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205.違和感

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ルドヴィクとセヴランは、文字どおり一進一退の攻防を続けていた。
ーーーいや、正確には違うかもしれない。
斬られても斬られても元通りに再生するセヴランとは異なり、脇腹に傷を負い、そこからじわじわとし染み出る朱い部分を庇いながら戦うルドヴィクには少しずつ疲弊してきていた。

「ルドヴィク様…………」

このままでは、いつまた怪我を負ってもおかしくはない。
それどころか急所を突かれれば、命だって落としかねない。
彼の実力を信じ、彼の無事をひたすら祈り続けることしか出来なかった。

「陛下…………?」

ふと、クロードが怪訝そうな顔をした。

「どうか、したのですか?」

クロードの言葉に、アリーチェの心は不安に染まっていく。

「………いえ、気の所為かもしれませんが………、戦い方がいつもの陛下らしくないような気がして………」

クロード自身違和感はあるのに、それを上手く説明できないといったように、ルドヴィクを目で追う。

「………ルドヴィク様らしくない………?」

そもそもルドヴィクが戦っている姿を見るのが初めてのアリーチェには、クロードの言っていることが理解出来なかった。

「ええ。………陛下は、敵を一撃で仕留めるような戦い方をされます。勿論それが全てな訳ではありませんが………」

クロードの言葉に、アリーチェはまじまじとルドヴィクを見つめた。
流れるような、洗練された太刀筋に、獲物を見据え、静かに燃えるエメラルド色の隻眼。
彼を捕らえようと蠢く鞭のような手足は次々に切り落としていく様は、まるで舞でも舞っているかのようだ。

だが言われてみれば、ルドヴィクは手足を斬ってこそいるものの、セヴランの本体ーーー胸や腹にあたる部分には一切触れていなかった。
まるでそこを意図的に外しているかのようで、確かに不自然さがあった。

「わざと、手足だけを狙って…………?」
「ええ。ですが、何のためにそんなまどろっこしい事をなさるのか………」

本体には、『人間』の急所である心臓や、の力の根源である魔石がある。
敢えて弱点とでも言うべき本体を傷付けず、言わば使い捨てのような手足のみを攻撃することでセヴランの力を少しずつ奪おうとしているのではないだろうか。
何故かアリーチェの中でそんな考えが浮かんできた。
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