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108.明かされる真実(5)

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「………ティルゲル殿の密告により、カヴァニス王が綺麗事を口にしながら、裏で密かにイザイア王に連絡を取ったことを知った私は、敢えてそれを利用することにしたのです。イザイア王が、あなたに恋い焦がれていることを知っていましたからね。………薄汚い私生児が、実に浅ましい………」

そこでセヴランはこれといった特徴のない、のっぺりとした顔を、醜く歪めた。
セヴランが何故そこまでイザイアを敵視し、ルドヴィクを見下し、蔑んでいるのか、アリーチェには理解できない。
それに、何故ルドヴィクがアリーチェを好いていると断言するのかも分からなかった。

「………どうして、そこまでルドヴィク様を………」

その時初めて、アリーチェはルドヴィクの名を口にしたが、彼女自身もそれに気が付いていなかった。
だがその微かな声は、己の世界に入り込んでしまっているセヴランの耳には届いていないようだった。

「ティルゲル殿から、カヴァニス王がイザイアに援軍を依頼する書簡を送ったことを聞いた私はそれを利用し、我が国の軍をイザイア軍として送り込んだのです。そしてそれが罠であることを知らないカヴァニスは我軍を援軍と勘違いして迎え入れたカヴァニス軍の上官に斬りかかると………私の思惑どおり、イザイアが裏切ったとカヴァニスのの兵たちは思い込み、イザイア軍に扮した我軍に攻撃を仕掛け、そして本物のイザイア軍が到着した頃合いを見計らい、我軍が撤退する頃にはあなたが目にした状況になった、という訳ですよ」

今度は心底愉しそうに、セヴランは笑い声を上げた。
しかしそれを聞いたアリーチェは、目の前が真っ暗になっていくのを感じた。

「どうして………そんな…………」

セヴランの話が真実だとすると、イザイアがカヴァニスを滅ぼしたというのは結果論であって、ブロンザルドの策略により、本来手を取り合うはずだった両国が戦い、カヴァニスは滅んだということになる。
俄かには信じられない話に、アリーチェは小さく首を振った。
しかし、考えてみれば辻褄は合う。
真っ先にイザイア侵攻の知らせを持ってきたのも、両親の代理としてイザイアへの交渉を行ったのも、ほかでもないティルゲルだった。

その事実に気が付いたアリーチェは、やり場のない怒りと悲しみを押し殺すように、唇を噛み締めたのだった。
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