隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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閑話 ルドヴィクの決意

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剣でも振るえば、この熱は少しは落ち着くだろうか。
一瞬そんな考えがルドヴィクの頭に浮かんだが、こんな邪な気持ちを抱いて剣を握ることは出来ないと、すぐに考え直す。

欲望に流されず、己を律し、常に高潔であれーーー。
ルドヴィクは今までの人生を、その教え通りに生きてきた。
それ故にかなり潔癖な部分があり、アリーチェに出会うまで、異性への関心を抱いたことは全くなかった。

彼女に触れる度に身体の芯から湧いてくるような衝動ーーー。
それが『男性』としての本能的な感情なのだと気が付くまでに、随分と時間が掛かった。
というのも、ルドヴィクは潔癖であるが故に、本来であれば『王太子教育』の中で身につけるべき性に関する知識を拒絶していた。

王太子とは、次代の王であり、世継ぎを設けるということは最も重要な役割の一つだ。
それを理解しながらも、実の父と母、それに父の正妻である王妃との関係性を考えると、どうしても自身が妃を迎えるという気持ちにはなれなかったからだ。
いずれは王家に連なる家系の優秀な男児を養子として迎え、王太子に据えれば問題ないと考えていた頃からしたら、このような感情に振り回されるのは信じられない気がした。

「まさか、こんな事になるとは…………」

ルドヴィクは上着の胸元を開けると、そのまま質素なベッドに倒れ込んだ。

目を閉じて悶々としていると、ふとアリーチェはルドヴィクが自分にどんな感情を抱いているのか、気がついているのだろうか、という疑問が浮かび上がってきた。

「………アリーチェ姫は私のことを、獣だと感じるだろうか…………」

か弱く、乱暴に扱えばすぐに倒れてしまいそうなアリーチェを思い浮かべて、ルドヴィクは俄に恐怖を感じた。

そもそも、アリーチェの心はセヴランの狂気に満ちた執着によって深く傷ついている。
その傷もまだ癒えぬうちに、今度は自分が雄の本能に従ってアリーチェに近づいたら、彼女はルドヴィクの許から再び姿を消してしまうかもしれない。

「………アリーチェ姫…………」

小さな声で愛しい人の名を呼ぶと、ルドヴィクは仰向けのまま、徐ろに掌を天井に向かって伸ばした。
彼女を失ったら、今度こそ自分は生きる意味を失ってしまうだろう。
ならば、彼女を怯えさせないように、己の欲求を押し殺して彼女に接しなければならない。

ーーー全ては、彼女と共にあるために。
まるで誓いを立てるように、ルドヴィクは天井に向かって伸ばした掌を、ぎゅっと握りしめたのだった。


✽✽✽あとがき✽✽✽

という訳で、アリーチェの部屋から立ち去った後のルドヴィクさんのお話でした。
ちなみに、ルドヴィクさんの性知識レベルですが、男女の身体の違い位は分かりますが、どうしたら子供が出来るのか、どうやって子供を作るのかはほぼ知識なしです(笑)
彼自身がそうしたことを嫌っていたのが原因ですが………まさか欲求不満で悩む日がくるとは本人も驚きなんでしょうね。
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