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番外編

第六話 試練のお茶会(その四)

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「そう………かもしれませんわね。でも、それが何か?セシルは私がお腹を痛めて産んだ子ですわよ?」

夫人は、明らかに動揺していた。私の真意を計りかねているのだろう。

「ええ、もちろん存じておりますわ。セシル様が実子であることに疑いなど持っておりませんもの」

するとますます夫人の顔が険しくなった。

「では一体何を仰りたいのです?」
「実の親子と言えども、容姿や才能は必ずしも引き継がれるとは限りません。侯爵夫人とセシル様が似てらっしゃらない。何故なら、親と子は血の繋がりはあっても、全く別の個人だからです」

私は立ち上がった。

「ロゼリア・グラッドフォード公爵令嬢にも申し上げましたが、私は実父の功績を、この国に来るまで一切知りませんでした。私にとっての父は、何よりも学問を愛する、不器用な変わり者です。私は、コーネリアス・マロウの娘ですが、似ているとは言われたことはありませんわ。ジェイド様が私の存在を知ったのは、父がきっかけだったかもしれませんが、ジェイド様は父の娘だから私を選ばれたのではありません。私という人間を、評価してくださったのです」
「………でも、きっかけはコーネリアス殿ならば、無関係というわけではないでしょう?」

夫人が、私に詰め寄ってくる。

「それを仰るのであれば、エルカリオンの貴族令嬢や、他国の姫君方も同じではありませんか?私の場合は父がたまたま留学中の件で名が知れているだけですが、エルカリオンの貴族であれば、ジェイド様は当然全員を把握されておりますわ。お父上の名によって妃が選ばれるという理屈なら、私などよりも、エルカリオンの貴族方のほうが有利になると思いませんか?」
「そ、それは………」

だんだんと、夫人の声が小さくなってくる。私は構わずに続けた。

「私はもう、父の話を持ち出されるのはうんざりですの。エルカリオンの貴族方には、内心、私のような属国の貴族の娘が王太子妃になる事を快く思っていない方もいらっしゃると思います。私もそれを引け目に感じておりました。でも………」

一旦、そこで呼吸を整えると、私は夫人とセシル様を見、そしてお茶会の招待客たちを見回した。

「私を望んでくださったジェイド様の力になりたいと強く思いました。それは、父の影響でも何でもなく、私エリーゼ・キャメロットとしての嘘偽りのない気持ちです。ですから、私は何を言われようと、挫けません。それが、私の覚悟ですわ」

会場内は、しんと静まり返った。
鳥のさえずりだけが、青空に吸い込まれていった。
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