地には天を。

ゆきたな

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歯車

ピース1(R18)

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その日、大地は先輩に誘われて部活を見に行ったため、空翔は一人で先に家に帰った。

「部活か、そろそろ俺も考えないとな」

白峰高校に読書部はなくて、部活は何部に入るのか、そもそも部活そのものに入るか否かを空翔は悩んでいた。

「やりたいこと見つかるまでは勉強だけ頑張ろうかな」

そう呟いて机に向かい、空翔は学校に提出しなければならない書類やら何やらを片付けていった。
陽が沈みしばらくしてから、とんとん、と窓の方から音が聞こえて空翔は振り向き窓を開けた。

「よ、空翔」

「大地、今帰り?」

「おう、なんかこうやって窓から顔出して話すの久しぶりじゃね?」

さっきの音は、大地が空翔の部屋の窓をノックする音だった。
それくらい2人の家と部屋はすぐ隣にあって、昔からこうしてここでよく話をしていた。

「だね、中2になる前くらい以来かな?」

「もうそんなになんのかぁ」

「なあ、大地…」

「ん?どした?」

空翔は、今日みな実と瞬が話していたことを思い出して、ついその話題を出してしまった。

「今日さ、よく話すようになった奴が言ってたんだ。大地のこと狙ってる女子が多いって…」

「ああ、高田みな実と久保瞬、だっけ?お前と話してたの」

「え…?」

空翔は自分が誰と話していたのかということを大地が知っていることに驚きを隠せなかった。

「言っただろ?俺はさ、たとえ別の奴とつるんでてもお前のことはちゃんと見てるって」

「大地…」

空翔は胸が苦しくなった。
自分の気持ちをはっきりさせられず、まだ大地に返事を出来ていないくせに大地が誰かにとられるなんて思ったら嫌だったから。

「ずるいよな…俺…」

ぽつりと呟いた空翔を見て、大地は思わず窓から身を乗り出しそうになった。

「なんでだよ!」

「だって俺、まだ大地にちゃんと返事してない。ずっと待たせてるのに、俺の知らないところで色んな奴から密かに想われてる大地が、いつか誰かにとられたらって思うと不安になるんだ。卑怯だよ、俺は…」

うつむいてしまった空翔を見て、大地は眉を下げてはひとつ息を吐いて微笑んだ。

「仕方ねーじゃん。そうしちゃってるの俺なんだし、それに俺、お前からの返事がどっちだろうと、それを聞くまでは誰から告られたって断るつもりでいるからさ」

うつむいていた空翔が顔を上げると、ゆっくり大地の顔を見た。

「え、でも、そんなことしたら告白してきた子がかわいそうじゃん」

「中途半端なまま受け入れようとする方が失礼だしかわいそうだろ?てかお前、そんなに自分のことで悩んでるくせに、他の告白してくる奴のことまで考えてるなんて人良すぎだろ~?」

そう言ってニッと笑いかける大地を見て、空翔は顔を真っ赤にさせていた。

「人良くないし!自分勝手だし!」

わけのわからない言い訳を口にして空翔は強がった。

「はは、でも俺の言ったことは本当だから、空翔が変に不安になる必要なんてねえから、な?」

「うん…」

少しうつむいて頷く空翔に、大地は窓から手を伸ばして空翔の頭をぽんぽんと撫でた。

「え…大地…なに…」

「へへ、寂しくねえように撫でてやってんの!」

「ま、…まって、ダメ、だから…」

大地に撫でられると、変な気持ちになって身体が熱くなってくる。

「お、おい、空翔!?」

どうして…ただ、頭を撫でられただけなのに何か寒気のようなものを感じる。
そして今では、この寒気の正体がわかる。

―――ヒート―――

2年前、中学の教室で起こってしまったヒート…それ以来、薬でコントロールできていたから一度も襲ってくることなんてなかったのに。

「はぁ、はぁ…くす…り、飲まないと…」

空翔は震える体をベッドから下ろして、どうにか薬を探そうとしたけれど、指先から足先までの震えと寒気、霞む視界とぼんやりする頭で儘ならなかった。

「空翔っ、くそ…」

大地は初めは空翔を見ていたけれど、心配と責任感に耐えかねて窓から窓に飛び移り空翔の部屋の中へ飛び込んだ。

「大丈夫か空翔、薬はどこにある?」

とりあえず空翔から薬の在り処を聞き出そうとした大地だったが、空翔は目の前にやっていたα大地に発情してしまい、強く抱きついた。

「うわ、おい!空翔…っ、う!なんだ、これは…」

大地は、自分の部屋にいただけでは気付かなかった大量のフェロモンが空翔の部屋に充満していることに気付き、全身にまとわりついて来るように襲われた。

「こんなの、前の比じゃねえよ…」

薬で抑えてはいたものの、二年前よりもΩとして身体が成長した空翔からは大量のフェロモンが放たれてしまう。

「(ダメだ、ここで流されたら、あの時と変わらねえだろ)」

「あつい…大地、お願い、俺、大地が欲しいよ…ちょうだい」

完全に理性を失ってしまった空翔は、本能のままに力いっぱい大地をベッドへ押し倒した。

「あっ、おい!空翔、待て!ダメだ…」

空翔の普段の力はものともしなかった大地だったが、フェロモンにあてられている状況と理性と言う枷が外れた空翔の力に怯んでしまった。
大地を押し倒した空翔は、そのまま馬乗りになって大地に覆いかぶさっては深く口付けた。

「(く…また、あの時の…)」

熱く溶けてしまいそうな空翔の口づけに、大地も理性の枷が外れてしまいそうになっていた。

「ん、ふ…ぅ、嬉しいな、大地のここ、こんなに大きくなってる」

空翔は大地に跨ったまま、手で大地のズボンをまさぐり、フェロモンにあてられ完全に硬くなってしまっている大地のモノに恍惚とした表情を浮かべていて、大地は完全に空翔がΩの顔になっていると思い知らされた。
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