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本編

第二十四話

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「で、そちらが件の令嬢か」

突然、陛下が私を指した。件の令嬢?もう報告が行っているってことですの?

「はい」

ジェイド様が私を見る。
私はまた淑女の礼をとると自己紹介をした。

「偉大なる国王陛下、お目にかかれて光栄でございます。カレル王国から参りました、マロウ侯爵家が娘、エリーゼ・マロウと申します」

向き直ると、陛下はまじまじと私の顔をご覧になられる。

「カレルのマロウ侯爵………?」

そう呟くと、怪訝そうな顔をなさった。まぁ辺境にある属国の貴族ですから、ご存知なくて当然ですので、お気になさらくて結構です。

「実はあのコーネリアス・マロウの娘です」

ジェイド様がそう答えると、途端に謁見の間がざわつく。………お父様、一体あなたは何をやらかしましたの?

「コーネリアスとは懐かしい名だな」
「ええ、元気そうでしたよ」

ジェイド様の教師を務めたというのだから、陛下とも知り合いなのは理解できますけれど、貴族方の反応はどういうことなのかしら。様子を見る限り、罪人などではなさそうですけれど。

「そうか、まさかコーネリアスの娘を………。良い選択をしたな」

何故か、陛下は物凄く嬉しそうですわね。
良い選択とは何ですの?私は賭事にでも利用されておりますの?

「勿論です。さて、エリーゼも長旅で疲れているようですから、これで下がらせていただきます」

ジェイド様はそう仰ると、さり気なく私の腰に手を回してきた。
なっ、なんてふしだらな!
途端に顔が朱に染まる。でもジェイド様は涼しい顔をしたまま私を謁見の間から引きずり出したのだった。

※※※※※

「ジェイド様!どういうおつもりですの?婚約者でもない淑女にあのように触れるだなど、王族としてあるまじき行為ですわよ」
「ただのエスコートだろう」

ジェイド様がニヤリと笑う。きっとまて私の反応を見て面白がっているのだわ。

「あれがエスコートなはずがありませんわ。普通、こう腕を組むのが常識です」
「………エリーゼ、そなた歳いくつだ?」
「は?今年十七になりましたけれど………」
「何だ、五つも年下なのか。それにしては思考は老女が神官のようだけどな」

ジェイド様、いくら何でも言い過ぎじゃありませんこと?誰が老女か神官の思考ですの?

「考えてもみろ。ダンスの時には婚約者でもない男女が体を寄せ合って踊るだろう?それと同じだ。エスコートの仕方は一つではない。それにユピテル神は肉欲に溺れることは禁じているが、そうでないものは禁じてはいないぞ。あの肉団子女のようになられても困るが、そなたの貞操概念は時代錯誤だな」
「そ………そうですの?」

あまり考えたことがなかったわ。
ジェイド様に指摘され、その事実に愕然とする。………お父様、あなたの教えは時代錯誤だったようですわ。
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