隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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236.再会

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「準備が整ったら、一緒にイザイアに戻りましょう」

二人きりの時間を堪能したあと、アリーチェがルドヴィクに向かって微笑んだ。
ルドヴィクは穏やかな表情を浮かべ、素直に頷いたが、そこでふと何かに気が付いたかのように顔を顰めてから動きを止めた。

「………そう言えばもう一つ、あなたに伝えることがあったのを忘れていた」

小さな声でそう呟くと、少し慌てたように立ち上がる。
そして、見惚れてしまうほどに長い脚を最大限駆使し、扉のほうへと歩いていった。

「クロード、そこにいるか?」

扉の前までいくと、少し大きな声でルドヴィクが語りかけた。
すると、がちゃり、と扉が開く音が聞こえてきた。

「ようやく思い出して下さいましたか。お二人で過ごすのに忙しくて、てっきりの事など忘れ去ってしまわれたかと思いましたよ」

これ見よがしに深い溜息をつきながら、クロードが姿を現した。
ルドヴィクに向かってこのような物言いが出来るのは、クロードの他はいないだろう。
アリーチェは柔らかな眼差しで二人のやり取りを見つめていたが、クロードの言葉に疑問を覚え、首を傾げた。

「あの、クロード様………。今『我々』と仰られましたが、他に誰かいるのですか………?」

ルドヴィクは『伝えることがある』と言ったが、一体何なのだろう。
大きな陰謀により生じた混乱はセヴランの死により終わりを迎え、残された問題も解決に動き出しているが、アリーチェにはまだいくつか気がかりがあった。
期待と不安が相俟った、複雑な気持ちが急激に湧き上がってくるのを感じて、アリーチェは胸の前でぎゅっと両手を握りしめた。

「流石は姫君ですね」

アリーチェの問いかけにクロードはいたずらっぽい笑みを浮かべると、扉の外を覗き込むように振り返った。
すると、二つの人影がクロードに続き、部屋の中へと入ってきた。

「………………っ!」

その二人の人物を見て、アリーチェは言葉にならない悲鳴を上げ、無意識に両手で口元を強く抑えた。
ーーーそこに立っていたのは、セヴランに囚われた時から離れ離れになってしまったアリーチェの侍女であるスザンナと、イザイアの城で一度だけ話をしたカヴァニスの騎士でスザンナの婚約者であるアマデオだった。
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