隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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267.ガイオの本心

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「……………よくも……………」

やっと聞き取れる程の小さな声で、ティルゲルはたったそれだけ呟いた。

「悔しいだろう?あんたがゴミ以下だと思っていた俺に裏切られるなんてな。………あんたが初めから俺を軽蔑し、心の底では嫌悪していた事は知っていた。親切そうにしながらも、あんたは俺に触れようともしなかったし、一度たりとも私室に呼ぶことはしなかったからな」

冷たい声をぶつけるガイオの表情には、明らかな憎しみが浮かんでいた。

「だがあんたがゴミだと侮蔑する俺にも感情はあるし、一体自分が何をやらされているのかを考える頭だって、悪事を働く事で痛む良心だってある」
「………何が言いたい…………?」

皮肉げな笑みを浮かべるガイオに向かって、ティルゲルは今にも飛びかかりそうな形相をした。
危険を察知したのか、ルドヴィクが数歩前に出て、アリーチェを庇うような形になるが、アリーチェは無闇に動かないように、とルドヴィクをやんわりと牽制した。

「可哀想な孤児を引き取り、贅沢な暮らしをさせてやれば従順な犬が育つとでも思ったんだろう?だが俺にだって自分の意志はある。………恩は今までの『仕事』で充分過ぎるほど返してやっているはずだ。だから俺はこれから、俺のやりたいようにやらせてもらう。………そう。俺はあんたの罪を暴露し、あんたを破滅させるためにここへ来たんだ」

クロードとジルベールがガイオを離すと、ガイオはゆっくりとティルゲルの側まで歩み寄る。
ティルゲルが縛られて跪いている為に、ガイオがティルゲルを見下す形になった。

今までは跪いて頭を垂れる使用人とその姿を見下ろす主という構図だったはずだが、今は立場も体勢も真逆になっていた。
まさか自分が蔑んでいた孤児の手駒の前で跪く事になるとは思いもしなかったのだろう。
ティルゲルの肩は小刻みに震え、微かに歯軋りする音が聞こえてきた。

「………このまま俺に罪をバラされるのと、そっちの姫さんの持ってる魔石の『記録』を流されるの、どっちがいい?」

そんなティルゲルに追い打ちを掛けるように、ガイオが驚愕の事実をさらりと告げる。

「魔石の…………記録…………?」

アリーチェは驚いて、自身の胸元を飾る小さな魔石の首飾りをきゅっと握りしめた。
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