米開戦に持ち込ませることができれば、アメリカが史実どおりに太平洋とヨーロッパで戦うことになる。そうなれば、ナチスドイツにとって有利な状況となるだろう。そこで、日米関係を悪化させるために、ナチスドイツがアメリカが関与しているように疑うよう仕組んだとしても全く不自然ではない。むしろ彼らの視点で考えれば理にかなっているだろう。
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