隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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304.真相

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一頻り笑い終えたアリーチェは、目尻から零れた涙を指で拭ってから、深く息を吸い込んで呼吸を整えた。

「………失礼致しました。ルドヴィク様があまりにも可愛らしくてつい…………」

アリーチェはそっと手を伸ばし、ルドヴィクの手に触れた。
剣を握り慣れた分厚い手は、驚くほどひんやりとしていた。

「………ずっと、廊下にいらっしゃったのですか?」

アリーチェが驚いて顔を上げると、ルドヴィクはいくらか平静を取り戻したようで、美しい顔を微かに歪めてみせた。

「………あぁ」

低く唸るような声は、それがさも当然の事だと言わんばかりの響きだった。
先程の反応を見る限り、妙な下心を持ってアリーチェの部屋を訪れた訳ではなさそうだった。ーーーいや、そもそもルドヴィクに限って言えばは全くないと断言できるだろう。

となると、一体なんの目的で部屋の前に立ってたのだろう。

「…………ひょっとして、屋敷の見回りや警護をしてくださっていたのですか…………?」

暫く考え込んだあと、アリーチェはハッとしたように顔を上げた。
生真面目過ぎるほどに真面目なルドヴィクの事だ。それくらいの事は多忙なクロード、自ら動いてしまう癖がついてしまっていたとしても不思議はないからだ。

「…………ああ、そのとおりだ」

ルドヴィクは一呼吸置いてから、観念したように静かに、答えた。
表情自体はあまり変わらないように見えたが、深いエメラルド色の隻眼には『何故分かった?』とでも言いたげな光が宿っていた。

「………騎士時代の癖というか………。慣れない場所に来るとどうしても落ち着かない気持ちになってしまって…………。殊に今宵は気持ちが昂っているせいか、一睡も出来なそうだったから………」

ぽつりぽつりと語られるルドヴィクの行動の真意に、アリーチェは何だか拍子抜けした気がした。

「……………別に、本当に深い意味合いはなくてだな…………っ。ただ、この部屋の前に差し掛かった時、あなたはもう眠っているのだろうか、眠っているのだとしたらどんな夢を見ているのだろうかと考えていたら、扉の隙間から明かりが漏れていて、つい…………」

照れ隠しなのか、ルドヴィクは長い指先で自らの頬を、ポリポリと掻いた。
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