隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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250.もう一つの計画

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ルドヴィクの反応から、『王族として』という言葉がひょっとして彼を傷付けてしまったのではないだろうかと、アリーチェは不安に駆られた。
だが優しい、そしてどこか誇らしげにすら見えるルドヴィクの表情を見て、それが自分の思い過ごしだということにすぐに気がついた。

「………あなたのほうが、私よりもずっと、覚悟が出来ているな」

端正な顔が更に緩められるのを見て、アリーチェもつられるように微笑む。
話している内容は恐ろしいものだったはずなのに、彼と向き合うだけでその恐怖と衝撃が随分と和らぐようだった。

「………実は、今向かっているカヴァニスの王都に、私達よりも少し遅れてブロンザルドから、囚人マルコ・ティルゲルの身柄が送られてくる手筈になっている。………全ての罪を民の前で明らかにし、処刑を行うためにな」
「あ…………」

またしても躊躇いがちに手の内を明かしてきたルドヴィクに、アリーチェは僅かに目を見開いた。

ティルゲルの、処刑。
私利私欲の為に祖国を裏切り、多くの人を騙し、死に追いやった重罪人ーーー。
アリーチェはティルゲルの処遇を尋ねられた時、カヴァニスの民の手に委ねたいと願い出た。
ルドヴィクの言葉から、ルドヴィクもパトリスも、アリーチェの意思を尊重し、アリーチェの望み通りにしてくれたのだということが分かった。

「………ありがとう、ございます」

礼を述べるのはおかしいのかもしれないと思いながらも、アリーチェは自然と口を開いていた。
すると、ルドヴィクはまたしても優しい笑顔を浮べる。

「いや、礼を言われるような事ではない。………ただ、あの男の末路については事後報告を受けるよりも、実際にあなたの目で見届けたほうがいいのではないかと思っただけだ」
「あなたのその気遣いが、嬉しいのです」

アリーチェは結わずにそのまま下ろした長いアッシュブロンドの髪を耳に掛けた。

想像するに、ティルゲルの処刑については良くて磔か火あぶりの刑、悪ければ石打ちの形だろう。
それを見るのは辛く、苦しいだろうとも思うが、それを見届けるのもまた、カヴァニス王家最後の生き残りであるアリーチェに課せられた使命なのではないかとアリーチェは感じていたからだった。
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