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2章
深紅の剣士
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赤い剣に深紅のコートを身に纏う剣士の姿がそこにあった。脳裏に浮かぶのは死闘。彼のことを忘れるわけがない。初心者の迷宮で対峙した「冒険者ルメール」だ。
「よお、久しぶりだな。お前とこんなところでまた会えるとはな。まさか魔女を倒すのがお前とは思わなかったぜ。」
私は思わずコロンのもとに駆け寄った。だが、時は既に遅し。彼女の腕に脈は走っていなかった。意識は既に途切れている。ルメールは薄笑いながらコロンの死体を遠目に眺めている。そして少しずつこちらに歩み寄ってくる。
「何をしているんだ!ここまでする必要はなかった。彼女は罪を償わなければならなかったというのに。ここで打ち勝って止めることができれば平静を取り戻せたんだ!」
ルメールに声は届かない。役割を終えた銃を腰に収める。ルメールは手のひらを広げ、それをコロンに向けた。ルメールの手は黒い輝きを呈する。目を閉じそして静かな声で呪文を唱えた。かすかに「スミェルテ」という言葉が聞こえた。すると、コロンの死体はたちまち黒いリボンに包まれる。全身がそのリボンに包み込まれるや否や、塵となって消滅してしまった。
「この俺を舐めるなよ。大体お前だって銀の弾丸で魔女の脳天を貫こうとしてたじゃないか、よく言うぜ。はあ、お前との戦いで満身創痍になった俺は一時は生死の境目を彷徨った。だが神は俺を見放さなかった。」
次の瞬間私は吹き飛ばされた。衝撃波は私の身体を大木に叩きつけた。全身が痛む、動くことは叶わない。この力はいったい何なんだ、奴は魔道士だったのだろうか。私がその事を知らなかっただけで。
「目覚めたんだよ、勇者の力に。これは魔道みたいな紛い物とは違う。純然たる魔法だ。かつて魔王を打ち払った勇者ロン・スランカ。あいつと同じステージに立っているってわけだ。」
ルメールは私に止めを刺すことはせず、大広間の奥に歩み始めた。迷宮のゴール目掛けて。どうやら私は彼にとって、殺さなくてもどうとでもなる存在であるらしい。
「これで邪魔はいなくなった。最後の迷宮よ、待たせたな。この俺が、ヴァロンの全てを暴いてやる。」
迷宮の最奥には水晶が見える。冒険者ルメールはそれに触れ、どこかに消えてしまった。史上初の暗夜の樹海踏破者が誕生した瞬間である。
この身を引き摺りながら私も辛うじて踏破することに成功した。ついにヴァロンの冒険者は、最後の迷宮に挑戦する。ヴァロン迷宮群に眠る真実が明るみになる日は近い。
「よお、久しぶりだな。お前とこんなところでまた会えるとはな。まさか魔女を倒すのがお前とは思わなかったぜ。」
私は思わずコロンのもとに駆け寄った。だが、時は既に遅し。彼女の腕に脈は走っていなかった。意識は既に途切れている。ルメールは薄笑いながらコロンの死体を遠目に眺めている。そして少しずつこちらに歩み寄ってくる。
「何をしているんだ!ここまでする必要はなかった。彼女は罪を償わなければならなかったというのに。ここで打ち勝って止めることができれば平静を取り戻せたんだ!」
ルメールに声は届かない。役割を終えた銃を腰に収める。ルメールは手のひらを広げ、それをコロンに向けた。ルメールの手は黒い輝きを呈する。目を閉じそして静かな声で呪文を唱えた。かすかに「スミェルテ」という言葉が聞こえた。すると、コロンの死体はたちまち黒いリボンに包まれる。全身がそのリボンに包み込まれるや否や、塵となって消滅してしまった。
「この俺を舐めるなよ。大体お前だって銀の弾丸で魔女の脳天を貫こうとしてたじゃないか、よく言うぜ。はあ、お前との戦いで満身創痍になった俺は一時は生死の境目を彷徨った。だが神は俺を見放さなかった。」
次の瞬間私は吹き飛ばされた。衝撃波は私の身体を大木に叩きつけた。全身が痛む、動くことは叶わない。この力はいったい何なんだ、奴は魔道士だったのだろうか。私がその事を知らなかっただけで。
「目覚めたんだよ、勇者の力に。これは魔道みたいな紛い物とは違う。純然たる魔法だ。かつて魔王を打ち払った勇者ロン・スランカ。あいつと同じステージに立っているってわけだ。」
ルメールは私に止めを刺すことはせず、大広間の奥に歩み始めた。迷宮のゴール目掛けて。どうやら私は彼にとって、殺さなくてもどうとでもなる存在であるらしい。
「これで邪魔はいなくなった。最後の迷宮よ、待たせたな。この俺が、ヴァロンの全てを暴いてやる。」
迷宮の最奥には水晶が見える。冒険者ルメールはそれに触れ、どこかに消えてしまった。史上初の暗夜の樹海踏破者が誕生した瞬間である。
この身を引き摺りながら私も辛うじて踏破することに成功した。ついにヴァロンの冒険者は、最後の迷宮に挑戦する。ヴァロン迷宮群に眠る真実が明るみになる日は近い。
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