隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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閑話 提案(ルドヴィク視点) ※読まなくても本編には影響ありません

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そのままアンジェロはルドヴィクが書類を広げている机の上に腰を下ろした。
品行方正な王太子として名高かったアンジェロにしては、かなり行儀の悪い行動だったが、それだけルドヴィクに気を許している、とも受け取れる。
だが、ルドヴィクにはそんな事を察する余裕はなかった。

「そんなに身構えられたら話せるものも話せないじゃないか」

溜息とともに肩を落とすと、アンジェロは片手をルドヴィクの肩に置いた。

「貴殿がイザイアへ帰国する際に、アリーチェを連れていけるように取り急ぎ婚約の手続きを進めている、と言ってもその態度は変わらないかい?」
「……………!」

ルドヴィクの深いエメラルド色の眼の中心にある瞳孔が、大きく開いた。
それは、まさに青天の霹靂だった。
ルドヴィクは押し黙ったまま、何度も目を瞬くと、信じられないと言うように、アンジェロを見やる。

「………ふふ、中々いい反応だ」

アンジェロが心底楽しそうに笑う。

「………笑えない、冗談だな」

揶揄われていると感じたルドヴィクが幾分落ち着きを取り戻し、軽くアンジェロを睨む。
しかしアンジェロは軽く嘆息すると、今度は真剣な表情を浮かべた。

「冗談などでは決してないさ。ご存知の通り、私も大変な状況に置かれているものでね。………本音を言えば、結婚までの時間はアリーチェに残って貰った方が私としては助かる。………けれども私も可愛い妹には今まで大変な思いをさせてしまった分まで幸せになって貰いたいし、ここまでカヴァニスの為に尽くしてくれた貴殿にも、何か礼がしたくてね」

そこまで言うと、アンジェロは机を降りて立ち上がり、ルドヴィクに向き直った。

「………だが、一度滅亡した我が国は資源も資金も不足していてね。貴重な人材であるアリーチェをで差し出せるほど豊かではないんだ」

含みのある言い方をしながら、つくづく残念そうに再び肩を落としたアンジェロは、ルドヴィクの顔を覗き込んだ。

「………あなたは、何が言いたいんだ?一体、何を隠している?」
「だから最初に言ったんだよ?『取引』をしないか、とね」

中々手の内を明かそうとしないアンジェロに、ルドヴィクの眉間の皺が一層深くなる。
すると、アンジェロの表情はそれに反発するように、笑顔になった。
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