隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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47.騎士アマデオ

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「その通りです。他にも数人、仲間が騎士団に潜り込んでいますが、イザイア王がそれに勘づいたらしく………我々もここに長く留まる訳にはいかなそうです」

悩ましげに眉間に皺を寄せたアマデオは、しきりに扉の外の様子を気にしながら話を続けた。

「………姫様、ジネーヴラ殿が戻るまであまり時間がありません。明日の夜は私が姫様の部屋の警護な当たります。………逃げ出すご準備を、お願い致します」

声を潜めたアマデオが、真剣な眼差しを向ける。

「………逃げ出す?この城を?」

アリーチェが思わず声を上げると、アマデオは焦ったようにアリーチェの口を押さえてきた。

「お静かに」

アマデオは悲しそうな表情を浮かべた。

「イザイア王に捕らえられ、このように監禁されて、お辛かったでしょう。もっと早く………このような場所に連れ去られる前にお救い出来ず申し訳ございませんでした」

アリーチェは彼の言葉に、返事も相槌を打つことすらも出来ずに口籠った。
確かに、初めのうちは辛く、苦しかった。
それこそ、自らの命を絶ち切ってしまいたいと思うくらい。
けれどもルドヴィクへの復讐という目標が出来、その心がいつの間にかルドヴィクへの好意へと変貌したと言って聞かせたら、アマデオは………自分の命を犠牲にしてでもアリーチェを逃がそうとしてくれた宰相ティルゲルは、どのように思うのだろうーーー。

せっかくこうして出会えた同胞に嘘は付きたくない。
だが、真実を告げるわけにもいかない。
アリーチェはぎゅつと唇を噛みしめると、困ったように微笑みを浮かべるだけだった。

「お待たせいたしました、アリーチェ様」

ちょうどその時だった。
部屋の中にいつの間にか充満していた緊張感を払い除けるかのようにジネーヴラが入室してきた。

「お疲れ様です、ジネーヴラ殿」

アマデオはジネーヴラに姿を見られても全く動じる素振りすらも見せなかった。

「アマデオ様……?」

部屋の警護をしている騎士達のことまで、ジネーヴラは把握しているようだった。

「大切なをこの部屋に独りとどめておくのは感心しません。何かあれば、取り返しの付かない事態に巻き込まれる可能性があります。………少し、無用心だと思いませんか?」

自分自身のことは棚に上げ、呆れたように溜息をついた。

「………ごめんなさい………」

いつも冷静なジネーヴラが、心底申し訳無さそうに謝罪の言葉に口にした。

「本当に、気をつけてください」

やや厳しく顔を顰めて、アマデオは囁くと、アリーチェの方へとにこりと笑いかけてくれたのだった。
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