隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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265.嘘

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「黙れ!薄汚い孤児の分際で…………!大体誰のお陰で今まで生きてこれたと思っている?!」

かっと目を見開いたまま、ティルゲルは叫んだ。

「…………」
「言い返す事も出来ぬだろう!本来ならばまともに食事を取ることすらままならない家畜以下の分際が………!身の程を弁えろ!!」

感情を剥き出しにしたティルゲルの咆哮が響き渡る。
するとガイオの口元が再び弧を描いた。

「………ははっ。あんたも自分で認めたじゃないか。最初に俺を知らないと言ったのに自分で俺を引き取り育てたという事実を………」

ガイオが軽蔑の眼差しをティルゲルに向けるのを、アリーチェははっきりと見て取った。
ガイオは自分を気に入ったから真実を話してくれると言ったが、今まで表舞台に出ることなく生きてきた彼が、今になって人前に出てきたこと、そしてこうしてティルゲルの行いについての証人になってくれたことがただの偶然とは思えなかった。

「な………っ?!」

ガイオの指摘に、ティルゲルは眼球が零れ落ちそうなほどに瞠目し、まるで酸欠の魚のようにハクハクと口を動かした。
あまりにも感情的になり過ぎたせいで、嘘を真実のように語っていた事も忘れ、自らガイオの告白が真実であるということを肯定してしまったことにようやく気がついたらしい。

「ち…………、違っ……!これは…………、そう、私は魔石で操られて………!」
「魔石?それは奇妙な話だな。普通に考えて、罪人に攻撃手段を持たせるような真似はしないだろう。そのために検問の際にも厳重過ぎるほど厳重に、身体検査を行ってきた筈だが?」

黙って様子を見守っていたルドヴィクが、形の良い眉をピクリと跳ね上げながら指摘した。

「はい、イザイアの国王陛下が仰るとおり、国境を超える際と街道沿いの街の出入りの際、そして王都に入る際にも体の隅々まで検査を行い、閣下…………、いえ、ティルゲルの体には魔石の反応が認められなかった旨の報告を受けております」

後ろに控えていたカヴァニスの兵士が絶妙なタイミングでルドヴィクの疑問に答えてくれた。

「わ、私ではなく、こいつらが………!」

あくまでしらを切り続けるつもりらしく、ティルゲルは周辺にいたイザイアの騎士たちを睨みつけながら弁明した。
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