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番外編
第五話 試練のお茶会(その三)
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「………それは、どういう意味でしょうか」
候爵夫人は大袈裟に眉を上げてみせた。
「あら、言葉のままの意味よ?」
………敢えてそれ以上を口にしないのは、私が既に王太子の正式な婚約者で、養女とはいえ、公爵家の一員になっているから、不敬と見なされないようにと考えてなのだろう。
私がどう感じようと、客観的な事実がなければ不敬罪には問われないだろう。
やはり、ロゼリア嬢の時とは同じようにはいかなそうだ。それに………。
私はちらりと周囲の様子を伺う。他の招待客も、私達の会話に聞き耳を立てているようだ。
………ここに味方はいない。自力でなんとかしなければ。それに、このくらいの事を収めることが出来なければ、王太子妃などとても務まらないだろう。
私は、覚悟を決めた。
「わざわざ実父の話題を持ち出す意味がありますの?私は既にキャメロット公爵家の養女となっておりますので、私の父はオリバー・キャメロットですわ」
表情を動かさずにそう言い放ち、夫人の出方を伺った。
「………確かにそうだわね。でも私が言いたいのは、貴女がどこの人間かということではないのよ」
「では、どういう事ですか?はっきり仰っていただかないと、分かりませんわ」
今度は、にっこりと微笑みかける。
すると、夫人の目つきが変わる。これは、敵意………、いやまるで私を値踏みするような、そんな視線に感じた。
「どんなご令嬢が話しかけても、不快そうなお顔しかされなかった王太子殿下が、エリーゼ様だけには違ったのが、もしかしたらコーネリアス・マロウ様の娘だということが大きいのではないかと思ったのですわ。ねぇ、お母様?」
セシル様が、小首を傾げながらわざとらしくそんな事を言った。
結局は、田舎娘が王太子に見初められたのは父親のお陰だろうと言いたいのですわね。
………この展開、もううんざりですわ。
私はまたため息をつくと、セシル様と、候爵夫人の顔を交互に見て言った。
「そう言えば、セシル様とアルテミア候爵夫人は、お顔立ちがあまり似てらっしゃいませんわね?」
「「え?」」
私が唐突に振った話に、お二人は驚いたようだった。
候爵夫人は大袈裟に眉を上げてみせた。
「あら、言葉のままの意味よ?」
………敢えてそれ以上を口にしないのは、私が既に王太子の正式な婚約者で、養女とはいえ、公爵家の一員になっているから、不敬と見なされないようにと考えてなのだろう。
私がどう感じようと、客観的な事実がなければ不敬罪には問われないだろう。
やはり、ロゼリア嬢の時とは同じようにはいかなそうだ。それに………。
私はちらりと周囲の様子を伺う。他の招待客も、私達の会話に聞き耳を立てているようだ。
………ここに味方はいない。自力でなんとかしなければ。それに、このくらいの事を収めることが出来なければ、王太子妃などとても務まらないだろう。
私は、覚悟を決めた。
「わざわざ実父の話題を持ち出す意味がありますの?私は既にキャメロット公爵家の養女となっておりますので、私の父はオリバー・キャメロットですわ」
表情を動かさずにそう言い放ち、夫人の出方を伺った。
「………確かにそうだわね。でも私が言いたいのは、貴女がどこの人間かということではないのよ」
「では、どういう事ですか?はっきり仰っていただかないと、分かりませんわ」
今度は、にっこりと微笑みかける。
すると、夫人の目つきが変わる。これは、敵意………、いやまるで私を値踏みするような、そんな視線に感じた。
「どんなご令嬢が話しかけても、不快そうなお顔しかされなかった王太子殿下が、エリーゼ様だけには違ったのが、もしかしたらコーネリアス・マロウ様の娘だということが大きいのではないかと思ったのですわ。ねぇ、お母様?」
セシル様が、小首を傾げながらわざとらしくそんな事を言った。
結局は、田舎娘が王太子に見初められたのは父親のお陰だろうと言いたいのですわね。
………この展開、もううんざりですわ。
私はまたため息をつくと、セシル様と、候爵夫人の顔を交互に見て言った。
「そう言えば、セシル様とアルテミア候爵夫人は、お顔立ちがあまり似てらっしゃいませんわね?」
「「え?」」
私が唐突に振った話に、お二人は驚いたようだった。
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