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301.家族

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それからアリーチェ達は昨晩身体を休めた屋敷へと、アンジェロを伴って戻った。

「本当に、体調は何ともありませんの?」
「ああ、心配するような事は全くないよ」

今日何度目か分からないやり取りを繰り返しをしながら、アンジェロが青白い笑顔を浮かべる。

魔石のお陰で元通りの生活ができるまでに回復したのは確かだっただが、ひょっとしたら何か見えない部分の傷が身体に悪影響を及ぼしたら………と思うと、アリーチェは心配でならなかった。

「兄様の身に何かあれば、わたくしは今度こそ天涯孤独になってしまいますもの。心配するのは当然の事でしょう?」 

アリーチェが憂いを帯びた眼差しを向けると、アンジェロは驚いたようにアリーチェに向かって目を見開いて見せた。

「おいおい、何を言い出すかと思えば………」

それから意味ありげな視線をルドヴィクの方へと向けて、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

「確かに血の繋がった家族は私だけだけれど、お前には将来を誓いあった何よりも大切な相手がいるじゃないか。家族が増えるのだってそう遠い話ではないだろうね。………つまり、私の心配などしている余裕があるのは今のうちだけということになってしまうかな」
「に、兄様……………っ」

思いもよらない反撃に、アリーチェはまるで酸欠の金魚にでもなったかのように口をパクパクとさせながら真っ赤になる。

「アンジェロ、殿………っ」

アリーチェより一瞬遅れて、ルドヴィクが顔を真っ赤にする。
そういう揶揄いに免疫のないルドヴィクは、恥ずかしそうに口元を大きな手で覆い隠しながら、視線を逸らした。

そんな二人の様子を見て、柔らかな笑顔を浮かべると、アンジェロは小さな溜息をついた。

「ティルゲルの処刑が済んだら、すぐに国の体制を整え、カヴァニス再興の為に動くつもりだ。………それが落ち着いたら、二人の結婚式を盛大に執り行おうじゃないか」

片目を瞑って見せるアンジェロに、アリーチェは何か言い返そうにも頭の中が真っ白になってしまい、閉口することしか出来なかった。
一方のルドヴィクは、先程の体勢のまま、硬直していた。

そんな三人の様子を、一足先に屋敷に来ていたらしいクロードとジルベールが生温かく見守っていた。
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