隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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158.親子の再会

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実の息子であるパトリスの登場に、誰よりも狼狽えたのはセヴランだった。
おそらくパトリスが東の塔から逃げ出したこと自体はセヴランの耳に入っているだろうが、探す余裕が無かったのか、それともあれ炊け衰弱していたのだから、遠くには逃げられずに野垂れ死ぬとでも思っていたのだろうか。
どちらにしても、王都ここまでやってくることは想定していないようだった。

「何故………っ」

蒼白になった顔の中で、異様なまでに血走った薄い灰色の瞳だけが、別の生き物であるかのようにぎょろりと動く。
そんなセヴランの隣で、ティルゲルはあからさまに慌てた様子を見せ、セヴランと全く同じ顔立ちをした彼の偽物はどう振る舞うべきなのかといったように、落ち着きなくセヴランと本物のパトリスを交互に見遣る。

「パトリス………」

ただ一人、ブロンザルド王妃だけがクロードと共に現れたパトリスに向かって安堵の表情を浮かべた。
その反応にアリーチェははっとした。
驚くわけでもなく、動揺するわけでもない王妃は、はじめからこの場にいる『パトリス』が自分の息子ではないと気がついていたのではないだろうか。
思い返してみると、婚約発表をする晴れの日であるにも関わらず、王妃はパトリスと殆ど会話をしておらず、関わろうともしていないようだった。
アリーチェはそれが偽パトリスが王妃に正体を見破られないように距離を置いているためだと納得していたが、今の反応を見ると、寧ろそれは逆で、王妃のほうが、息子に成り済ました何者かに対して警戒し、気がついていない風を装いながら距離を取っていたのではないだろうか。

アリーチェがじっと王妃を見つめると、その視線に気がついたらしい王妃は薄っすらと微笑み、静かに頷いた。

「母上、ご心配をお掛けしてしまったようですね。申し訳ございません」

パトリスはふわりと王妃に向かって微笑むと、ゆっくりと玉座に向かって歩き出した。

「お、お前は何者だ!」

偽物のパトリスが、声を上擦らせて叫んだ。

「それはこちらの台詞です」

セヴランによく似た灰色の瞳が鋭く光る。

「どこの誰なのかは知りませんが、魔石の力を使い、私に成り済まして、何をしていたのです?」

ゆっくりとした丁寧な口調で、じわじわと偽物を追い詰めるように問いかけると、偽物は完全に逃げ腰になり、少しずつ後ずさりを始めた。
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