国一番の淑女結婚事情〜政略結婚は波乱の始まり〜

玉響

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本編(アルフォンシーナ視点)

301.深まる夫婦仲

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「ベルナルド様、わたくしはベルナルド様のお気持ちが嬉しくて、泣いてしまったのです。辛い訳でも痛い訳でもありませんわ」

 まるで幼子に言い聞かせるようにゆっくりとした口調で事実を伝えると、深い瑠璃色の双眸が揺れ動いた。

「………本当にか?」
「あら、わたくしが嘘をついていると仰るのですか?」

 わざとらしく片眉を上げて見せると、ベルナルドは困ったように僅かに目を伏せる。

「とんでもない。ただあなたは優しいから、私に心配をかけまいとしている可能性もあるから、念の為に確認をしただけだ」

 口を尖らせながら言い訳をするベルナルドだったが、その声音はとても優しく、アルフォンシーナを心から気遣っていることが良く分かった。

「あら、ベルナルド様は優れた洞察力をお持ちなのですから、わたくしが嘘をついていないということくらい、見ればお分かりでしょう?」

 どこか子どものようなベルナルドの様子に、アルフォンシーナはくすくすと軽い笑い声を載せながら彼を揶揄う。
 すると、アルフォンシーナの背後から複数の笑い声が聞こえてきた。

「あらあら。天下のシルヴェストリ侯爵様も、奥様の前では形無しですわねえ」

 ころころと鈴を転がすような笑い声を上げているのは、店主だった。
 その声でアルフォンシーナは我に返る。

「あ………これは………」

 人前だということをすっかり忘れていた。
 急に恥ずかしさが込み上げてきて、アルフォンシーナは取り繕うように笑顔を浮かべた。

「世間の噂では、シルヴェストリ侯爵夫妻は大変な不仲で、離婚も間近だと聞いていましたけれど、お二人の様子を見ていればそれが全くのデタラメだということが良く分かりますね」
「ええ、本当に!美男美女な上に仲睦まじいご夫婦だなんて、眼福です」

 いつの間にか集まってきていた店の従業員たちが口々に褒めそやす。
 それを聞いて、アルフォンシーナは困って俯いてしまった。

 そもそも、真相はどうあれその噂の内容は正しいのだ。
 だが、それをわざわざ説明するのも違う気がする。
 だがこのまま放っておけば、また妙な噂が流れる可能性もあるかもしれない。そう考え始めると、中々反応に困ってしまう。
 葛藤の末、アルフォンシーナはにっこりと愛想笑いを浮かべ、彼女たちの冷やかしを上手に躱したのだった。
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