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336.誓い
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ルドヴィクに案内された部屋は、以前軟禁されていた部屋とは印象の全く違う部屋だった。
「ジネーヴラにあなたの好みを聞いて、一から部屋を作り直した。………気に入らないところがあればすぐに直すから、教えてくれ」
つい先程も聞いたような台詞に、アリーチェは短く溜息をついた。
ルドヴィクがアリーチェの為を思ってしてくれていることだとは分かっているが、いくらなんでも度が過ぎる気がする。
アリーチェは少し考えて、それから些か厳しい表情でルドヴィクに向き合う。
「………ルドヴィク様。お気持ちは大変嬉しいのですが…………いくらなんでも、これはやり過ぎです」
「む…………」
鋭いアリーチェの声に、ルドヴィクは一瞬肩を窄ませ、小さく呻いた。
おそらくルドヴィク自身、両親から愛情を注がれるという経験が一切なかった為に、どうやって愛情表現をしたらよいのかが分からないのだろう。
困ったように俯くルドヴィクに対して、アリーチェは僅かに声を和らげ、続けた。
「どちらか一方の希望だけを叶えるだけの関係性は、きっと互いを疲弊させてしまう気がするのです」
まるで幼子に言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐと、ルドヴィクも真剣に彼女の言葉に耳を傾ける。
「互いに依存する関係も、知らず知らずのうちに互いを傷つけ合う関係も、わたくしは望んでいません。…………出来ることなら…………」
アリーチェはふわりと微笑むと、ルドヴィクに歩み寄る。
「互いの意思を尊重しあい、互いに理解し合える、そんな夫婦になりたいのです」
夫婦。
その言葉を口にしてみると、やはり気恥ずかしさが先に出る。
実を言うとアリーチェは、イザイアへ向かう道中、ずっとルドヴィクとの結婚生活の事を考えていた。
まだ、正直なところ実感は湧かない。
ブロンザルドを出国するあたりからは多くの時間をルドヴィクと共に過ごしていたが、結婚すれば二人の時間は更に増えるだろう。
だからこそ、共に在ることで互いを高め合え、共に過ごす時間が何よりも安らげる、そんな関係になりたいーーー。
アリーチェはそんな気持ちを込めて、ルドヴィクに抱きついた。
「………アリーチェ姫………」
ルドヴィクはと言うと、今にも泣き出しそうに端正な顔を顰めていた。
しかし、彼の隻眼が潤んでいるのがアリーチェからはしっかりと見て取れた。
至近距離で視線がぶつかり、絡み合う。
二人は互いの気持ちを汲み取ったかのように、同時に頷きあった。
いつの間にかアリーチェの背中に回された、ルドヴィクの男らしい大きな掌は温かく、アリーチェはその優しい温もりに身を委ねたのだった。
「ジネーヴラにあなたの好みを聞いて、一から部屋を作り直した。………気に入らないところがあればすぐに直すから、教えてくれ」
つい先程も聞いたような台詞に、アリーチェは短く溜息をついた。
ルドヴィクがアリーチェの為を思ってしてくれていることだとは分かっているが、いくらなんでも度が過ぎる気がする。
アリーチェは少し考えて、それから些か厳しい表情でルドヴィクに向き合う。
「………ルドヴィク様。お気持ちは大変嬉しいのですが…………いくらなんでも、これはやり過ぎです」
「む…………」
鋭いアリーチェの声に、ルドヴィクは一瞬肩を窄ませ、小さく呻いた。
おそらくルドヴィク自身、両親から愛情を注がれるという経験が一切なかった為に、どうやって愛情表現をしたらよいのかが分からないのだろう。
困ったように俯くルドヴィクに対して、アリーチェは僅かに声を和らげ、続けた。
「どちらか一方の希望だけを叶えるだけの関係性は、きっと互いを疲弊させてしまう気がするのです」
まるで幼子に言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を紡ぐと、ルドヴィクも真剣に彼女の言葉に耳を傾ける。
「互いに依存する関係も、知らず知らずのうちに互いを傷つけ合う関係も、わたくしは望んでいません。…………出来ることなら…………」
アリーチェはふわりと微笑むと、ルドヴィクに歩み寄る。
「互いの意思を尊重しあい、互いに理解し合える、そんな夫婦になりたいのです」
夫婦。
その言葉を口にしてみると、やはり気恥ずかしさが先に出る。
実を言うとアリーチェは、イザイアへ向かう道中、ずっとルドヴィクとの結婚生活の事を考えていた。
まだ、正直なところ実感は湧かない。
ブロンザルドを出国するあたりからは多くの時間をルドヴィクと共に過ごしていたが、結婚すれば二人の時間は更に増えるだろう。
だからこそ、共に在ることで互いを高め合え、共に過ごす時間が何よりも安らげる、そんな関係になりたいーーー。
アリーチェはそんな気持ちを込めて、ルドヴィクに抱きついた。
「………アリーチェ姫………」
ルドヴィクはと言うと、今にも泣き出しそうに端正な顔を顰めていた。
しかし、彼の隻眼が潤んでいるのがアリーチェからはしっかりと見て取れた。
至近距離で視線がぶつかり、絡み合う。
二人は互いの気持ちを汲み取ったかのように、同時に頷きあった。
いつの間にかアリーチェの背中に回された、ルドヴィクの男らしい大きな掌は温かく、アリーチェはその優しい温もりに身を委ねたのだった。
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