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本編

第八十五話

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「初めて見たときから好きだったとは伝えたろう?私は欲しいと思ったものは必ず手に入れる主義でね。そなたを手に入れるのに最も有効な方法を考えた。そなたを屋敷に送ってから、カレルの国王と話をつけて、万が一コーネリアスが娘を手放さなかったら、そなたをカレル国王の養女にして召すという話までしていたのだが、案外簡単だったな」

へ、陛下の養女ですって?私は目眩がしてきた。
エルカリオンの公爵家の養女も畏れ多いですけれどね。
ジェイド様の行動力と先読みの力には本当に驚かされてばかりですわ。

「そなたはどうなのだ?いつ私を好きだと気がついた?」
「ええと………、そ………それは………」

かあっと頬が紅潮するのが分かった。
私は少し俯く。

「あの………自覚したのは、テオ様の件で公爵家に下がるようにジェイド様に言い渡されたあとです………。自分の気持ちに気がついたら、ジェイド様が怪我をされたとサイラス様が知らせに来てくださって・・・。それで私、いても立ってもいられなくなって………」

どうしましょう。恥ずかしくてジェイド様の方を向けないわ。
いつもの冷徹姫はどこへ行ってしまったのかしら。

「どうした?」

ジェイド様がまた意地悪な笑みを浮かべて問いかけてきた。

「何だか自分が自分でなくなってしまったかのようで………。今まで感情を表に出さないのが普通でしたのに、それが普通に出来なくなってしまって………。特にジェイド様のお側にいると、心の奥からどんどん温かな何かが湧き上がってくるようで………。ジェイド様がいてくだされば、全てが満たされる気持ちにさえなってしまうのです………」

私は隠すように両掌で顔を覆った。
こんな私は、私ではない。
と。ふわり、と大きな掌が私の手を上から覆った。

「………そなたは、ジャーマンダー公爵令息に、『真実の愛をどう証明するのか』と問うていたな」

あぁ、そんなこともありましたわね。何だか、物凄く遠い日の話のようですわ。

「エリーゼ。そなたの、その気持ちこそが、『真実の愛』というのではないか?」

そう言って、ジェイド様は優しく微笑んだ。
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