66 / 102
本編
第六十七話
しおりを挟む
「どうか、落ち着いて聞いてください」
「分かりましたわ」
胸の鼓動が、やけに大きく聞こえる。
「ジェイド殿下が、剣術の鍛錬中に怪我をされました」
「え………」
怪我?怪我ですって?
私は震えそうになる声を、お腹に力を込めて絞り出す。
「怪我は………酷いのですか?」
「真剣を使った鍛錬中に、相手が打ち込みを受け止めきれず、肩から腕までを………。幸いにも致命傷になるようなものではございませんが、出血が酷く、熱も出ており、予断は許さない状況です」
私は、全身から血の気が引いていくのが分かった。
目の前が暗くなり、自分の呼吸が荒くなっていく。指先も、緊張のために冷たくなっている。
「ジェイドさま………いや
………」
そんな。先程やっと自分の気持ちに気がつきましたのに。
………どうして?私が素直にならなかったのがいけなかったのでしょうか?
「今も、殿下は意識が混濁していますが、うなされながらエリーゼ様を呼んでらっしゃいます」
私ははっと顔を上げた。
「ジェイド様が私を………?」
どうしてだろうと考えるよりも先に、気持ちが動く。
できる事なら、ジェイド様のお側に行きたい。
私がいても役に立たないかもしれないけれど、それでも、あの方が私を必要としてくださるならば。
ぎゅ、とドレスを握りしめる。
断られても、私はジェイド様の元に行くわ。離れたところで、ただ回復されるのを待つだなんて、できませんもの。
「サイラス様。私をジェイド様のところにお連れいただけますでしょうか」
私が真っ直ぐサイラス様を見つめ、そう伝えると、サイラス様は、頷いた。
「初めからそのつもりで知らせに参りました。陛下も、王妃様もそれを望んでらっしゃいます。馬車だと時間がかかります。私と一緒に、馬で移動となりますがよろしいですか?」
「勿論ですわ」
乗馬は得意ではないけど、そんな事は言ってられませんもの。
一刻も早く、ジェイド様のところに行きたい。
「分かりましたわ」
胸の鼓動が、やけに大きく聞こえる。
「ジェイド殿下が、剣術の鍛錬中に怪我をされました」
「え………」
怪我?怪我ですって?
私は震えそうになる声を、お腹に力を込めて絞り出す。
「怪我は………酷いのですか?」
「真剣を使った鍛錬中に、相手が打ち込みを受け止めきれず、肩から腕までを………。幸いにも致命傷になるようなものではございませんが、出血が酷く、熱も出ており、予断は許さない状況です」
私は、全身から血の気が引いていくのが分かった。
目の前が暗くなり、自分の呼吸が荒くなっていく。指先も、緊張のために冷たくなっている。
「ジェイドさま………いや
………」
そんな。先程やっと自分の気持ちに気がつきましたのに。
………どうして?私が素直にならなかったのがいけなかったのでしょうか?
「今も、殿下は意識が混濁していますが、うなされながらエリーゼ様を呼んでらっしゃいます」
私ははっと顔を上げた。
「ジェイド様が私を………?」
どうしてだろうと考えるよりも先に、気持ちが動く。
できる事なら、ジェイド様のお側に行きたい。
私がいても役に立たないかもしれないけれど、それでも、あの方が私を必要としてくださるならば。
ぎゅ、とドレスを握りしめる。
断られても、私はジェイド様の元に行くわ。離れたところで、ただ回復されるのを待つだなんて、できませんもの。
「サイラス様。私をジェイド様のところにお連れいただけますでしょうか」
私が真っ直ぐサイラス様を見つめ、そう伝えると、サイラス様は、頷いた。
「初めからそのつもりで知らせに参りました。陛下も、王妃様もそれを望んでらっしゃいます。馬車だと時間がかかります。私と一緒に、馬で移動となりますがよろしいですか?」
「勿論ですわ」
乗馬は得意ではないけど、そんな事は言ってられませんもの。
一刻も早く、ジェイド様のところに行きたい。
11
お気に入りに追加
826
あなたにおすすめの小説
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
図書室で公爵弟に恋をしました。今だけ好きでいさせてください。
四折 柊
恋愛
エリーゼは元子爵令嬢だったが今は平民として住み込みで貴族令嬢の家庭教師をしている。ある日雇い主からデザートブッフェ代わりに公爵家のガーデンパーティーに行ってくるようにと招待状を渡され半ば強制的に出席することになる。婚活の場となっている会場で自分には関係ないと、一人でケーキを食べつつ好みの花瓶を眺めていたら後ろから人にぶつかられ花瓶を落とし割ってしまった。公爵様に高そうな花瓶を弁償するお金がないので体(労働)で返すと申し出たら公爵邸の図書室の整理を頼まれることになる。それがきっかけで公爵弟クラウスと話をするうちに意気投合して二人の距離が縮まりエリーゼは恋をする。だが越えられない二人の身分差に悩み諦めようとするがそのときクラウスは……
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる