隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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131.パトリスとの対面

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「一体、何を………?」

アリーチェが震える声で微かにそう呟いた、まさにその時だった。

ガシャンと今までにないくらいに大きな金属音が、塔全体に響き渡った。
そのあまりの音の大きさに、アリーチェは驚きと怯えの為に、思わず肩を竦めた。

それと同時に、同じく音に驚いたセヴランの手の力が緩んだ拍子にアリーチェの手が抜け、アリーチェはセヴランから解放された。

「……………っ!」

アリーチェは慌ててセヴランから逃げ出し、彼と距離を取るように反対側の壁に背を付けた。
己を落ち着かせようと胸の前で組んだ手が、微かに震えている。

「出来損ないの分際で、私の邪魔をするとはいい度胸だな、パトリス!」

セヴランが声を荒げる様子を目の当たりにするのも、セヴランがパトリスの名を口にするのを聞くのも初めてのことだった。

穏やかで、少し気の弱そうなブロンザルド国王の仮面は完全に剥がれ、狂気に歪んだ彼の本性が暴き出されるようだった。
そんな父の声に対して抗議するようにパトリスはもう一度大きな音を出した。

それは、鉄格子に手枷か足枷を打ち付けているような、金属同士がぶつかり合う、力強く音だった。
パトリスが何を考えてこのような行動を取っているかは全く理解できなかったが、彼には彼の考えがあるのだろう。
だが、そんなことよりもアリーチェは、パトリスが怪我をしていないかという事の方が心配だった。

「どこまでも生意気な出来損ないが………!!」

何故か怒りを顕にしたセヴランが、衛兵に指示を出すと、命じられた衛兵が素早く動いて隣の部屋へと移動していく。
微かな鎖の音と、衛兵たちの押し殺した声が聞こえてきた。
そして、程なくして衛兵に伴われた一人の年若い男性が、アリーチェの視界に入ってきた。

両手首には手枷、そして両足には足枷を嵌められていて、亜麻色であろう髪は薄汚れ、麻紐の束のように見えた。
これといった特徴のない顔の父親とは異なり、父親譲りの灰色の瞳が印象的な、整った顔立ちの青年だった。

「パトリス、様……………」

アリーチェは無意識のうちに彼の名を呟いていた。
彼こそが、この数日間、二人のほかは誰もいない棟の中で、数えきれない程に言葉を交わした相手ーーーパトリス・ブロンザルドだった。
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