隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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274.愛国心

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少しずつ少しずつ、観衆である民の間から上がる声が大きくなっていく。

「…………では、ブロンザルド国王と通じていた宰相も、同罪だということじゃないか?」
「我々は、背徳者を慕っていたのか………?」

人びとは顔を見合わせながら、口々に騒ぎ始めた。
すると半ば茫然としていたティルゲルがはっと我に返ったかのように、目を見開いた。

「違う…………!私は神の意志に反することは何もしていない!ただ、この国の繁栄を願って………!」

まるで人格が入れ替わったかのように必死な表情を浮かべ、訴え掛けるティルゲルだったが、観衆達は皆冷ややかな視線を送りながら様子を伺っていた。
ティルゲルの懸命の訴えをきっかけに、つい先程とは打って変わって、奇妙な沈黙が空間を制した。
時折人々の間を通り抜けていく風以外は、その場所だけ時間が止まってしまったかのようだった。

「………この国を心底愛しているのなら、王都を焼き払うことに同意はしないだろう?」

どの位時間が過ぎただろうか。
沈黙を破ったのは、ガイオだった。

「そんなこと、少し考えればそれを聞いてきた子供だって分かることだ。出任せがそれだけ出てくるのもある意味才能かもしれないが、嘘をつくならもう少しまともな嘘をつくんだな」

乾いた笑いを織り交ぜながら、ガイオは呟く。
するとそれを聞いていたティルゲルの顔色が蒼白からどす黒く変わっていくように見えた。

「私は………本当に………」

今度は両目にうっすらと涙を浮かべて見せる様はさすが、といったところであろうか。
その厚かましさには閉口せざるをえなかった。
しかし民の視線はますます冷たくなった。
それは彼に対する不信感が高まっているということを暗に示していた。

「本当に国を愛しているのであれば、国の宝であり、国そのものでもある『国民』を傷つけようとはしないはずだ」

まるでティルゲルに追い打ちを仕掛けるかのように、はっきりとそう告げたのはルドヴィクだった。

「…………!………それ、は…………」

ティルゲルははっとして、ビクリと肩を揺らした。
ガイオとルドヴィクーーーティルゲルが『下賤の民』と呼ぶガイオおルドヴィクによって追い詰められるといのは、彼らにとっては一番の屈辱に違いなかった。
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