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180.魔石の首飾り
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「アリーチェ姫」
「は、はいっ」
突然ルドヴィクから名を呼ばれ、驚いたせいでアリーチェの声はうわずってしまった。
そんなアリーチェを落ち着かせるかのように、振り返ったルドヴィクはほんの少しの微笑みを浮かべる。
「その首飾りを、貸してはくれないだろうか?」
「え…………?」
意外な依頼に、アリーチェは無意識に胸元を飾る首飾りを指先で触れる。
それはまだ、イザイアの城にいた頃にルドヴィクが、アリーチェの外見を変える為に贈ってくれた小さなエメラルドの首飾りだった。
華奢で、決して華やかなものではないが、身につけているだけでルドヴィクを感じられるような気がして、イザイアから逃げ出した後、容姿を偽る必要が無くなってからも毎日身に付け続けていたものだった。
始めの頃は魔石の持つ強い魔力によって身に着けるだけで疲れてしまっていたが、ブロンザルドに到着してからは変身魔法を使わなくなったからか、日常的に身に着けていても苦にはならなかった。
しかし、首飾りの中心を飾る深いエメラルド色の小さな魔石は、当初と色合いこそ変わってはいないが、以前に比べて魔力が弱まっているように感じられた。
にも関わらず、何故今になってになってこの魔石の首飾りが必要なのだろうか。
(これは、わたくしにとっては護符のようなものなのに………)
このタイミングで要求してくるのだから、もしかするとセヴランらを追い詰めるための重要な証拠品なのかもしれない。
だが、もしかするとこの首飾りはもう二度と手元に戻ってこないのではという不安に、アリーチェは躊躇いながら何度も瞬きをした。
「大丈夫だ。取り上げる訳では無い」
戸惑うアリーチェに向かって、まるで幼子に言い聞かせるかのように優しく、包み込むようにルドヴィクが囁く。
そして、ゆっくりとルドヴィクはアリーチェの方へと歩み寄ってきた。
と。
「は………っ、敵に背を向けるとは、実に愚かだな!」
突然、そんな声が聞こえた。
セヴランはまともな状態ではないとはいえ、ルドヴィクが見せた「隙」を見逃す筈がなかったのだ。
次の瞬間、信じられないような速さで動いたセヴランは、近くにいた衛兵の剣を奪い取ると、無防備なルドヴィクの背中に向かってその切っ先を思い切り振り下ろしたのが、アリーチェの目に入った。
「は、はいっ」
突然ルドヴィクから名を呼ばれ、驚いたせいでアリーチェの声はうわずってしまった。
そんなアリーチェを落ち着かせるかのように、振り返ったルドヴィクはほんの少しの微笑みを浮かべる。
「その首飾りを、貸してはくれないだろうか?」
「え…………?」
意外な依頼に、アリーチェは無意識に胸元を飾る首飾りを指先で触れる。
それはまだ、イザイアの城にいた頃にルドヴィクが、アリーチェの外見を変える為に贈ってくれた小さなエメラルドの首飾りだった。
華奢で、決して華やかなものではないが、身につけているだけでルドヴィクを感じられるような気がして、イザイアから逃げ出した後、容姿を偽る必要が無くなってからも毎日身に付け続けていたものだった。
始めの頃は魔石の持つ強い魔力によって身に着けるだけで疲れてしまっていたが、ブロンザルドに到着してからは変身魔法を使わなくなったからか、日常的に身に着けていても苦にはならなかった。
しかし、首飾りの中心を飾る深いエメラルド色の小さな魔石は、当初と色合いこそ変わってはいないが、以前に比べて魔力が弱まっているように感じられた。
にも関わらず、何故今になってになってこの魔石の首飾りが必要なのだろうか。
(これは、わたくしにとっては護符のようなものなのに………)
このタイミングで要求してくるのだから、もしかするとセヴランらを追い詰めるための重要な証拠品なのかもしれない。
だが、もしかするとこの首飾りはもう二度と手元に戻ってこないのではという不安に、アリーチェは躊躇いながら何度も瞬きをした。
「大丈夫だ。取り上げる訳では無い」
戸惑うアリーチェに向かって、まるで幼子に言い聞かせるかのように優しく、包み込むようにルドヴィクが囁く。
そして、ゆっくりとルドヴィクはアリーチェの方へと歩み寄ってきた。
と。
「は………っ、敵に背を向けるとは、実に愚かだな!」
突然、そんな声が聞こえた。
セヴランはまともな状態ではないとはいえ、ルドヴィクが見せた「隙」を見逃す筈がなかったのだ。
次の瞬間、信じられないような速さで動いたセヴランは、近くにいた衛兵の剣を奪い取ると、無防備なルドヴィクの背中に向かってその切っ先を思い切り振り下ろしたのが、アリーチェの目に入った。
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