29 / 32
3章
永久の象徴
しおりを挟む
「仕方がないな、あの足音がどうなったのかこの目で見るしかない。」
足音が途絶えた原因を突き止め確定するには、実際に自分の目で見るしかない。それはつまり脅威を視界に入るギリギリにまで引き付けることになる。ここは今までの三種類の脅威が集う迷宮である。不用意な邂逅は避けたいものだ。さて息は整った、先程の不可思議を突き止めるため進むとしよう。古の石室には、ワープをさせる床があった。夢幻の湖畔には、侵入者を発見し次第脅威をし向かせるシステムがあった。ここにはかつての脅威が集う。もしかしたら、同じような仕掛けである可能性もあるかもしれない。それらも踏まえながら登山道に入っていこう。
細い登山道。相変わらず景色は良い。下を見下ろすと丁度、永久の霊峰の入り口が小さく見える。こんなに高いところまで来たんだな。細道を歩いているとある不思議な出来事が起こった。背後で足音が鳴ったのだ。まだこちらには気づいていない様子。その姿は、暗夜の樹海で集落を形成していた「魔物」だ。その足音は徐々に遠ざかっていく。それならば私は逃げることなく、敢えて立ち止まっている方が良いだろう。足音に気付かれる恐れを消せるのだから。崖と絶壁に挟まれる登山道に突如として背後に脅威が現れたのだ。背後ということは当然今しがた歩いてきた経路ということ。そこに誰もいなかったことは視認済みである。やはりここは古の石室と似たような性質を持つのであろうか。あのワープも亡霊は通ることができていた。私はそれに賭けて亡霊を追い出したのだから。今日はこのあたりでアンナの宿へ戻ることにしよう。情報を一つ得たのだから。
私は翌日、永久の霊峰の探索を再開した。今日は登山道の仕掛けについて見ていこう。前回の探索では登山道について何一つ情報を得ることは出来なかった。そんな中の出来事であった。
「我は眷属。湖の主の手足となり、侵略者を排除する。」
突如として霧の衛兵が私の目前、一寸先に知らせもなく現れた。登山道は傾斜になっている。私の目線の先に、ベルトが見える。弱点である宝石が目の前で輝く。私の手は反射で剣を抜き弱点を斬り捨てた。なんとか予想外の事態を切り抜けることができた。眷属の身体は崩れ去り、霧となって消えていった。一体今何が起こった。急に目の前に眷属が現れた、音も気配もなく突如として。眷属は瞬間移動のような能力は持ち合わせていないはずだ。それに眷属が出現するには霧の主がそのエネルギーを分け与えて生み出す必要がある。突如として現れるような芸当はできないはずだ。となれば、これがこの迷宮の仕掛けであるのだろうか。目の前に脅威を急に出現させることができる仕掛けこそが。この迷宮では常に行動が監視されており、動きに合わせて脅威が送り込まれるようになっているみたいだ。この迷宮について一つ知ることができた。今日はここで引き返したとしても十分及第点と言えるだろう。
私はアンナの宿に戻ってきた。自室に戻り地図を机の上に広げ、そして私はあることに気づいた。記憶がない。迷宮を探索したことによって得られた情報の記憶がない。正確には、迷宮の仕掛けに関しての記憶が全く無い。地図にメモされたことを読んでも読んでもこれが何のことなのかさっぱり分からない。いつこの事を書き記したのであろう。しかし迷宮に、さっきまで確かに、探索に行っていた。そして私の身体に傷はない。銀の弾丸に減りはない。であるならば成果も無しに帰ってきているのは可能性として信じがたい。つまり何らかの成果があったのだろうが記憶だけが抜き取られてしまったのだ。
「この霊峰では永久の時が流れる。人間の心にも自動的に記憶が永久に刻まれ続ける。永久から逆らえば永久の象徴たる記憶が犠牲になるのだよ。」
永久の霊峰の山頂でロシュフォールは笑う。
足音が途絶えた原因を突き止め確定するには、実際に自分の目で見るしかない。それはつまり脅威を視界に入るギリギリにまで引き付けることになる。ここは今までの三種類の脅威が集う迷宮である。不用意な邂逅は避けたいものだ。さて息は整った、先程の不可思議を突き止めるため進むとしよう。古の石室には、ワープをさせる床があった。夢幻の湖畔には、侵入者を発見し次第脅威をし向かせるシステムがあった。ここにはかつての脅威が集う。もしかしたら、同じような仕掛けである可能性もあるかもしれない。それらも踏まえながら登山道に入っていこう。
細い登山道。相変わらず景色は良い。下を見下ろすと丁度、永久の霊峰の入り口が小さく見える。こんなに高いところまで来たんだな。細道を歩いているとある不思議な出来事が起こった。背後で足音が鳴ったのだ。まだこちらには気づいていない様子。その姿は、暗夜の樹海で集落を形成していた「魔物」だ。その足音は徐々に遠ざかっていく。それならば私は逃げることなく、敢えて立ち止まっている方が良いだろう。足音に気付かれる恐れを消せるのだから。崖と絶壁に挟まれる登山道に突如として背後に脅威が現れたのだ。背後ということは当然今しがた歩いてきた経路ということ。そこに誰もいなかったことは視認済みである。やはりここは古の石室と似たような性質を持つのであろうか。あのワープも亡霊は通ることができていた。私はそれに賭けて亡霊を追い出したのだから。今日はこのあたりでアンナの宿へ戻ることにしよう。情報を一つ得たのだから。
私は翌日、永久の霊峰の探索を再開した。今日は登山道の仕掛けについて見ていこう。前回の探索では登山道について何一つ情報を得ることは出来なかった。そんな中の出来事であった。
「我は眷属。湖の主の手足となり、侵略者を排除する。」
突如として霧の衛兵が私の目前、一寸先に知らせもなく現れた。登山道は傾斜になっている。私の目線の先に、ベルトが見える。弱点である宝石が目の前で輝く。私の手は反射で剣を抜き弱点を斬り捨てた。なんとか予想外の事態を切り抜けることができた。眷属の身体は崩れ去り、霧となって消えていった。一体今何が起こった。急に目の前に眷属が現れた、音も気配もなく突如として。眷属は瞬間移動のような能力は持ち合わせていないはずだ。それに眷属が出現するには霧の主がそのエネルギーを分け与えて生み出す必要がある。突如として現れるような芸当はできないはずだ。となれば、これがこの迷宮の仕掛けであるのだろうか。目の前に脅威を急に出現させることができる仕掛けこそが。この迷宮では常に行動が監視されており、動きに合わせて脅威が送り込まれるようになっているみたいだ。この迷宮について一つ知ることができた。今日はここで引き返したとしても十分及第点と言えるだろう。
私はアンナの宿に戻ってきた。自室に戻り地図を机の上に広げ、そして私はあることに気づいた。記憶がない。迷宮を探索したことによって得られた情報の記憶がない。正確には、迷宮の仕掛けに関しての記憶が全く無い。地図にメモされたことを読んでも読んでもこれが何のことなのかさっぱり分からない。いつこの事を書き記したのであろう。しかし迷宮に、さっきまで確かに、探索に行っていた。そして私の身体に傷はない。銀の弾丸に減りはない。であるならば成果も無しに帰ってきているのは可能性として信じがたい。つまり何らかの成果があったのだろうが記憶だけが抜き取られてしまったのだ。
「この霊峰では永久の時が流れる。人間の心にも自動的に記憶が永久に刻まれ続ける。永久から逆らえば永久の象徴たる記憶が犠牲になるのだよ。」
永久の霊峰の山頂でロシュフォールは笑う。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる