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学園二年生編
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そのまますうっと意識が別の場所に引っ張られていくような感覚を覚えて、私は顔を顰めた。
「…………ジル!ジルっ!!」
「ジュリア!」
すぐ近くで、私を懸命に呼ぶ声が聞こえる。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、ぼんやりと霞んだ、輪郭だけの人影がいくつか目に入った。
「………っ」
何度かまばたきを繰り返すと、段々と視界と意識がはっきりしてきた。
「あ………アルフレッド様………?それに、オルティアも………」
横たわる私を両側から覗き込むような形で、アルフレッド様とオルティアが立っていた。
二人とも、今にも泣き出しそうな表情をしている。
ええと、私…………?
懸命に記憶の糸を手繰り寄せる。
………そうだ。私、オルティアを庇って………。
それを思い出した瞬間、まるで体が記憶を呼び覚まそうとしているかのように頭が激しく痛んだ。
「痛…………っ!」
私が思わず、小さく悲鳴を上げると、アルフレッド様とオルティアが、慌てふためいたように私の手を握りしめた。
「だ、大丈夫か………っ?」
「ジュリア…………っ」
殆ど同時に、アルフレッド様とオルティアが私を覗き込んできた。
全く顔立ちは違うのに、二人は同じ様に眉根を寄せて、そっくりな表情をしている。
ああ、私、帰ってきたんだ…………。
二人の顔を見て、不思議とそう実感する。
こんな私には、自分の居場所なんてないと思っていたのに、どうしてそう感じるのかは自分でも分からなかった。
ただ、その感覚が何とも言えない位に心地よかった。
「ジュリア…………?」
突然、オルティアが驚いたように私の顔を覗き込んできた。
え………っ、私の顔、何かおかしいのかな?
打ったのは頭だったけど、顔もどこか打ったとか?
訳がわからなくて瞬きを繰り返すと、その度に頬を何かが伝って行く感触があった。
私、泣いているの?
驚いて、手を目元に持っていこうとすると、アルフレッド様がやんわりと私の手に自分の指を絡め、もう一方の手で涙をそっと拭ってくれた。
「………酷く、痛むか?」
今まで見たこともないような、心細げなアルフレッド様の顔が、吐息が触れそうな位に近くにある。
普段なら緊張しすぎて頭の中が真っ白になるはずなのに、今この瞬間だけはとても安心できた。
「…………ジル!ジルっ!!」
「ジュリア!」
すぐ近くで、私を懸命に呼ぶ声が聞こえる。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、ぼんやりと霞んだ、輪郭だけの人影がいくつか目に入った。
「………っ」
何度かまばたきを繰り返すと、段々と視界と意識がはっきりしてきた。
「あ………アルフレッド様………?それに、オルティアも………」
横たわる私を両側から覗き込むような形で、アルフレッド様とオルティアが立っていた。
二人とも、今にも泣き出しそうな表情をしている。
ええと、私…………?
懸命に記憶の糸を手繰り寄せる。
………そうだ。私、オルティアを庇って………。
それを思い出した瞬間、まるで体が記憶を呼び覚まそうとしているかのように頭が激しく痛んだ。
「痛…………っ!」
私が思わず、小さく悲鳴を上げると、アルフレッド様とオルティアが、慌てふためいたように私の手を握りしめた。
「だ、大丈夫か………っ?」
「ジュリア…………っ」
殆ど同時に、アルフレッド様とオルティアが私を覗き込んできた。
全く顔立ちは違うのに、二人は同じ様に眉根を寄せて、そっくりな表情をしている。
ああ、私、帰ってきたんだ…………。
二人の顔を見て、不思議とそう実感する。
こんな私には、自分の居場所なんてないと思っていたのに、どうしてそう感じるのかは自分でも分からなかった。
ただ、その感覚が何とも言えない位に心地よかった。
「ジュリア…………?」
突然、オルティアが驚いたように私の顔を覗き込んできた。
え………っ、私の顔、何かおかしいのかな?
打ったのは頭だったけど、顔もどこか打ったとか?
訳がわからなくて瞬きを繰り返すと、その度に頬を何かが伝って行く感触があった。
私、泣いているの?
驚いて、手を目元に持っていこうとすると、アルフレッド様がやんわりと私の手に自分の指を絡め、もう一方の手で涙をそっと拭ってくれた。
「………酷く、痛むか?」
今まで見たこともないような、心細げなアルフレッド様の顔が、吐息が触れそうな位に近くにある。
普段なら緊張しすぎて頭の中が真っ白になるはずなのに、今この瞬間だけはとても安心できた。
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