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144.脱獄
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「騎士殿、お待ち下さい………っ」
堅牢な石造りの階段を踏みしめながら下っていくジルベールを、パトリスの声が追いかけてきた。
「おや、王太子殿下。何のご用でしょうか?」
パトリスが何故ジルベールを呼び止めたのか、分かり切っている筈なのに、ジルベールは敢えてそう切り返した。
「あ、あの…………っ」
躊躇いがちな声は、不安と戸惑いに満ちていた。
それに気がついたらしいジルベールは、意地悪そうに目を細める。
「用事があるのであれば、手短にお願い致します。私には、麗しの姫君を無事にここから連れ帰るという重大な任務があるのですから」
やれやれ、とでも言うかのように、ジルベールが大袈裟な位に盛大に、溜息を付いてみせた。
「………あなた方と行動を共にすることで、迷惑にならないのであれば………あなた方が私を必要としてくださるのであれば………」
まるで言い訳のような言葉は、パトリスが今までいかに冷遇されていたのかを窺わせた。
「パトリス王太子殿下を責め立てないで差し上げてください。彼は、優しい方なのです」
ここ数日で聞いたパトリスの過去を思い出しながら、アリーチェは少し俯くと、ジルベールが微かに笑った。
「敵の息子である王太子殿下にも心を痛めるとは………姫君は、本当にお優しいですね。ルドヴィク陛下があれほどまでに心配される意味が分かった気がします」
「え…………?」
ルドヴィクが、自分を心配していたと聞いて、アリーチェは虹色の瞳を揺るがせた。
「パトリス王太子殿下。只今鍵を開けますから、少し下がってください」
ジルベールはアリーチェを大切そうに下ろすと、腰に下げた剣を抜き放ち、今しがた下り始めた階段を上っていく。
そして、先程の衛兵がしっかりと施錠した錠を数回斬りつけるとすぐに鍵が開いた。
「凶悪な重罪人でもあるまいし、両手足に枷まで施すとは………ブロンザルド国王は思いの外小心者らしい」
「はは………お恥ずかしい限りです」
パトリスが力なく笑うと、ジルベールは再び溜息をついてから剣を振り上げた。
ガキンという鈍い音が数回響いたかと思うと、パトリスを伴ったジルベールがゆったりとした足取りで戻ってきた。
「お待たせいたしました、麗しの姫君」
ジルベールはアリーチェに向かって微笑むと、先程と同じようにアリーチェの体を抱え上げた。
堅牢な石造りの階段を踏みしめながら下っていくジルベールを、パトリスの声が追いかけてきた。
「おや、王太子殿下。何のご用でしょうか?」
パトリスが何故ジルベールを呼び止めたのか、分かり切っている筈なのに、ジルベールは敢えてそう切り返した。
「あ、あの…………っ」
躊躇いがちな声は、不安と戸惑いに満ちていた。
それに気がついたらしいジルベールは、意地悪そうに目を細める。
「用事があるのであれば、手短にお願い致します。私には、麗しの姫君を無事にここから連れ帰るという重大な任務があるのですから」
やれやれ、とでも言うかのように、ジルベールが大袈裟な位に盛大に、溜息を付いてみせた。
「………あなた方と行動を共にすることで、迷惑にならないのであれば………あなた方が私を必要としてくださるのであれば………」
まるで言い訳のような言葉は、パトリスが今までいかに冷遇されていたのかを窺わせた。
「パトリス王太子殿下を責め立てないで差し上げてください。彼は、優しい方なのです」
ここ数日で聞いたパトリスの過去を思い出しながら、アリーチェは少し俯くと、ジルベールが微かに笑った。
「敵の息子である王太子殿下にも心を痛めるとは………姫君は、本当にお優しいですね。ルドヴィク陛下があれほどまでに心配される意味が分かった気がします」
「え…………?」
ルドヴィクが、自分を心配していたと聞いて、アリーチェは虹色の瞳を揺るがせた。
「パトリス王太子殿下。只今鍵を開けますから、少し下がってください」
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そして、先程の衛兵がしっかりと施錠した錠を数回斬りつけるとすぐに鍵が開いた。
「凶悪な重罪人でもあるまいし、両手足に枷まで施すとは………ブロンザルド国王は思いの外小心者らしい」
「はは………お恥ずかしい限りです」
パトリスが力なく笑うと、ジルベールは再び溜息をついてから剣を振り上げた。
ガキンという鈍い音が数回響いたかと思うと、パトリスを伴ったジルベールがゆったりとした足取りで戻ってきた。
「お待たせいたしました、麗しの姫君」
ジルベールはアリーチェに向かって微笑むと、先程と同じようにアリーチェの体を抱え上げた。
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