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学園二年生編

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「あなたは、『私』………なの………?」

私は半信半疑のままで、「彼女」に向かって語り掛けた。

「いいえ。私は私よ」

きっぱりと「彼女」は否定する。この凛とした気高さは間違いないと、私は確信を得た。

「ごめんなさい。……あなたは、『ジュリエット・カラミンサ』でしょう………?」

静かに問いかけると、「彼女」はふふ、と小さく笑い声を上げた。

「そうよ。わたくしは『あなた』が使っている体の本来の持ち主、ジュリエットよ」

その返答に、私は大きく目を見開いた。
私が使っている体の持ち主。………それってつまり、私が転生したことで、ジュリエットの体を横取りしちゃったってこと?

「あ………」

その一言で私は動揺してしまった。

「何を狼狽えているの?わたくし、あなたのそういうところが嫌いなのよね。どうして堂々とすることが出来ないのかしら」

呆れたような溜息が聞こえてきて、私は項垂れた。
………姿は見えなくても、流石はゲームの悪役令嬢ジュリエットだ。
吐き出す言葉一つ一つが辛辣で、しかも的を得ている。私は言い返すことも出来ない。

「しかもうじうじと悩んで、自分が悪いと思ってすらいないのにすぐに謝罪の言葉を口にする。あなたにはプライドというものはないの?」
「…………」

こんなにもはっきりと、私の悪い点を指摘されたのは初めてだった。オルティアも同じように注意してくれたことがあったけど、「もったいない」と私を励ましてくれただけだったし。

「初めからすべてを諦めているからそんな風になってしまうのよ。今のあなたは公爵令嬢で、この国の王太子殿下の婚約者。誰もが羨むようなものを全て持っているというのに、何一つ生かすことが出来ていないだなんて………」
「ごめんなさい………」
「また謝る!」
「ひっ………」

激しい叱咤に、私は思わず悲鳴を上げた。
姿こそ見えないとはいえ、悪役令嬢に怒られると、ゲームのヒロインであるオルティアになったような気持ちになる。

「一体何が不満だというの?」
「ふ、不満なんかじゃ………」
「言いたいことがあるのなら、はっきり言ってちょうだい」

怒気を孕んだジュリエットの声に、私は怯えながら口を開く。

「これは、私の元々の性格なんです………。引っ込み思案で、内気で、人見知りの……。できることなら変わりたい。でも………」
「ああ、これだからもう!」

ジュリエットが再び叫ぶ。
闇の中で大声がこだまして、私は恐怖に思わず肩を震わせた。
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