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学園二年生編
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同時に、目に見えない何かが私の頬に触れた。
「あなたとわたくしは、一つの体を共有する別の自我………といったところかしら?わたくしは、国外追放されて、隣国の王子や貴族子息と浮名を流す『未来』を変えられればそれで良かったのだけれど、彼のお陰でまたおかしな方向に話が変わってきてしまっているし……。本当に世の中って思い通りにいかないものね」
「ええと、あの…………」
彼、とは多分オルティアの事だろう。
ゲームの設定とこの世界とでは皆それぞれに人格は異なるけれど、オルティアは変わりすぎだもの。
それこそ同姓同名の別人レベル。
「彼が、『ヒロイン』の役割を降りた時点であなたの知っているシナリオは完全に成立しなくなっているわ。けれど、今の状況もあまり喜ばしい状態ではないわ」
「…………はい。分かっています………」
私は消え入りそうな声で、ジュリエットに謝罪した。
「謝るくらいなら、初めからしっかりなさい!」
気持ちがいいくらいにぴしゃりと、ジュリエットが言い放つ。
これこそ、悪役令嬢ジュリエットって感じだわ。
「………まあそもそもあなたのような内気な人間に、わたくしのように振る舞いなさいと言うのは無理だということくらい分かっているのだけれど」
ふと、ジュリエットの声音が和らいだ気がした。
「………あなたがどうしてわたくしの身体にいるのか、考えたことがあって?」
ジュリエットの問い掛けに、私は一生懸命考えを巡らせる。
「えっと………異世界、転生?」
異世界転生って言って、ジュリエットに通じるのかは定かじゃないけれど、私がここにいるのはそれ以外の理由はない。
ちゃんと前世の記憶もあるし?
「その『イセカイテンセイ』が何なのかは分からないけれど、わたくしはあの日………婚約者を決める舞踏会の日の前日に、必死になって神にいのったわ。………どうか、この残酷な運命を変えてください、と………。そうして一晩中祈り続けて気がついたら………わたくしの体は赤ん坊になっていて、しかもわたくし自身は『あなた』という人格がわたくしの体を使っているのを内側からただ見守るだけ。…………それでもこれで、わたくしの望み通りにわたくしの運命が変わるのであれば、静かに見守ろうと思ったのよ」
ジュリエットの口調は、優しくて、どこか慈愛に満ちているように感じられたのだった。
「あなたとわたくしは、一つの体を共有する別の自我………といったところかしら?わたくしは、国外追放されて、隣国の王子や貴族子息と浮名を流す『未来』を変えられればそれで良かったのだけれど、彼のお陰でまたおかしな方向に話が変わってきてしまっているし……。本当に世の中って思い通りにいかないものね」
「ええと、あの…………」
彼、とは多分オルティアの事だろう。
ゲームの設定とこの世界とでは皆それぞれに人格は異なるけれど、オルティアは変わりすぎだもの。
それこそ同姓同名の別人レベル。
「彼が、『ヒロイン』の役割を降りた時点であなたの知っているシナリオは完全に成立しなくなっているわ。けれど、今の状況もあまり喜ばしい状態ではないわ」
「…………はい。分かっています………」
私は消え入りそうな声で、ジュリエットに謝罪した。
「謝るくらいなら、初めからしっかりなさい!」
気持ちがいいくらいにぴしゃりと、ジュリエットが言い放つ。
これこそ、悪役令嬢ジュリエットって感じだわ。
「………まあそもそもあなたのような内気な人間に、わたくしのように振る舞いなさいと言うのは無理だということくらい分かっているのだけれど」
ふと、ジュリエットの声音が和らいだ気がした。
「………あなたがどうしてわたくしの身体にいるのか、考えたことがあって?」
ジュリエットの問い掛けに、私は一生懸命考えを巡らせる。
「えっと………異世界、転生?」
異世界転生って言って、ジュリエットに通じるのかは定かじゃないけれど、私がここにいるのはそれ以外の理由はない。
ちゃんと前世の記憶もあるし?
「その『イセカイテンセイ』が何なのかは分からないけれど、わたくしはあの日………婚約者を決める舞踏会の日の前日に、必死になって神にいのったわ。………どうか、この残酷な運命を変えてください、と………。そうして一晩中祈り続けて気がついたら………わたくしの体は赤ん坊になっていて、しかもわたくし自身は『あなた』という人格がわたくしの体を使っているのを内側からただ見守るだけ。…………それでもこれで、わたくしの望み通りにわたくしの運命が変わるのであれば、静かに見守ろうと思ったのよ」
ジュリエットの口調は、優しくて、どこか慈愛に満ちているように感じられたのだった。
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