隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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244.久しぶりの故郷

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ルドヴィクの言ったとおり、それから少しして、ブロンザルドとカヴァニスの国境に辿り着いた。
事前に連絡が来ていたようで、国境を守る衛兵たちはすんなりと馬車を通してくれた。

なだらかな山道を下っていくと、徐々に街道の周りの景色が開けてくるのが分かった。
目に入るその景色の懐かしさに、アリーチェはいつの間にか涙ぐんでいた。

「…………っ」

あの日、アリーチェが大事な人達の命と共に失ってしまった大切な祖国。
その地を再び、生きて訪れる事が出来るだなんて思いもしなかった。

「………泣きたければ、泣くといい。私の前では何も我慢などすることはない。遠慮することなくありのままのあなたを、曝け出してくれ」

潤んだ目で窓の外を眺めるアリーチェに穏やかな笑顔を浮かべたルドヴィクが、そっとアリーチェに語りかけた。
まるでアリーチェの心に、そっと寄り添おうとするかのような優しい声音にアリーチェはふわりと笑顔を浮かべると、滲んだ涙が細まった目尻からぽろりと涙が零れ落ちた。

その様子を見たルドヴィクは、少し狼狽えたような表情を見せたが、すぐに剣だこだらけの節くれ立った指で、そっとアリーチェの頬を伝い落ちた涙をすくい取り、再び笑顔を浮かべる。

「ルドヴィク様…………」

こんなにもひたむきな愛を向けてくれるルドヴィクの名を口にするだけで、アリーチェは体の奥から彼への想いが溢れてくるのを感じる。
彼への想いは留まるところを知らず、互いの気持ちを知り、愛を告げ合った後も大きくなるばかりなようだった。

アリーチェは思わず彼の胸へと縋り付くと、ルドヴィクはアリーチェの身体を抱き留め、それから宥めるようにそっと背中を擦ってくれた。

「久しぶりに故郷を訪れるのだ。………気持ちが昂るのも当然だろう」

低くて優しいルドヴィクの声が、まるで乾いた大地を潤す慈雨のように心に染みていくのを感じながら、アリーチェは静かに頷いた。

久しぶりの故郷ーーー。
ルドヴィクと初めて出逢ったあの炎に包まれた王都は今、どうなっているのだろう。
アリーチェはルドヴィクの温もりに包まれながら、期待と不安を抱きながらカヴァニスの王都に思いを馳せるのだった。
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