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197.化け物
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「ぁ゙ぁ゙ぁ゙…………!」
不気味、という言葉では言い表せないほどの禍々しさと悍ましさを纏ったセヴランーーー、正確に言えばセヴランという名の人間だったモノの呻きが響き渡り、ずるり、とアリーチェ達の方へと這い寄ってきた。
肥大化して、まるで膨らみすぎたパン生地のような体と、それを支えるには不自然なくらいに長く伸びた細い手足は、巨大な蜘蛛のようにすら見える。
首は体に埋もれ、口らしき亀裂からは例の呻き声が漏れていた。
その少し上にぎょろりと飛び出た、薄い灰色をしていたはずの彼の目は、魔石の影響なのか、血の色に染め上げられ、焦点を定めることなく虚ろに周囲を見回しているようだった。
化け物。
その言葉を体現したかのようなセヴランのあまりの恐ろしさに、アリーチェは呆然としながら、救いを求めるようにルドヴィクのマントへと空いた方の手を伸ばし、縋ろうとした。
「アリーチェ王女!」
「早くこちらへ!」
背後から、クロードとパトリスの叫び声が聞こえて、アリーチェははっと我に返る。
そして、伸ばした手を慌てて引っ込め、彼らの方へと駆け寄った。
「陛下の背後にいるよりは、こちらのほうが幾分マシな筈です」
ルドヴィクと同じように、剣を構えながら、クロードが早口でそう告げる。
同時にパトリスとテレーゼが頷いた。
彼らもまた、危険を承知でこの場に残ることを選択したのだろう。
もしかするとアリーチェと同じく、セヴランの末路を見届けようと考えたからかもしれない。
セヴランに対してどのような感情を持っているかは別として、彼らはセヴランの家族に違いないのだから。
そう考えて、アリーチェは無意識に唇を噛むと、今しがたまで共にいたルドヴィクを見つめた。
ルドヴィクはアリーチェの様子を気にしながらも、ゆっくりと間合いを詰めてくるセヴランの動きに注視していた。
だが彼は相手の出方を見極めている、というよりも、じっくりと観察しながら相手の力量を測っている、というようにアリーチェには見えた。
「…………来い、化け物」
セヴランだったものは、凡そ三メートルの位置まで這いずってくると、不意に動きを止めた。
あのような姿になっても、本能的な部分で、それ以上近寄ってはいけないということを察知したのだろう。
ルドヴィクはそれだけ言うと、剣を構えたまま、じっと動かなくなる。
ピリピリといつ音が聞こえてきそうな程に張り詰めた空気が、二人を包み込んだ。
獣のように荒いけれど靭やかなその姿は実に綺麗で、おどろおどろしいとすら感じるのこの場所にそぐわない程に美しいと感じた。
不気味、という言葉では言い表せないほどの禍々しさと悍ましさを纏ったセヴランーーー、正確に言えばセヴランという名の人間だったモノの呻きが響き渡り、ずるり、とアリーチェ達の方へと這い寄ってきた。
肥大化して、まるで膨らみすぎたパン生地のような体と、それを支えるには不自然なくらいに長く伸びた細い手足は、巨大な蜘蛛のようにすら見える。
首は体に埋もれ、口らしき亀裂からは例の呻き声が漏れていた。
その少し上にぎょろりと飛び出た、薄い灰色をしていたはずの彼の目は、魔石の影響なのか、血の色に染め上げられ、焦点を定めることなく虚ろに周囲を見回しているようだった。
化け物。
その言葉を体現したかのようなセヴランのあまりの恐ろしさに、アリーチェは呆然としながら、救いを求めるようにルドヴィクのマントへと空いた方の手を伸ばし、縋ろうとした。
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そして、伸ばした手を慌てて引っ込め、彼らの方へと駆け寄った。
「陛下の背後にいるよりは、こちらのほうが幾分マシな筈です」
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同時にパトリスとテレーゼが頷いた。
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もしかするとアリーチェと同じく、セヴランの末路を見届けようと考えたからかもしれない。
セヴランに対してどのような感情を持っているかは別として、彼らはセヴランの家族に違いないのだから。
そう考えて、アリーチェは無意識に唇を噛むと、今しがたまで共にいたルドヴィクを見つめた。
ルドヴィクはアリーチェの様子を気にしながらも、ゆっくりと間合いを詰めてくるセヴランの動きに注視していた。
だが彼は相手の出方を見極めている、というよりも、じっくりと観察しながら相手の力量を測っている、というようにアリーチェには見えた。
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ルドヴィクはそれだけ言うと、剣を構えたまま、じっと動かなくなる。
ピリピリといつ音が聞こえてきそうな程に張り詰めた空気が、二人を包み込んだ。
獣のように荒いけれど靭やかなその姿は実に綺麗で、おどろおどろしいとすら感じるのこの場所にそぐわない程に美しいと感じた。
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