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269.証拠
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まだ言い逃れでもするのかとアリーチェは身構えたが、ティルゲルからはそれ以上の言葉は出てこなかった。
どんなに喚こうとも、尤もらしく嘘を真実のように訴えてみても、決定的な証拠があるわけではない中で形成逆転を図ることは出来ず、逆に取り繕えば取り繕う程に状況は悪化する一方だと気がついたのだろう。
「………何か言うことはないのか?」
漸く大人しくなったティルゲルに、ルドヴィクは静かに語りかけた。
「貴様如きが…………っ」
低い、恨みの籠った声でティルゲルが呟いたのが聞こえたが、ルドヴィクは全く取り合おうとしなかった。
最早抵抗する術を無くした罪人からの暴言など、無価値だとでもいうように、微動だにしないルドヴィクを見て、アリーチェは彼の隣へと進み出た。
「………誇り高きカヴァニスの民よ。わたくしはあなた達に、この地で起きたあの悲劇の真相をお見せしましょう。そして、真の悪人は誰だったのかを知り、あなた達は誰を罰したいのか、決断をして下さい」
真っ直ぐに正面を向き、堂々とした態度でアリーチェが告げる。
それから徐ろに魔石の首飾りを外すと、そっと自分の目の前へと掲げた。
そして、かつてブロンザルドの王城でルドヴィクがしたのと同じように念じるようにじっと、ルドヴィクの瞳と同じ深いエメラルド色の魔石を見つめた。
すると俄に魔石が淡い光を帯び始める。
そして、その光はぼんやりと広がったかと思うと、ざわざわと蠢きながら絵少しずつ形を成し、何かを描き出し始めた。
「…………!」
何もない空間に、突然豪奢な城の内部の様子が映し出された。
それを目にした人々からどよめきが上がる。
アリーチェは自分の願い通りに魔石が力を発揮してくれた事に安堵しながら、首飾りの華奢なチェーンを握りしめる手に、力を込めた。
徐々に鮮明になる映像は、うっすらと開いた扉を映し出す。
その扉の隙間から、声が聞こえるのがはっきりと分かった。
「たかだか小娘一人に、どれだけ手こずっておいでですか?」
その特徴的な声に、戸惑いながらも映像に見入っていた人々の間から、大きなどよめきが上がった。
その声の主ーーーマルコ・ティルゲルはその途端、恐怖に慄いたように肩を縮こまらせ、両目を大きく見開いた。
どんなに喚こうとも、尤もらしく嘘を真実のように訴えてみても、決定的な証拠があるわけではない中で形成逆転を図ることは出来ず、逆に取り繕えば取り繕う程に状況は悪化する一方だと気がついたのだろう。
「………何か言うことはないのか?」
漸く大人しくなったティルゲルに、ルドヴィクは静かに語りかけた。
「貴様如きが…………っ」
低い、恨みの籠った声でティルゲルが呟いたのが聞こえたが、ルドヴィクは全く取り合おうとしなかった。
最早抵抗する術を無くした罪人からの暴言など、無価値だとでもいうように、微動だにしないルドヴィクを見て、アリーチェは彼の隣へと進み出た。
「………誇り高きカヴァニスの民よ。わたくしはあなた達に、この地で起きたあの悲劇の真相をお見せしましょう。そして、真の悪人は誰だったのかを知り、あなた達は誰を罰したいのか、決断をして下さい」
真っ直ぐに正面を向き、堂々とした態度でアリーチェが告げる。
それから徐ろに魔石の首飾りを外すと、そっと自分の目の前へと掲げた。
そして、かつてブロンザルドの王城でルドヴィクがしたのと同じように念じるようにじっと、ルドヴィクの瞳と同じ深いエメラルド色の魔石を見つめた。
すると俄に魔石が淡い光を帯び始める。
そして、その光はぼんやりと広がったかと思うと、ざわざわと蠢きながら絵少しずつ形を成し、何かを描き出し始めた。
「…………!」
何もない空間に、突然豪奢な城の内部の様子が映し出された。
それを目にした人々からどよめきが上がる。
アリーチェは自分の願い通りに魔石が力を発揮してくれた事に安堵しながら、首飾りの華奢なチェーンを握りしめる手に、力を込めた。
徐々に鮮明になる映像は、うっすらと開いた扉を映し出す。
その扉の隙間から、声が聞こえるのがはっきりと分かった。
「たかだか小娘一人に、どれだけ手こずっておいでですか?」
その特徴的な声に、戸惑いながらも映像に見入っていた人々の間から、大きなどよめきが上がった。
その声の主ーーーマルコ・ティルゲルはその途端、恐怖に慄いたように肩を縮こまらせ、両目を大きく見開いた。
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