隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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328.意外な事実

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「私は優秀で冷静なクロード卿とは違いますので、アンジェロ殿下の補佐役が務まるとは到底思えませんが…………まあできる限りの事はしますよ」

婚約式を終えると、ジルベールが盛大な溜息をついて近づいてきた。

「…………はっ。心にも思っていないことを…………」

ジルベールの背後にいるクロードは呆れ顔で呟くが、当のジルベールは聞こえないフリをしていた。

「………ところで、私がカヴァニスに残ることで陛下とアンジェロ殿下には利点がありますが、肝心の私には何も得がないのは不公平ではありませんか?」

全く以て酷い話だ、とでもいうように、ジルベールは首をゆっくりと左右に振りながら両手を挙げ、肩を窄めてみせた。
するとルドヴィクが僅かに眉を顰める。

「お前のそういうところは相変わらず健在だな。国王の補佐役というだけでも大出世だというのに、それ以上に何か対価を強請るか」

ルドヴィクのぼやきに近い呟きが聞こえてきて、アリーチェは思わず笑みを零した。
王族相手でも怯まず、自分の主張を通そうとする少々強引なところや、それでも人を不愉快にさせない不思議な魅力を兼ね備えているところが、ジルベールという男をルドヴィクが高く評価する理由なのだろうと感じたからだ。

「ええ、それが私の取り柄ですから」

悪びれもせずジルベールが頷くと、ルドヴィクは深い溜息をついた。

「…………ならば、望みは何だ?言ってみろ」
「流石は慈悲深いルドヴィク陛下でいらっしゃる」

ジルベールはにやりと笑う。
そして、徐ろに口を開いた。

「この屋敷の所有権を私に頂きたいのです」

予想していなかった要求の内容に、アリーチェはただ目を丸くした。
この屋敷は確かに城には近く、便利な位置にある。
それに、あの戦火を逃れただけあって、王城にも匹敵するほどに頑丈な造りの建物だという利点もある。

しかし、ジルベールがしっかりと仕事を熟し、その功績が認められれば、もっと良い条件の屋敷を、いくらでも用意して貰える筈なのに、何故この屋敷なのだろう。

「………陛下はご存知ないかもしれませんが、私の母方の祖母はカヴァニス出身でね。この屋敷は、その祖母の生家なんですよ」

笑顔を崩さぬまま、ジルベールは意外な事実を口にした。
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