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第二章 騎士団編
第27話 アヤカの警護は誰がやる?
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「おい、アヤーネ、お前の希望場所、舞踏会会場で出しておいたぞ」
希望場所? 夕飯のハンバーグを切り分けながらリベルトの言葉に首を傾げる。
「リベルト、アヤーネは午後補習でいなかったから説明しないとわからないんじゃないかしら?」
シモンヌの言葉にリベルトがビールを飲みながら苦笑いをする。
「私が説明するよ。明後日のお披露目会で、私達新人騎士が警備を担当する場所の希望を出すように言われたんだよ」
「まあ、その希望が全部通るかはわからないけどね。先輩騎士と一緒に担当になるって言ってたわね」
シャーリーとカミラの言葉になるほどと、頷く。
「担当場所の決定と時間は明日、発表だそうだ。担当時間以外は自由にしていて良いらしいぞ。まあ、各国の要人の警護に割り当てられたらほぼ自由時間はないと思ってくれとデンナー隊長が言ってたな。まあ、俺ら新人には要人の警護なんて回ってこないと思うがな」
うーん……。
先輩騎士と一緒に警備するとなったら、その場にいないと不味いよね?
でもアヤカとしても会場にいないと不味いしな。
自分で自分の警護はどうだろう?
転移と変身術で交互に姿を見せればなんとかなるんじゃない?
アヤカの警護なら護衛のディランさん、ライナスさん、ビンセントさん、ナリスさんと一緒ってことだよね。
「アヤカの警護か……」
「お、おい、なに愛し子様を呼び捨てにしてるんだ。恐れ多いぞ」
「あら、アヤーネは愛し子のアヤカ様の警護が希望ですの?」
シモンヌの言葉に反応したのはすぐ近くをたまたま通りかかったフランクだった。
「はあ?! アヤーネがアヤカ様の警護なんて無理に決まってるだろ? アヤカ様のそばにいられるのは俺のような貴族子息しかありえないんだ。お前みたいな庶民はお呼びじゃないんだよ。俺はデンナー隊長にアヤカ様の身辺警護の希望を出しておいた。残念だったな。アヤーネ」
いやいや、フランクに警護されるなんてありえないから。
見えないシールドを見えると言っちゃうおバカさんだよ?
無理無理。
そもそも、フランクはアヤカのこと嫌いじゃないの?
だって入団テストの申し込みの時、アヤカに『叩きのめす』って暴言吐いてたよね?
「お前! なにアヤカ様を呼び捨てにしてるんだ! あの方はお前が呼び捨てにして良い方ではないんだぞ。俺はな、暴言を吐いた俺に対して慈愛に満ちた微笑みで返してくれたアヤカ様を、この先御守りすると決めたんだ。俺だけに向けられたあの女神の微笑みは今も脳裏に焼き付いている」
げっ、私の心の声が漏れていたようだ。
それにしてもあの時は売られた喧嘩を買ってニヤリと笑っていただけだぞ。
決して慈愛に満ちた微笑みではなかったはず。
いったいどんな目をしてるんだ。
「フランク君に警護されるなんてアヤカ様が可哀想ですね。バカに警護されるなんて私なら全力で拒否しますもん」
「な! アヤーネ! 今日こそ、その生意気な口をふさいでやる!」
「へえ~どうやって?」
「こうやってだ!」
フランクは持っていた夕飯のトレーからハンバーグをフォークに刺すと私の口に向かって突き出した。
パクリ。
もちろん、食べてやりましたよ。
自慢じゃないが私は大食いなのだ。
んーうまうま。
「おい! またお前たちか。今日のもめ事はなにが原因だ。ジェフリー、説明してくれ」
例によってデンナー隊長登場。
そしてジェフリー君、毎回巻き込んでごめんね。
「今日は、愛し子のアヤカ様の警護を巡りもめていました。フランクとアヤーネのどちらが相応しいかと。で、フランクが自分の夕飯のハンバーグをアヤーネに向かって突きつけ、それをアヤーネがパクリと食べたところです。見事な食べっぷりでした」
「ん? 要は、フランクがアヤーネにハンバーグを食べさせたと言うことか? なんだ今日は揉めていた訳ではないのか。あ、フランクはアヤカ様の警護は無理だぞ。お前は今回、デビュタントだろう? デビュタントの新人騎士は仕事は免除だ。ちゃんと説明したはずだぞ」
「えっ! 仕事が免除?」
はい、残念でしたフランク君。
これでお互いに平和だね。
私は口いっぱい頬張ったハンバーグをモグモグと食べながらフランク君に向かって親指を立てた。
「な! お前、俺のハンバーグ、返せ!」
そっちが食べさせたんでしょうが。
「ごちそうさまでした。フランク君、早くお代わりもらいに行かなきゃ、先輩達が来ちゃいますよ」
「あ! くっそぉ」
私の一言でフランクは慌てて厨房へと走って行った。
希望場所? 夕飯のハンバーグを切り分けながらリベルトの言葉に首を傾げる。
「リベルト、アヤーネは午後補習でいなかったから説明しないとわからないんじゃないかしら?」
シモンヌの言葉にリベルトがビールを飲みながら苦笑いをする。
「私が説明するよ。明後日のお披露目会で、私達新人騎士が警備を担当する場所の希望を出すように言われたんだよ」
「まあ、その希望が全部通るかはわからないけどね。先輩騎士と一緒に担当になるって言ってたわね」
シャーリーとカミラの言葉になるほどと、頷く。
「担当場所の決定と時間は明日、発表だそうだ。担当時間以外は自由にしていて良いらしいぞ。まあ、各国の要人の警護に割り当てられたらほぼ自由時間はないと思ってくれとデンナー隊長が言ってたな。まあ、俺ら新人には要人の警護なんて回ってこないと思うがな」
うーん……。
先輩騎士と一緒に警備するとなったら、その場にいないと不味いよね?
でもアヤカとしても会場にいないと不味いしな。
自分で自分の警護はどうだろう?
転移と変身術で交互に姿を見せればなんとかなるんじゃない?
アヤカの警護なら護衛のディランさん、ライナスさん、ビンセントさん、ナリスさんと一緒ってことだよね。
「アヤカの警護か……」
「お、おい、なに愛し子様を呼び捨てにしてるんだ。恐れ多いぞ」
「あら、アヤーネは愛し子のアヤカ様の警護が希望ですの?」
シモンヌの言葉に反応したのはすぐ近くをたまたま通りかかったフランクだった。
「はあ?! アヤーネがアヤカ様の警護なんて無理に決まってるだろ? アヤカ様のそばにいられるのは俺のような貴族子息しかありえないんだ。お前みたいな庶民はお呼びじゃないんだよ。俺はデンナー隊長にアヤカ様の身辺警護の希望を出しておいた。残念だったな。アヤーネ」
いやいや、フランクに警護されるなんてありえないから。
見えないシールドを見えると言っちゃうおバカさんだよ?
無理無理。
そもそも、フランクはアヤカのこと嫌いじゃないの?
だって入団テストの申し込みの時、アヤカに『叩きのめす』って暴言吐いてたよね?
「お前! なにアヤカ様を呼び捨てにしてるんだ! あの方はお前が呼び捨てにして良い方ではないんだぞ。俺はな、暴言を吐いた俺に対して慈愛に満ちた微笑みで返してくれたアヤカ様を、この先御守りすると決めたんだ。俺だけに向けられたあの女神の微笑みは今も脳裏に焼き付いている」
げっ、私の心の声が漏れていたようだ。
それにしてもあの時は売られた喧嘩を買ってニヤリと笑っていただけだぞ。
決して慈愛に満ちた微笑みではなかったはず。
いったいどんな目をしてるんだ。
「フランク君に警護されるなんてアヤカ様が可哀想ですね。バカに警護されるなんて私なら全力で拒否しますもん」
「な! アヤーネ! 今日こそ、その生意気な口をふさいでやる!」
「へえ~どうやって?」
「こうやってだ!」
フランクは持っていた夕飯のトレーからハンバーグをフォークに刺すと私の口に向かって突き出した。
パクリ。
もちろん、食べてやりましたよ。
自慢じゃないが私は大食いなのだ。
んーうまうま。
「おい! またお前たちか。今日のもめ事はなにが原因だ。ジェフリー、説明してくれ」
例によってデンナー隊長登場。
そしてジェフリー君、毎回巻き込んでごめんね。
「今日は、愛し子のアヤカ様の警護を巡りもめていました。フランクとアヤーネのどちらが相応しいかと。で、フランクが自分の夕飯のハンバーグをアヤーネに向かって突きつけ、それをアヤーネがパクリと食べたところです。見事な食べっぷりでした」
「ん? 要は、フランクがアヤーネにハンバーグを食べさせたと言うことか? なんだ今日は揉めていた訳ではないのか。あ、フランクはアヤカ様の警護は無理だぞ。お前は今回、デビュタントだろう? デビュタントの新人騎士は仕事は免除だ。ちゃんと説明したはずだぞ」
「えっ! 仕事が免除?」
はい、残念でしたフランク君。
これでお互いに平和だね。
私は口いっぱい頬張ったハンバーグをモグモグと食べながらフランク君に向かって親指を立てた。
「な! お前、俺のハンバーグ、返せ!」
そっちが食べさせたんでしょうが。
「ごちそうさまでした。フランク君、早くお代わりもらいに行かなきゃ、先輩達が来ちゃいますよ」
「あ! くっそぉ」
私の一言でフランクは慌てて厨房へと走って行った。
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