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本編

第八話

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殿下に連れられて帰宅した私を、家族総出で出迎えてくれた。
どうやら先に帰った馬車の御者がこの事を伝えたようね。

「ジェイド王子殿下!この度は娘がお世話になりまして………」
「コーネリアス、久しいな」

挨拶をする父に、殿下が声をかける。久しい?殿下は父をご存知なのかしら。

「もしよろしければ、中へお入り下さい」
「いや、悪いが今日はやらねばならないことがある。また次の機会に」
「ええ、喜んで」

そんな社交辞令を交わすと、殿下は馬車に戻っていく。

「殿下、色々とお気遣い頂き、ありがとうございました」
「いや、大したことではない。では、また」

またの機会なんてないでしょう。そんな事を考えながら、私は馬車を見送った。


※※※※※

翌朝。
私が目を覚ますと、日がだいぶ高くなっていた。
あら。寝過ごしてしまいましたわね。でも今日は何も予定がないから、問題ないわ。
と。

「お嬢様!起きてらっしゃいますか?すぐにお支度をしてくださいませ!」

メイドのクレアが飛び込んできた。
ええ?何事?

「と、とにかく旦那様がお呼びです!公爵様がいらっしゃるそうですので………」
「公爵様が?」

多分、昨晩の夜会の件ね。公爵様はアーロン様と違って怒鳴りつけてくるような方ではないのだけど。
そう言えばアーロン様とボニータ嬢はどうなったのかしら?………別に興味はないけれど。

「ではあまり簡単な服装でも失礼ね。少しよそ行き用のドレスを用意してきて頂戴。ついでに少し手伝ってくれると助かるわ」
「はい」

私は用意された青のドレスを身に着けた。
そしてその後も、テキパキと身支度を整える。

「お嬢様、髪型はどうされますか?」
「そうね、時間もないからそのまま下ろしておきましょう」

私の髪は、青みがかった銀髪。ついでに目の色もアイスブルー。珍しい色合いで私は気に入っているけれど、この性格と見た目から、社交界でつけられた呼び名が「冷徹姫」。
うん。真っ直ぐでサラサラな長い髪を下ろすと、更に冷徹姫な感じだわ。

「ありがとう。お父様はどちらに?」
「サロンに居られます」

クレアの返事を聞くのと同時に、私は足早に部屋を出る。
屋敷の中が騒がしいわね。もう公爵様がいらしたのかしら?
私がノックをすると、執事が扉を開けてくれた。

「お待たせして、申し訳ありません」
「おお、エリーゼ!」
「エリーゼ嬢!」

お父様が叫ぶのと同時に、私を呼んだのは、ジャーマンダー公爵その人だった。
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