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本編
第三十三話
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翌朝。私は身支度を整えようとしていると、お義母様と年若い侍女が二人訪ねてきた。
「この子達はエリーゼちゃんの専属侍女よ。昨夜紹介できなくてごめんなさいね。さぁ、貴方達、ご挨拶なさい」
お義母様がいうと、先に赤毛の少女が口を開いた。
「エミリーと申します」
もう一人の栗毛の少女もそれに続く。
「レベッカと申します」
私の専属で二人も侍女を?それは贅沢過ぎないかしら?実家でも専属侍女はいたけれど、普通に一人でしたわよ?
「私一人に、専属侍女を二人もつけて頂くなんて……」
「必要になるから付けたのよ?エリーゼちゃんは仮とは言え、キャメロット公爵家の娘同然なのだから、それなりにしないとね?」
後見、ってそういうものですの?むしろ、私の感覚が、庶民過ぎておかしいのかしら。だって、マロウ侯爵家は一時は借金を抱えるほど没落した辺境国の、貧乏貴族ですもの。って、胸を張って言うような事ではないのですけれど。
「今日からもう登城しなければならないのでしょう?殿下が首を長ーくして待ってらっしゃるでしょうから、さっさと身支度しましょうね。エミリー、レベッカ、頼んだわよ?」
「「はい、奥様」」
どうしてジェイド様が私を待ってらっしゃるの?なんて考えていると、私の夜着は二人の手であっという間に取り払われ、いつの間にやら用意された湯浴み用の部屋に押し込まれると、体を隅々まで洗われた。
「エリーゼ様の髪の色は、とても珍しいですね」
「アイスブルーの瞳も珍しいですが、このような、青みがかった銀髪は初めて見ました。とても美しいですわ」
二人が、私の髪を褒めてくれる。この髪色は、私の自慢ですので、誉められると気分が良いですわ。
「美しい御髪が映えるような、ハーフアップの髪型がよろしいかと存じますがいかがでしょう?」
「貴方達にお任せするわ」
「「かしこまりました」」
エミリーとレベッカはぴったりと息の合ったテンポで仕事をこなしていく。
手際よく私の腰をコルセットで締め上げてドレスを着せると化粧を施し、髪を結う。
昨日の王宮女官さん達といい勝負の仕事ぶりですわね。流石は公爵家。使用人の教育も行き届いているわ。
感心していると、そのまま玄関へと連れられていき、お義父様と馬車に乗せられてしまいました。お義母様達の乱入から僅か一時間。………神業としか言いようがありませんわね。
「この子達はエリーゼちゃんの専属侍女よ。昨夜紹介できなくてごめんなさいね。さぁ、貴方達、ご挨拶なさい」
お義母様がいうと、先に赤毛の少女が口を開いた。
「エミリーと申します」
もう一人の栗毛の少女もそれに続く。
「レベッカと申します」
私の専属で二人も侍女を?それは贅沢過ぎないかしら?実家でも専属侍女はいたけれど、普通に一人でしたわよ?
「私一人に、専属侍女を二人もつけて頂くなんて……」
「必要になるから付けたのよ?エリーゼちゃんは仮とは言え、キャメロット公爵家の娘同然なのだから、それなりにしないとね?」
後見、ってそういうものですの?むしろ、私の感覚が、庶民過ぎておかしいのかしら。だって、マロウ侯爵家は一時は借金を抱えるほど没落した辺境国の、貧乏貴族ですもの。って、胸を張って言うような事ではないのですけれど。
「今日からもう登城しなければならないのでしょう?殿下が首を長ーくして待ってらっしゃるでしょうから、さっさと身支度しましょうね。エミリー、レベッカ、頼んだわよ?」
「「はい、奥様」」
どうしてジェイド様が私を待ってらっしゃるの?なんて考えていると、私の夜着は二人の手であっという間に取り払われ、いつの間にやら用意された湯浴み用の部屋に押し込まれると、体を隅々まで洗われた。
「エリーゼ様の髪の色は、とても珍しいですね」
「アイスブルーの瞳も珍しいですが、このような、青みがかった銀髪は初めて見ました。とても美しいですわ」
二人が、私の髪を褒めてくれる。この髪色は、私の自慢ですので、誉められると気分が良いですわ。
「美しい御髪が映えるような、ハーフアップの髪型がよろしいかと存じますがいかがでしょう?」
「貴方達にお任せするわ」
「「かしこまりました」」
エミリーとレベッカはぴったりと息の合ったテンポで仕事をこなしていく。
手際よく私の腰をコルセットで締め上げてドレスを着せると化粧を施し、髪を結う。
昨日の王宮女官さん達といい勝負の仕事ぶりですわね。流石は公爵家。使用人の教育も行き届いているわ。
感心していると、そのまま玄関へと連れられていき、お義父様と馬車に乗せられてしまいました。お義母様達の乱入から僅か一時間。………神業としか言いようがありませんわね。
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