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217.語られる真実(5)

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「それは違う」

懺悔のように絞り出されたアリーチェの言葉を、今度はルドヴィクが否定する。

「あなたにそう思い込ませたのは、私だ。私は敢えてあなたの言葉を否定せず、受入れることであなたの恨みを、私に向けさせた」

深いエメラルド色の瞳が、アリーチェの虹色に輝く瞳を覗き込んできた。

「………やはり、わざとそう仕向けていらっしゃったのですね。でも何故そのような事をなさったのです?」

それは、今回の件でアリーチェが最も疑問に思っていた事だった。
セヴランがルドヴィクを陥れ、それを利用してカヴァニスの領土とアリーチェを手に入れようとしていたことを知りながら、何故アリーチェの怨恨の情をセヴランではなく自分に向けさせたのか。
アリーチェはルドヴィクを責めるようにじっと見つめると、ルドヴィクは静かに目を伏せ、それから小さく溜息をつくとゆっくりと口を開いた。

「………カヴァニス滅亡のあの日よりも二週間程前だっただろうか。私の元に二通の書簡が届いた」

しんと静まり返った部屋の中に、ルドヴィクの低く穏やかな声が響き始める。
なんの脈絡もない話を、突然語り出したルドヴィクに戸惑いながらも、アリーチェはルドヴィクの話に耳を傾けることにした。

「一通はあなたのお父上であるカヴァニス国王、そしてもう一通はブロンザルド王太子………パトリス殿から届いたものだった」
「えっ…………?」

意外な事実に、アリーチェは小さく声を上げる。
ルドヴィクとパトリスの関係は、確かに昨日今日初めて顔を合わせたというには不自然な程の信頼関係が築かれていたような気もする。
しかし、二人の間にどのようなやり取りがあり、どう関わっていたのかは全く想像がつかなかった。

「私も王太子として生きていた期間がそれなりにあったため、何度か顔を合わせたことはあったが、書簡を受け取るのは初めての事で、多少なりとも戸惑ったのは事実だ。………しかもそれが、『ブロンザルド王国王太子』ではなく、『パトリス・ブロンザルド』個人としての書簡であると言われれば尚更にな」

まるでアリーチェの心の中を読み取っているのかと思うほどに、ルドヴィクはアリーチェが知りたいと思っていたことについて的確かつ丁寧に、説明をしてくれた。
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