隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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66.新たな情報

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「そう見えますか?」

ジルベールは肩を竦めて見せた。

「ここのところ、あまり休みが取れないんですよ。急な配置換えが何回かあって、何人かの騎士がいなくなってしまったせいで仕事が増えたんですよ。疲れが溜まるとケガに繋がりかねませんので、少し休憩しようかと思っていたところなんです」

深い溜息をつくと、ジルベールは大きく伸びをする。
なんとはない会話に、アリーチェがぴくりと反応したことに、その場にいた誰も気が付かなかった。
アリーチェはふんわりとした笑顔を浮かべると、ジネーヴラを振り返る。

「もしよろしければ、お茶でもご一緒しませんか?………ねえ、ジネーヴラ。あちらの四阿ガゼポにお茶を用意してくれないかしら?」
「かしこまりました、アリス様」

ジネーヴラは深くお辞儀をすると、そそくさとその場を後にする。
代わりの人間を呼ばなくても、ジルベールがいれば大丈夫だと判断したのだろう。
アリーチェはうっすらと口元に笑みを浮かべると、庭園の中ほどにある四阿ガゼポのほうへと歩き出しながら、ジルベールに話しかける。

「その、いなくなってしまった騎士の方々は、何か粗相でもしたのですか?」
「いえ。皆優秀でしたよ。だからこそ負担が増えてしまったとも言えますね」

はは、と乾いた笑いを零したジルベールに向かって、アリーチェは恐る恐る口を開いた。

「その中に、アマデオという名前の騎士は、含まれているかしら?」
「アマデオ?………ああ!」

アリーチェの問い掛けに、ジルベールは暫く考えてから、ぱしんと手を打った。

「あいつ、何でも急に故郷に帰らなければならないといって、いきなり騎士団をやめてしまったんですよ」
「えっ………」

思ってもみなかった答えに、アリーチェは狼狽えた。

「せっかく優秀な後輩が入ってきたと思ったんですが………。確かに陛下は厳しい方だから、中途半端な覚悟で務められるような騎士団じゃないことは確かですけど、それにしてもあまりにも突然で、しかも別れも言わないだなど、騎士の礼に欠けると思いませんか?」

聞いてもいないことまでぺらぺらと喋るジルベールのお陰で、アリーチェの疑念が確信に変わっていく。
おそらく、アマデオは間者であることが露見し、捕まったのだろう。

「でも、何故アリス嬢がアマデオのことを?アリス嬢が城にやってきたのは、あいつが辞めてからのはずでは………?」
「か、彼とは同郷で、面識があったのです。もしかしたらお会いできるかと思ったのですが、行き違いになってしまったのですね」
「………ふうん」

さあっと血の気が引いていくのを感じながら、アリーチェは何とかそう返事をしたのだった。
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